1247 百年の友達
薬草採取は順調と言えなかった。
理由はチビッ子ちゃんが植物をデジカメに収めるのに集中しすぎて動こうとしないのだ。
「すみません。この子、集中すると周りの声が届かなくて……」
委員長さんが申し訳なく謝る。
「構わんよ。オレも似たようなもんだしな」
採取に夢中になって陽が沈むまでやってたこと何度もあるし。
「それにしても姿を写す魔道具があるのね」
「まあ、考えたヤツは偉大ってことさ」
デジカメはミタさんが出したもので、印刷して渡すそうです。
「高価なものなの?」
「まあ、高価だな。いくらだっけ?」
「二百万円です」
オレのセリフの意味を理解したミタさんも乗ってくれた。
ブルー島にも売店はあり、魔女さんたちにお小遣いとして月に千円を渡してある。
……物価が駄菓子屋レベルなので千円で充分なんです……。
「二百万円。そんな高価なものを貸してもらって大丈夫なの?」
「高価は高価だが、道具は使ってこそだ。壊れたら壊れたでしょうがねーさ」
「あなたの価値観がよくわからないわ」
「人それぞれの価値観さ。まあ、どうしても知りたいってんなら教えるぞ」
オレの価値観を理解してくれる者が少ない。理解してくれるなら一年かけて教えてやるぜ。
「いえ、遠慮しておくわ」
にべもない。でも、それがちょっとステキです。
「魔女なら結界で植物を集めたらどうだ? あるだろう、そう言うの」
本に結界を張れる魔術があるんだから、帝国の魔女ならできんだろう。
「あるけど、できる人はそんなにいないわ。あまり人気のある分野ではないから」
魔術にも人気とかあるんだ。魔術って結構枝分かれしたものなのか?
「便利で役に立つんだがな」
近くの葉をもぎ取り、結界で包み込む。
「ほれ。標本のできあがりっと」
結界を浮かばせて委員長さんに見せてやる。
これで結界の有用性がわからないようでは魔女としては失格であり、今後の伸びも期待できないだろう。そして、叡知の魔女さんの見る目もねーってことだ。
「そして、こうすると本にも張れる」
ペしゃんと両手で潰し、ペラッペラッの薄さとする。
「…………」
「魔術っておもしろいよな」
いや、やってるのは結界なんだが、汎用性は同じなはず。いや、若く、才能がある者が揃っているのだ、オレなんかより活路を見つけるだろうよ。
「いろんなことに興味を持て。若いんだからよ」
好奇心は猫も殺す。されど人を活かすこともある。オレの中の諺だ。
「年下がそれを言う?」
「興味を持つことに年齢なんて関係ねーよ。オレは百年後も好奇心を輝かしているぜ」
まあ、百歳まで生きられるかわからんけど、死ぬそのときまでオレは世界に興味を持って生きるぜ。
「そのときあんたも生きてたらお茶でも飲みながら好奇心に華を咲かせようぜ! ってか、魔女の平均寿命ってなんぼよ?」
誰も彼も人外になるとは思わんが、何百年と生きてそうなイメージだ。
「……魔力により違うけど、百年以上生きている方はざらね。長老方は三百年がざらだけど……」
そ、それは長生きでよーござんすな。つーか、三百歳ってもう人外の域じゃね?
「帝国はおっかねーな」
さすが帝国と言うだけはある。あれだけの秘密があるバイブラストが帝国に下るわけだ。オレの想像も超える秘密がありそうだな……。
「わたしとしてはあなたのほうが怖くてたまらないわ。その歳で館長と対等にやり合えるんだから」
「対等なもんか。確実にこちらが下で、敵対しないよう心がけてる毎日だわ。あんたらを引き受けたのだってその一環よ」
こっちは個人。帝国が本気になったら七日で潰されるわ。
「……七日持つだけで異常ですけどね……」
背後でオレだけに聞こえるように呟かないでくださいませ。
「まったく説得力がないし、館長のほうが下手に出ているように思えるわ」
「そう言うところが油断できねーんだよ、あの魔女さんは」
あれは深慮遠謀が形になったような存在だ。絶対、懐に入れてはダメだ。入れたら最後、身も心も支配されるだろうよ。
「それが対等と言う証拠よ」
この委員長さんも結構な性格してるよな。
雲の上のような存在と対等と言いながら少しも臆した様子はねー。それどころかグイグイ来る。他は声をかけて来ようとしねーのによ。
「あんたとはイイ友達になれそうな気がするよ」
こう言うタイプ、嫌いじゃない。仲良くなったら楽しい会話ができそうだ。
「そうかもね」
委員長さんも満更でもなさそうだ。フフ。委員長さんの将来が楽しみだな。




