1135 楽しい日々に乾杯
「ワリーな、放っておいて」
なにやらハルメラン組が一ヵ所に固まり、オドオドしています。どったの?
「まったくだよ! 居辛いわ!」
なにやら一同を代表して三親方の一人、頬傷の親方が叫んだ。
「別に普通にしてたらイイじゃねーか。造船所完成披露と今日までガンバってくれたあんたらを慰労する集まりなんだからよ」
帝国のヤツらはついでに誘ったまで。重要視するのはこっちだ。
「無茶言わないでください。帝国の、それも周りすべてが貴族とか、怖くてあちらを見れませんよ」
とは市長代理殿。お洒落が台無しになるくらいビビってんな。
一都市の長(まだ代理だけど)が情けねーな。いくら外国の者だろうが、都市の規模から言えば伯爵に匹敵する立場だ。なんら怖じけづく必要はねー。同等の立場で接すればイイんだよ。
「それに、おれらは異種族だぞ。なにされるかわかったもんじゃねぇわ」
頬傷の親方のセリフに他のシュードゥ族が頷いた。
そう言う種族対立とか知ってんならもっとクルフ族と仲良くしろや、と言うだけ無駄か。これとそれとは問題が違うしな。まったくメンドクセー。
「ここでは種族がどうこう言ったら排除されるから心配すんな。もしいたらオレに言え。夜便所にいけねーように呪ってやるからよ」
「……それ、わたしにやれとか言わないでくださいね……」
うん。背後の幽霊はちょっと黙ってようね。ってか、できたらソッコー除霊するわ!
「周りをよく見てみろ。うちのメイドが平気に働いてんだ、なんら問題はねーよ」
魔族と知っているかどうかはわからんが、こうして受け入れられてんだから心配する必要もねだろう。つーか、受け入れてる帝国人がどうかしてんじゃね? 寛容すぎんだろう。
「ええ。ここにいる限りあなたたちに手を出させないわ」
と、見知らぬ婦人がそんなことを口にした。え、あなた誰よ!?
「玉よ」
「お玉さん? え、なんで?」
あなた幽霊じゃなかったの? あのときは幽体離脱してたの?
「憑依してるのよ」
あ、うん。幽霊ですもんね。できて当然だよね~。アハハ。
「へ~。憑依する幽霊なんて初めて見ました~」
うん。あなたが言っちゃダメなセリフだよね。つーか、幽霊にまともなのはいねーのかよ! いや、まともな幽霊ってなんだよって話だがよ!
「お玉さん、悪霊じゃないよね?」
悪霊だったらこの関係考え直させてもらいまっせ。
「失礼ね。わたしは普通の幽霊よ」
なんだろう。おもいっきりグーで殴りてーこの憤怒。今ならオレの小宇宙を爆発させられそうな気がするわ。
「変な幽霊ですね」
うん。だからあなたが言っちゃダメだから。あなたも変な幽霊ですから。あと、なんかドロドロした気配が漏れてますから。ほんと、マジ勘弁してください……。
「まあ、イイや。来たんなら紹介しとくわ。こっち、ハルメランの市長代理殿。名前は……なんだっけ?」
ごめん。完全無欠に頭文字すら出て来ません。いつもの通りやん。とかの突っ込みはいらんがな。オレの中では市長代理殿なんだよ!
「……マルレナ・トゥールゼンと申します。お見知り置きを」
あーそんな名前だったんだぁ~。イイ名じゃないか。うんうん。
「わたしは玉。このレヴィウブの主よ。よろしくね」
「は、はい。よろしくお願いします!」
憑依している婦人からこれと言って威厳は感じんのだが、市長代理殿は冷や汗を流しながらお辞儀している。
「ってことだから市長代理殿にレヴィウブへ立ち入る許可をくれや。ゼルフィング商会の枠でよ」
「ベーの紹介なら大歓迎よ。でも、ハルメランって聞かないわね? どこにある都市?」
「自由貿易都市群にある都市の一つだよ。まあ、地図がないんで場所は説明できんがな」
たぶん、カイナーズで制作はしてると思う。なんか偵察機みたいなのが毎朝どこかへと飛んでいってたからな。
「……自由貿易都市群……?」
「知らんのかい? まあ、帝国の者から見たら外国のことなんてわかんねーか」
オレだって帝国の地名を言われたってわかんねーんだからな。
「そんな外国のことを知っている村人と言うのもどうかと思うけど」
「オレから言わせれば外を見ねー帝国がどうかと思うがな。世界は常に変化してるんだからよ」
大国に胡座をかいてたら知らんうちに小国に追い抜かれていたなんてことはある。そんな国に未来はねーし、希望もねー。ただ衰退するだけだ。
「ふふ。世界を憂いる村人とはおかしなものね。あなたはなにを求めているの?」
「もちろん、平和に決まってるじゃねーか。他になにを望むって言うんだよ?」
平和があってこそのスローライフ。戦乱なんてノーサンキュー。穏やかな日々をウェルカムだ。
……まあ、忙しく動かないとならないのが難点だけどな……。
「フフ。怖い村人だこと。知らない間に侵略されそうね」
「そうだな。そうできればイイんだが、世には賢いアホがいるからメンドクセーぜ」
波乱混乱大歓迎。平和などクソ食らえ、なヤツや集団がいる。滅ぼしても滅ぼしても湧いて出て来やがる。まったく困ったもんだぜ。
「お玉さんは、平和は嫌いかい?」
「退屈な平和は嫌いね」
「奇遇だな。オレもだぜ」
オレは変わらない毎日を求めてるわけじゃねー。変わっていく毎日をゆっくりまったりイイ感じ~で過ごしたいのだ。退屈なんぞ求めてねーわ。
ミタさんからコーヒーをもらい、高々とカップを掲げた。
「楽しい日々に乾杯だ!」




