1234 たい焼き
たい焼きができるまで、茶店に入って公爵どのへ手紙を書く。
「……前から思ってましたが、ベー様って手紙になると饒筆になりますよね……」
なんだよ饒筆って? そんな言葉あるのか? 初めて聞いたよ。
「ラーシュと文通してるからな」
暇があれば書いているし、書くこと自体嫌いじゃない。楽しい日々を思い出してつい長くなっちゃうんだよな。
「ラーシュさんですか。一度も会ったことないのに一番知ってる方ですよね」
ラーシュも饒筆? な感じだから手紙は結構な量になる。よくそんなに書けるなと思うよ。
……まあ、オレも負けじと書いてるがな……。
便箋三枚くらいに纏めて封筒に入れる。
「ドレミ。頼む」
きっとドレミなら大丈夫だと思って差し出したら猫型からメイド型になって受け取った。
「畏まりました」
と、手紙をエプロンのポケットに仕舞った。四次元ポストか?
超万能生命体に不可能はなし。畏まりましたと言うのならできるのだろうと、万事任せることにした。
「バイブラストにいる紫がカティーヌ様にお渡しました。読んでもらってもよろしいでしょうか?」
大陸間通信できる超万能生命体。もうお前が世界を牛耳ろよ……。
「ああ。了承できたらカイナーズの誰かをいかせると伝えてくれ」
「はい。お伝えしました」
なら、オレのミッションコンプリート。肩の荷が降りたぜ。
「丸投げしただけなのにその笑顔になれるベー様がスゴいです」
チッチッチ。状況を作らずやるのは放り投げ。状況を作ってやるのが丸投げ。間違えたらいかんぜよ。
無限鞄からコーヒーポットを出してマ○ダムタイム。あーコーヒーうめ~!
「ん? イイ匂いがして来たな?」
「カイナーズホームの方がなにか作ってるんじゃないですか? 先ほどから荷物を抱えた人たちが行き来してましたから」
ここを観光地化する気か?
「あのバカはなにをしたいんだか」
カイナはオレと違う方向にバカだから予想もつかんのよね。
「あ、ベー様。ここを使いたいのですが、よろしいでしょうか?」
なんかビニール袋を両手に持ったセイワ族の男女が入って来た。
「あ、ああ。構わんよ。コーヒー飲んでるだけだからな。なにやるんだい?」
「団子屋です」
あ、うん、そうですか。ガンバってちょうだいな……。
オレの管轄じゃねーし、好きなようにやってくれや。
「……お客さん、来るんですかね……?」
そこは触れちゃいくないサンクチュアリ。ガンバってんだから黙って応援してあげなさいよ。
「ベー様の人脈でどうにかならないんですか? 一万人くらい呼んだら活気が出ると思いますよ」
「一万人もいねーよ」
どんな人脈だよ? 友達百人もいねーよ。
「でもまあ、人がいないのも寂しいか」
賑わってこその浅草寺。閑古鳥では味わいもねーしな。
「転移結界門を増やしてレヴィウブみたくしたらどうです?」
「管理とかメンドクセーことになりそうだな」
ここを満たすとなれば転移結界門を何十と設置しなくちゃならねーし、定期的にメンテナンス(高度な結界は誤差動したり劣化したりするんだよ)が必要だ。そんなことに時間を割かれるのはゴメンだぜ。
「淡水人魚でも入れるか?」
ここは、島になっており、周りは池になっており、下は水が満たされている。観光地の目玉のとしてもイイだろうよ。
そんなことをぼんやり考えていると、紙袋を抱えたミタさんがやって来た。
「ベー様。たい焼きです!」
テーブルに皿を出してたい焼きを二つ並べた。
「お茶でよろしいですか?」
「いや、牛乳にしてくれや」
オレ、たい焼きには牛乳派なんで。
「サプルが焼いたのかい?」
「はい。サプル様が焼いたたい焼き、とっても美味しいんですよ」
まあ、サプルなら何回か焼けばプロ級になるだろうよ。
たい焼きをつかんで頭からパクり。モシャモシャモシャゴックン。あー旨い。
「薄焼きか。絶妙だな」
「はい! 最高です!」
向い側に座ったミタさんがなんとも美味しそうにたい焼きをパクついてる。
ミタさんって普通の食事はそれなりなのに、甘いものとなると底なしだよな。太らんのだろうか?
出会ったころよりはふくよかにはなったが、それでもスタイルはイイ。糖尿にならないか心配だよ。
まあ、ミタさんならよく動くし、大丈夫だろうてたい焼きを完食。牛乳で口の中の甘さを中和した。
「久しぶりに食うと旨いもんだな」
「まだありますよ。サプル様、今も焼いていますので」
「三食たい焼きとか勘弁して欲しいんだがな」
さすがにたい焼きは一食で充分。二食になったら家出するわ。
「大丈夫ですよ。たい焼きはおやつですから」
毎回たい焼きでも嫌だけどな。
「オレの分はイイからメイドに出してやりな」
「はい。皆喜びます」
二つ目に手を伸ばし、頭にパクつく。
「そう言や、小豆クリームってのも旨かったよな~」
売っているところがなくて滅多に食えなかったが、あの味は転生しても覚えているよ。
「ク、クリームですか!? あんこに?!」
テーブルをバンと叩いて立ち上がったミタさん。こ、怖いよ……。
「あ、ああ。結構合うもんだぜ」
「ちょっとサプル様のところにいって来ます!」
茶屋を飛び出していくミタさん。もう好きにしなさいな。
あ~たい焼きと牛乳。至極である。




