1195 喫茶店岬
岬の喫茶店が繁盛していた。
「って、喫茶店の名前、岬でよかったっけ?」
なんか遠い昔のような気がして記憶がふんわりしている。自然と出たから間違ってはいねーと思うがよ。
店の入口側には食い物の屋台が何軒か出ており、何十と設置された丸テーブルでは魔族の女性客が楽しそうにおしゃべりしていた。
……メイドさんたちかな……?
「ベー様、お帰りなさいませ~」
「お帰りなさいませ」
オレに気がついた女性陣が席から立ち上がり、上品にお辞儀した。
「あ、ああ。ただいま」
なんだこれ? と思いながら女性陣に挨拶を返しながら喫茶店へと入った。
中も女性客で混んでおり、なんか入っちゃいけない場所に入った気まずさに襲われてしまった。
……な、なんなんだ? この喫茶店のなにがこれほどの人を引き寄せるんだよ……?
「お前ら、ちょっと遊んでろや」
さすがに珍獣どもを連れていったら営業妨害だしな。
馬くらいにしていた珍獣ども……って、元のサイズ、どんなだっけ? ウパ子はデカいとしか覚えてねーし、ピータとビーダなんて完全に忘れた。ギンコはいつの間にか大型犬くらいになってやがる。
なんか生命ごめんなさい。と謝罪したくなるが、まあ、考えたら負けの珍獣ども。環境に合わせたサイズがベストと思っておこう。うん。
「早くするでし」
「ぴー」
「びー」
「肉もらって来て」
ったく。本能に忠実なヤツらだよ。おっと。鏡見ろやとか言っちゃイヤよ。
「あ、ベー様。いらっしゃいませ~」
なんか黄色いエプロンをした赤鬼のマッチョレディが現れた。
「え、なに?」
「あ、岬で働かしてもらってるマキノと申します」
働かしてもらってる? あ、まあ、これだけ繁盛してんなら姉御一人じゃ無理なのはわかるが、なぜマッチョレディ? あなたならカイナーズで天下とるほうが早くね?
「そ、そうかい。ご苦労さんな」
まあ、職業選択の自由はある。オレがどうこう言うことじゃねーか。好きにやれ、だ。
「席、空いてるかい?」
「はい。ベー様の席はいつも空けてますから」
そう言う特別は止めて欲しいんだけど、と言っても無駄か。このブルー島はオレのものであり、ゼルフィング家で雇った者がほとんど。主を蔑ろにはできんだろうよ。
「それはありがとさん」
ここは素直に感謝しておこう。女性陣と相席ってのも嫌だしな。
案内された席は海側の角。四人席を一人占めとは申し訳ないが、付属がつくときもあるんだから適当か。
海が眺められるほうに座ると、マッチョレディが水を出してくれた。
「なにになさいますか?」
「フ◯ーチェメロン味を頼む」
今日はメロン味気分なんで。
「畏まりました~」
見た目はマッチョなのに口調は軽いのな。そのギャップに萌えないが
助かるよ。
フルー◯ェが運ばれて来るまで外を眺める。
ボブラ村時間ではお昼過ぎだが、ブルー島時間は夕方だ。ブルーヴィの方向がもうちょいズレてたら正面に太陽が来るんだがな。惜しいぜ。
まあ、それでも景色はイイのでぼんやりと眺めた。
「いらっしゃい。体はよさそうね」
と、姉御がやって来て、向かいの席に座った。
「ああ。お陰様で」
姉御の笑顔に癒される。柔らかい笑みを浮かべれるようになったもんだ。
「これ、帝国のお土産っす」
レヴィウブで買ったものをテキトーに詰めた収納鞄を姉御に渡した。
「……ありがとう。ありがたくいただくわ」
呆れた顔で礼を言う姉御。できれば笑顔で受け取って欲しいです。
「まったく、黒丹病騒ぎからなぜ帝国にいくのかしらね? まあ、あなたは昔っからそうなんだけど」
「先の読める人生なんてつまらないもんっすよ」
「あなたの場合、先が読めないどころか予想の外をいく人生でしょうが。それに付き合うプリッシュを尊敬するわ」
なぜかプリッつあんの株が上昇するこの謎。不可解である。
「お待たせしました~。ご注文のフ◯ーチェメロン味で~す」
先ほどのマッチョレディではなく、夢魔族の少女がフ◯ーチェを運んで来た。
「繁盛してること」
「わたしとしてはもっとゆっくりやっていきたいんだけどね」
嫌そうには言ってるが、それほど嫌がってる感じはしない。どちらかと言えば満更でもない感じだな。
「忙しいときもあれば暇なときもある。人生には緩急が必要さ」
まあ、緩急の差がありすぎると泣けて来るときもありますがね!
「……そうね……」
とだけ言って静に笑う姉御。命が惜しいので余計なことは考えない。満足している。それだけわかれば充分である。
姉御を眺めながら久しぶりのフルー◯ェをいただいた。
あ~フルー◯ェがうめ~。




