1241 メイドって……
空に浮かぶ七つの影。V字編隊と言っただろうか? ファンタジーの空にはなんとも不釣り合いな光景である。
「カイナーズの空挺部隊です」
うん。知らないけど知ってる。あんなことするのが二つとあったら発狂するわ。
ホケーと空を見詰めていると、村の外から光の玉がいくつか打ち上げられた。な、なに!?
「着地地点を知らせるものです」
あ、うん。ソウデスカ。
もう理解しようと思うのもバカらしい。あるがままの状況を受け入れよう。
……受け入れられないときに言うセリフ。これ、テストに出るから覚えておきなさいね……。
「べ、ベー殿、なにが起こっているのだ?」
ゴメン、長さん。オレにもわかんねーんだ。アハハ。
「村に危害を加えようってわけじゃないから安心してくれ。仲間を呼んだだけだ」
安心なんてできないだろうことはわかっているが、そうとしか言いようがないわたしめをお許しくださいませ。
飛行機から人だと思わるるものが規則正しく飛び出し、次々とパラシュートが開いていく。
「……皆さん、怖がってますよ……」
知っているオレですら胸の奥がザワザワしてるんだから知らない者はそりゃ怖がるだろうよ。
「長殿。実はこの姿は偽りなんだよ」
「はぁ?」
なんてマヌケ面名な長さん。まあ、至極当然な反応やね。
だが、正体を現すなら今。この状況を飲み込めてないときなら正体を現してもこれ以上は驚愕しないはずだ。人の驚愕のキャパはそれほど多くはないからだ。
轟牙に纏わせている結界を解き、背中から出る。
皆さんの視線がオレに集中するのがわかる。そんなに見ちゃイヤン。
「ワリーな、騙すようなことしてよ。さすがにこの姿だと話も聞いてくれないだろう?」
籠城しているところに身綺麗な十一歳と幼女が来たら怪しさ満点。普通なら追い返されるか攻撃されるかのどちらかだ。迎え入れるなんて絶対にしないだろうよ。
「…………」
「何度でも言う。村に危害は加えることはねーから安心しな。加えるつもりなら食料も薬も渡したりしねーよ」
「マイロード。ミタレッティー様がこちらに来ます」
空に目を戻すと、黒い点が真っ直ぐこちらに向かって来る。
……なんか以前、見たような光景だな……?
「あのまま降りて来るんでしょうかね?」
さすがにそれは無理やろう。ジェット推進力がないと。
ミタさんのことだから大丈夫だろうと見てると、パラシュートが開き、減速するが、地上まで百メートル。あ! サプルだ! これと同じことしたの!
確かリューコのときだっけ? 地上ギリギリのところでパラシュートを開いて減速し、すぐにパラシュートを外して魔力を全開にしてさらに落下速度を殺した。
ちょっと高いところから飛び降りた感じで着地。乱れたメイド服を整え、オレの前へとやって来た。
……メイドってなんだろうな……?
答えの出ない問題を考えたくなるのが人とは言え、パラシュートで降りて来るメイドをスルーできるほど無関心ではいられねーよ。
……スルー拳も乱用しちゃうと無関心な人間になっちゃうしな……。
「ベー様。出かけるときは一声かけてください!」
「ワリーワリー。咄嗟だったんでな」
つーか、強制労働させたカイナーズホームのヤツらに文句を言ってよ。オレはなにも悪くねーし。
「まあ、そんなことより降りて来るのがカイナーズなら村の周りにいる魔物を駆逐するよう伝えてくれや。大暴走が起きてるんでよ」
薬草採りにいかなくちゃならんのよ。速やかに駆逐してチョンマゲ。
「畏まりました」
スマッグをポケットから取り出して誰かにかけた。
「ミツエモンさん。空挺団は村の周りにいる魔物を駆逐してください」
そう告げて通話を切り、違う者にかけた。
「キツリ。護衛メイド隊は拠点作りをお願いします」
テキパキと指示を出すミタさんがカッコイイです。
「わたしも一応メイドですが、ゼルフィング家のメイドを見てるとメイドがなんなのかわからなくなりますよね」
悠久の時を使って答えを導き出してくださいませ。




