1143 買い物開始
やはり中も閑散としており、休みかと思うくらい静かだった。
「BGMもなしか」
前に来たときは、所々に楽器を奏でる者がいて、賑わいに消されない程度の音量があったものだ。
「休みではねーよな? 入れたんだから」
「はい。営業はしていると聞いております」
もう「誰に?」とか突っ込む気持ちにもならんが、コンシェルジュ的な人は欲しいところだよな。知らんことがあるとき聞きたいからよ。
「騒がしいのは嫌だが、静かなのも嫌なもんだな」
なんかこう、買い物欲が下がっていく感じだわ。
「そうね。人がいて活気があるから楽しいのよね」
人の世界に来て一年も経ってねーのに、なんか悟ってるメルヘンさん。君もなんだかんだ言って波乱万丈だよね。
「それはともかくとして、どこから見るかね?」
一階は食事処な感じで、この辺は公園と言うか庭園と言うか、憩いの場的な感じだ。
「ベーの欲しいものって、レヴィウブにあるの?」
「んー。あるにはあるんだが、大量には売ってねーし、買い占めもできねーんだよな」
珍しいものや希少なのはたくさん売ってるんだがよ。
「それって食料品?」
「ああ。無限鞄の中身が寂しくなって来てよ。ここらで補充しておきたいんだよ」
今は冬なので大量に、ってのは無理だと思うが、レヴィウブならあるんじゃねーかと来てみたわけさ。
「食料ならカイナーズホームで買えばいいじゃない。あっちのほうがいっぱいあるんだから」
「確かにカイナーズホームのほうがいっぱいあるが、オレの買い物は情報収集も兼ねてんだよ」
「情報収集?」
「そっ。どこになにがあるか、どんなものが生っているか、どの季節にどんな野菜が育つか、そこの場所は、気候は、人は、ってな。カイナーズホームばかりで買い物してたら世界に疎くなるわ」
ただでさえ情報を仕入れるのが困難な時代。待っていては情報難民。自ら進んで動かなければ世界に負けてしまうのだ。
「村人のセリフじゃないわね」
「S級村人のセリフだからな」
なんて漫才してたら陽が暮れる。食料品店が少ないとは言え情報収集しながらの買い物。時間は有効に使え、だ。
……あ、ゆったりまったりも有効な時間の使い方ですからね……。
確か、食料品関係は二階だったはず。階段はどこだ?
「ベー様。あちらです」
情報収集の申し子みたいなミタさんに案内され二階へと到着。やはりここも閑散としていた。
「従業員に悪いことしたな」
客がいるうちは休みにできない客商売。オレが買わせていただくのでご容赦を。
まずは焼き菓子の店と思われる店へと突入する。
どうやらこの店はクッキーがメインのようで、ショーケース(ガラス製と金がかかってるぜ)にはいろんなクッキーが並べてあった。
「おねえさん。ここにあるものはここで焼いたものですか?」
奥が見えない上に焼いている匂いもないが。
「はい。そうでございます」
「もし可能なら、ここあるものをすべていただきたいのだが」
さらに可能なら店内にあるものすべてをいただきたいです。
「はい。大丈夫でございます」
無茶な注文に動じることがないおねえさん。さすがレヴィウブの従業員である。
ショーケース内のクッキーを箱詰めしている間に試食をさせてもらう。プリッつあんとミタさんが、だけど。
「ミタさん的にどうよ?」
お菓子大好きメイドのお口に合いますかな。
「甘さはそれほどないのでお茶請け的なものですね」
「上品な味ではあるけど、オヤツにはならないかな」
帝国貴族のお菓子に対して辛辣なメルヘンとメイドだこと。まあ、参考にはなるけどよ。
オレも一ついただく。ふむ。確かにほのかに甘く、単独で食べるには物足りない。茶請けに、ってのがよくわかる。
これは、うちで出しても受けないだろうが、甘さを知らない者には喜ばれるだろう。我が鞄に入れるに値するものである。
「結局買い占めちゃったわね」
ハイ。その日に焼いたものはその日にしか売らず、残ったものは廃棄するらしいので、遠慮なく買い占めさせてもらいました。
「あ、明日も買いに来るんでよろしく」
遊覧飛行はしばらく続くだろうし、船を改造するのにも日はかかる。その間は注文させていただきまっす!
イイ買い物できたと店をあとにする。
「おっ。お隣はジャム店か。こりゃイイ」
ジャムの歴史は結構古く、帝国には甜菜みたいなものを作っているので甘いジャムがあるのだ。
「どんなジャムがありますかね」
では、突撃でござる!




