1139 改造計画
「ってか、なんでお玉さんがいんの?」
しれっとさ。あと、美魔女さんの背後にいる理由もお教え願えたら幸いです。
「……なんの拷問よ……」
たぶん、精神を苦しめる拷問だと思うよ。
「幽霊としての格は高いようですが、取り憑く者に不快を与えるようではまだまだですね」
うん。背後の幽霊はちょっと黙ってようか。話がメンドクセーことになりそうだからさ。
「ごめんなさいね。この子、とっても取り憑きやすいから、つい」
……そう言うのあるんだ……。
「あ、それ、わかります~。取り憑きやすい人ていますよね」
そんな幽霊女子のあるあるなんて聞きかねーんだよ。黙ってろ!
「暇なのか、お玉さんは?」
あんたここの責任者じゃねーの? いや、幽霊がどんな責任取るか知らんけど!
「基本、暇ね。幽霊だし」
あ、うん。そうだね。忙しい幽霊とかいないよね……。
「まあ、暇なら美魔女さんの相手してくれや。美魔女も暇してるみたいだしよ」
「わたしは、あんたに無理矢理連れて来られたんだけどね!」
「だっていきたくないとか駄々こねるんだもん」
ほんと、引きこもりを外に出すってメンドクセーよな。まあ、一生引きこもらせておかなくちゃならない存在よりはマシだけど。
「そもそもわたしがここに来る意味はあったの?」
「ん~。あるかないかと言われたら『ない』だな」
声をかけねーのもワリーかなと思って誘った(拉致ったかな?)だけだしな。
「ぶっ殺すわよ!」
その前に背後の幽霊に呪い殺されそうな状況だがな。スッゲー悪霊な顔してるぜ。
「ダメよ。この子を殺したらわたしが許さないから」
お玉さんや。なんか番長皿屋敷みたいな顔になってますよ。あと、その黒いの、マジヤバめなので押さえてください。皆さまがおしっこちびりそうな顔してるんで……。
「ま、まあ、せっかく来たんだし楽しんでいけや。金はオレが出すからよ」
それで許してちょうだいな。
「……破産するくらい使ってあげるわ……」
おう。その意気だ。どんどん使ったれ。
美魔女さんのことはお玉さんにサクッとマルッと任せてコーヒーブレイク。あーコーヒーうめ~!
「ねえ」
と、離れた席で静かにしていた赤毛のねーちゃんがやって来た。
「どうしたい?」
「どうしたい? じゃないよ。わたしらはなんのために連れて来られたのよ?」
あれ? なんだっけ? 知ってる人、手挙げて?
「ぶっ殺すよ」
ヤダ。あなたそんなキャラでしたっけ? もっと真面目なお嬢さんだと思ってたのに。
「ハハ。冗談だよ。ねーちゃんに新しい船を与えるためさ」
「あんたの冗談は冗談に聞こえないのよ……」
うん。マジで忘れてたからね。
「まあ、いいわ。それで、どんな船なのよ?」
「一応、貨客船だな。前の船の三倍で、大陸間を航行できる性能は持たせるかな?」
「かきゃくってなに?」
ん? あれ? こちらに貨客船はねーのか?
「荷物と人を運ぶ船のことだよ。冒険商人の船なんてまさに貨客船だろうが」
会長さんの船も貨客船って感じだったろうがよ。
「船は船でしょ。なんで分ける必要があるのよ」
あ、うん、この世界の海じゃしょうがねーか。分ける必要があるほど航海できるわけじゃねーしな。
「必要と言うか、区別だな。これから船が増えるからよ」
東大陸との航路が確立されたら船の行き来は増え、物の流れも増えていく。そうなれば商機を求めて他にも流れていくことだろう。
なれば船の需要も増え、先に征していたほうが勝つ。オレは海運業の王となる! かどうかは別として、ヤオヨロズ国の食料事情を少しでも早く改善しねーと。うちの倉庫も空きが出て来たからな。
「船はいつできるんだ? 明日か?」
「いや、船がそんな簡単に造れるかよ」
なに非常識なこと言ってんだ、このねーちゃんは? 頭大丈夫か?
「……あんたにそんな目で見られるのが不愉快でしょうがないよ……」
なら常識持とうぜ。
「船は春に向けてだな。大陸間を航行する船だからしっかり造らんとならんからな」
ファンタジーの海をナメたらすぐに海の藻屑になっちまう。そうならないためにも時間をかけて造るのだ。シュードゥ族が、だけど。
「じゃあ、それまでは船に乗れないのか……」
骨の髄まで船乗りなんだな、このねーちゃんは。
「いや、乗れるぜ。ねーちゃんの船……は、なんて言ったっけ?」
ごめん。ねーちゃんの名前も船の名前も忘れました。覚える気もないけど。
「サリエラー号がなんなんだ?」
「本格的に改造して、高速魔道船にする」
サリエラー号大改造計画、ここに発動だ!




