1167 回復薬作り
手持ちの薬が切れた。
バイブラスト公爵領のフュワール・レワロで集めた材料もスッカラカン。ちょっと経験値集めに没頭しすぎたか……。
「薬の材料ってあります?」
飽きもせずついて来ている大図書館の魔女さんに尋ねる。
「ある。こちらだ」
と、歩き出した大図書館の魔女さんのあとに続く。そして、オレのあとには一般(?)魔女さんズが続きます。
……魔女は暇なのか……?
で、大図書館の魔女さんに連れて来られた先は、サーカスでも開けそうなくらいのドデカなテントだった。
「ここは?」
「我らの工房だ」
魔女の工房か。それはおもしろそうだ。
テントに入ろうと入口を潜ると、なんか空気が変わった。
「…………」
中に入り絶句した。
……な、なんだこれ……!?
どう理解したらイイんだろう。なんとも不可思議な空間となっていた。
右を見れば標本棚の森があり、左を見れば図書館があり、下を見れば工房が犇めき合っている。上には大小様々な謎の球体が浮かんでいる。
なにより絶句させられるのはそこを飛び交う魔女の多さだ。少なくても二百人はいるぞ……。
「お主でも驚くのだな」
そう言う大図書館の魔女さんもオレを見て驚いていた。
「これを見て驚かないのは感情が死んでいるヤツだけですよ」
魔女が飛んでいる光景を前になんも感情が働かないヤツは精神がおかしくなっている証拠だ。
「そうか」
なにやら愉快そうな大図書館の魔女さん。なんなんだ、いったい?
「こちらだ」
と、大図書館の魔女さんがふわりと浮かび、上空へと飛んでいった。
「……現実の魔女は夢がねーよな……」
グレン婆も空飛ぶ箒も教えろや。なに画竜点睛を欠いてんだよ。ったく。
夢を補うために無限鞄から空飛ぶ箒を出して大図書館の魔女さんを追った。もちろん、背後の魔女さんズもね……。
空を飛ぶ大図書館の魔女さんが一つの球体に向かっていき、そのまま球体に飲み込まれてしまった。
「大丈夫なの?」
後ろの魔女さんに尋ねる。
「はい。そのままお進みください」
そう言うのなら進むのみと、球体に突っ込んだ──ら、なんか引き出しがいっぱいある部屋へ現れてしまった。
「薬材庫だ。好きに使うがよい」
す、好きにって、引き出しに名前も書いてないのに無茶言わんといて。
「コリアント。補佐しろ」
「はい。ララ様」
と、やたら色っぽい魔女が現れた。変な補佐じゃないよね?
「薬材庫の責任者だ。材料を言えば持って来る」
「なんでも言ってくださいね」
魔女でなければ素直に色っぺーと思うのだが、感じる気配がなんかヤベー。ほどよい距離感がベストだろう。
「ハナラマ草ってある?」
「はい。たくさんありますよ」
「バシナラ草は?」
「回復薬の材料ですね。では、すべて持って来ます」
配下と思われる魔女に指示を出して回復薬の材料を持って来てくれた。
「クルムット流の回復薬か。そう言えばアーベリアン王国の者だったな」
「回復薬に流派とかあったんですね。初めて知りました」
ところ変われば材料も変わるとは聞いてたが、流派として区別されてたんだ。
「帝国では六十四の流派がある。植物は環境で変わるからな」
「そうですね。天候でも変わりますからね」
同じ材料で同じく作っても、材料の良し悪しで効果は変わって来る。均一の薬を作るのはメッチャ大変なのだ。
「回復薬しか作らないのか?」
「いえ、エルクルクも作りますよ。ただ、軽症ていどで使うのはもったいないので回復薬を多く作っておくほうが効率的なんですよ」
大抵の傷は普通の回復薬で充分だし、エルクルクを使う状況など滅多にない。今回は帝国が無茶苦茶なだけだ。
「あ、入れ物ってあります?」
小瓶も品切れなんだよね。あるんならちょうだいな。
「ありますよ。すぐに持って来ますね」
「ありがとうございます」
さてと。他人の材料だし、作れるだけ作っちまおうか。魔女の工房ならイイのが揃ってるだろうしな。
錬金の指輪と魔力の指輪を出して指に嵌める。
「それはもしかして錬金の指輪か?」
「ええ。知り合いからいただきました」
「よく手に入れられたな。帝国でも数えるほどしかないのに」
「世界は広いってことですよ」
小瓶が詰まった大量の箱とともに、なぜか前掛けっぽいものをした若い魔女さんもやって来た。え、なに?
「回復薬はこいつらに作らせる。お主はエルクルクを作るとよい」
大図書館の魔女さんが指差す方向にはベテランっぽい魔女さんが勢揃い。それはつまり、エルクルクの調合配合を教えろってことですね。
まあ、隠すほどでもねーし、大量に作れるならオレに否やなし。んじゃ、ジャンジャンバリバリ作りますか。
そして、四日間。回復薬作りに励んだとさ。めでたしめでたし。




