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村人転生~最強のスローライフ  作者: タカハシあん
十歳スタート

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1186/1852

1186 男泣き

 夕食が終わり、サプルによるお土産話が開催された。


 友達と遊んだーとか、舞踏会にいったーとか、まあ、半分は右から左へと流れ、サプルがうつらうつらしたのでお開きとなった。


 時間はまだ九時前なので、もう一読書といくかね。


「ベー。ちょっといいか?」


 と、寝室に下がったはずの親父殿が戻って来た。なによ?


「う、うん、まあ、一緒に飲もうと思ってな」


 オレ、酒飲めねーよ。と言うのは野暮か。親子の話をしたいって言ってんだからよ。


「イイよ。書斎で飲もうぜ」


 ここではメイドの目があるからな。二人っきりがイイだろう。


「ああ」


 ミタさんにやすんでイイと目配りし、次にドレミ。プリッつあんは……いませんでした。幽霊は消えててね。


 久しぶりに親父殿の書斎に入ると、なんか家具の配置とか酒の量とか変わってんな。


「客が来てんのか?」


 変わってるってことは利用してるってこと。誰が来てんだ?


「ああ。冒険者時代の知り合いがな」


 A級ともなれば知り合いも多いだろうよ。人付き合いも大変そうだ。


 たぶん、カイナーズホームで買っただろう、合成革のソファーへと身を沈める。


「なにを飲む?」


「親父殿と同じのでイイよ」


「訊いておいてなんだが、飲めるようになったのか?」


「飲めねーよ。形だけ付き合うだけだ」


 片方がホットミルク飲んでたら締まらねーだろう? 雰囲気は大切だぜ。


「じゃあ、ウイスキーにするよ」


 なんでもどうぞ。


 カウンターで手慣れた感じに酒を用意する親父殿。書斎を使いこなして……んのか? まあ、親父殿の領域。好きなように使えだ。


 酒を受け取り、結界で包む。酒の香りで酔っちゃうからね。


「そう言や、親父殿って冬はなにしてんの?」


 雪がそれほど積もらない土地なので、山の者は木を伐るが、集落のもんは内職か海で漁を手伝ったりするな。


「バンたちに剣を教えたり狩りにいったりだな。あと、牧場の様子見、かな」


「やることがあってなによりだ」


「お前はなにしてたんだ?」


「ラーシュに送るもの作ってたり薬草煎じてたり、まあ、いろいろだな」


 思えばあの頃がスローライフしてたな~。いや、今でもしてるよ! そうは見えないとか言っちゃイヤだからね。


「冒険もよかったが、こうのんびり過ごすのもいいもんだな」


 グラスをかかげて満足そうに微笑む親父殿。百八十度違う生活してるのによく馴染んだもんだ。


「今の暮らしに乾杯、だな」


「ああ。今の暮らしに乾杯だ」


 グラスをぶつけ合い、酒を飲み合う──ことはできないんで形だけね。


「ワリーな、酒が飲めない息子でよ」


 サプルもトータも酒が飲めるまでまだ時間がかかりそうだし、一人酒に楽しみを見つけてくれや。


「そんなの構わんよ。こうして息子と語り合えるんだからな」


「息子として嬉しいよ」


 乾杯で喜びを表現し合った。


 しばらく無言が続くが、沈黙もまた酒のツマミ。よく味わえ、だ。


「……シャニラに子が宿った……」


 イイ空気が満ちる中、親父殿がポツリと呟いた。


「そうか」


 まあ、やることやれば今さらだろうな。


「その、おれは詳しくないんだが、シャニラの歳でも大丈夫なのか? サラニラは大丈夫だと言うが……」


「問題はねーよ。体は丈夫になってるからよ」


「ん? なってる? どう言うことだ?」


 あれ? オカンから聞いてないのか? 


「前にオレが飛竜を求めたのを覚えているか?」


「あ、ああ。そんなことがあったな。二、三年前、だったか?」


 時期はいつでもイイよ。飛竜のことさえわかるのならな。


「あのとき、オカンは心臓の病にかかってた」


「ほ、本当か!?」


 心臓の病ってのは結構昔から知られている病で、驚いたことに薬もあるそうだ。まあ、メチャクチャ高額らしいけどな。


「ああ。オレも気をつけていたんだが、末期まで気がつかんかったよ」


 ほんと、あのときはこっちの心臓が止まるかと思ったわ。


「な、治ってるんだよな?」


「治ってるよ。なんせ、万病に効くと言う竜の心臓を食わせたからな。オカン、メッチャ元気だろ?」


 あれから風邪一つ引かなくなったし、なんか若返った感じだ。


「あ、ああ。オレより元気だ」


 なにが? なんて訊いたらダメよ。いろいろ、ってだけ理解してなさい。


「だから、妊娠しても大丈夫だよ。なにかあれば隣に医者がいる。なくした腕すら蘇らせる薬もある。なんら恐れる必要はねーよ。生まれ来る子どもの名前でも考えてろ」


 それでダメでも神(?)からもらった転生者たちの力を借りる。もう家族を死なせたりしねーよ。


「……よかった……」


 両手を顔に当てて小さく呟く親父殿。オカンは愛されてんな。


 男の泣く姿を見るのは失礼と、グラスを置いて書斎から出た。


 まあ、思いっ切り泣くとイイさ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新に感謝! [一言] 家族の団らんこそ、至宝だね! (あー珈琲が、んめー)(^o^)
[一言] 男ならトンヌラやな(明後日の方を見ながら
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