1193 魔力漏れ
「サプルはどうしたい?」
姿が見えんけど。ってか、サプルなにやってんだ? もううちに仕事をする余地はないんだかな。
まあ、サプルも多趣味だからやることたくさんあるだろうが、もうすぐ昼だ。ここでの食事は自分がやると言っていた。自分の仕事だと言ってな。
……オレもやる仕事はないが、ニートではないことを強く主張しておきますぜ……。
「サプルなら館にいったよ。おかあさんが働こうとして大変だから止めてくれってメイド長さんが泣きついて来たのよ」
「まあ、四人目だからな」
ただでさえ体は丈夫だし、慣れてもいる。自分の限界を知ってるから周りは気が気ではねーだろうよ。
「母親とは強いもんだよね~」
「そうだな。感謝しかないよ」
差し出されたコーヒーに手を伸ばしながら答えた。
「お、旨いな。あんたが淹れたんかい?」
えーと、名前は思い出せんが、帝国から来た人族のメイドさんだ。
「はい。ここではコーヒーを淹れられて一人前だと教えられました」
え、そうなの? 別にコーヒーで一人前とか決めなくてイイんだよ。オレ、コーヒーは好きだけどそんなに拘りはないんだからさ。
「そうかい。ありがとよ」
まあ、オレのためにガンバってくれたのならありがたく感謝しておこう。
「はい。どういたしまして」
貴族に仕えてた割にフレンドリーなメイドさんだこと。
ゆっくりいただき、もう一杯お代わりをした。
「ベー様。昼食はいかがなさいますか?」
「いただくよ。タリオも食っていくだろう?」
今いるなら食べていくだろうが、家主として一応誘うのが礼儀だからな。
「はい。お相伴させていただきます」
どうやら順応力が高いようだ。貴族の暮らしとは天と地の差があるだろうによ。
「ベー。おれも中に入りたい……」
ドアの隙間からおねだりをするカイナ。あ、いたね、お前。すっかり忘れてたわ。
「入りたいって言われてもな~」
お前の魔力、妊娠にワリーんだからダメだろうが。
「ベーの力でどうにかならない?」
「お前をどうこうできるヤツがいたら見てみたいよ」
精神的にどうこうできるヤツは見たが、魔力的にどうこうできるヤツなんてこの世界にいねーだろう。もしいたとしたら全力で仲良くなるわ。
「おれを弾いたんだからなんとかなるって」
「孫とひ孫を危険に晒してまでやることか?」
お前がそこにいれば丸く収まることだろうがよ。
「お願い、頼むよ。レニスと一緒にお昼したいぃ~!」
なに駄々っ子になってんだよ。祖父としての威厳が急降下してんぞ。
「ったく、しょうがねーな」
席から立ち上がり、外へと出る。
「んじゃ、魔力遮断の結界を纏わせてみるが、ダメなら諦めろよ」
神の力とは言え、お前はそれを凌駕してんだからさぁ~。
「わかった。そのときは諦めるよ」
さて。離れに張った結界はカイナの魔力を遮断している。ってことは遮断の結界を張ればイイのだろうが、こいつの場合、簡単に破壊できるから並みでは不味い。相当ガンバらにゃイカンだろうな。
いや、待てよ。別に遮断することはねーだろう。せっかくある魔力を利用したらイイんじゃね?
魔石は公爵どののところや魔大陸で手に入れられるが、オレ個人には入らない。なにかのために魔力を持っておくのもイイかもしれんな。
魔力は凝縮すれば結晶化する。それは昔から知られていること。なら、凝縮したらイイじゃない、だ。
カイナを結界で包み込み、漏れ出る魔力を集めて凝縮するようにする。
なんか水道管破裂したような勢いで魔力が溜まり、凝縮されていく。
「お前、魔力漏れすぎじゃね?」
「これでも抑えてるほうだよ。毎日消費しないと大変なことになるんだからさ」
大変なことってなんだよ。いや、怖いから訊かないけど!
「もしかして、カイナーズホームってそのためか?」
カイナの趣味かと思ったが、消費、ってか排出? してるのか?
「そうだよ。結構な消費で助かってるよ。あーなんかすっきりする~」
なんつーか、存在自体が迷惑なやっちゃな~。
「だからって全開にして出すなよな。オレの力じゃお前の全力には敵わんのだからよ」
「わかってるって。これでも魔力制御はメッチャ訓練したんだからさ」
ほんと、頼むよ。
「ミタさん。カイナの魔力、感じる?」
オレにはよくわからんのでミタさんに尋ねた。
「多少は感じます。ですが、並みくらいにはなってるかと思います」
ミタさんの並みが本当に並みかは疑問だが、まあ、レニスも並みではねーから大丈夫だろう。
「んじゃ、昼食にすっか」
中へと戻り、皆で昼食をいただいた。




