1133 イヤン
今日も朝からトンテンカン。ハンマー振ってトントントン。鉄骨担いであらよっと。あっちにこっちにスタタタター。
「なにしてるの?」
なにやら凍えるような問いが真上から降って来た。
「魔道船の造船所を造ってるのさ!」
そんな冷たさもなんのその。燃える思いを込めて答えてやった。
もう何個目の造船所か忘れたが、今回はシュードゥ族との合作で、プロの知恵や技術を注ぎ込んだものだ。これまでの素人作とは丸っきり違うぜ!
「よし! できた。親方! 具合を見てくれや!」
この造船所建設の総責任者で魔道船造って百二十年の生ける伝説たる親方に向けて叫んだ。
「ほー。上手いもんじゃねーか」
ハンマーで溶接した部分を叩いて具合をみた親方が満足そうに頷いた。
「溶接具がイイからさ」
カイナーズホームから買って来た溶接器や電動ドライバーと言った前世の工具を魔道具へと作り変え、その具合を確かめていたのだが、もうスゲーとしか言いようがねー。
「鉄を溶かす温度まで高めるなんてクルフ族でもできなかったぞ」
まあ、カイナーズホームが近くにあるから作る必要もねーんだが、試しに作ってくれと言ったのだが、温度が上がらず挫折したと報告が来たものだ。
「クルフと一緒にすんじゃねぇ! おれらに作れねぇ魔道具はねぇ!」
その技術力に発想力が加われば最高にして最強なんだろうが、天は二物を与えずと言うのか、神は片方しか与えなかった。
「そいつは心強い。どんどん魔道具を作ってくれや」
クルフ族もシュードゥ族も活用しているオレがどちらかに肩を持つことはできねーので、持ち上げるだけに止めておく。
「任せておけ。シュードゥ族の力を見せてやるよ」
「おう。楽しみにしてるぜ!」
造船所造りを再開──と言っても素人のオレが下手に混ざるとプロの邪魔となるので、補助的な感じで造船所造りをしています。
あらよ、ほらよ、どっこいしょー。と汗を流す仕事はなんとも心地よいものである。そして、仕事のあとの一杯(炭酸ジュースだけどね)はなんと格別なことか。生きている喜びを感じさせてくれるぜ!
「村人じゃなくなってない?」
うん。オレもそう感じていたところです。
「なにやってんだオレ!?」
つい楽しくて建設作業員になってたよ!
「……オレの悪い癖だな。集中すると目的を忘れる……」
ってかオレ、なにをしようとしてたんだっけ? 誰か知ってる人いる?
「魔道船を造るからと呼ばれたんだがね」
あ、そうそう。そうだった! 魔道船を造るために魔道船用の造船所を造ってたんだわ。なぜそれで忘れるよ、オレ。
「ってか、久しぶり。元気にしてた?」
お洒落なコートを羽織る赤毛のねーちゃん。
覚えているだろうか。親父さんの娘さんのことを。いたらオレにどんなねーちゃん(キャラ)だったかを教えてください。お願いします!
「……無理矢理連れて来て、四日も放置してたあとのセリフがそれかい。殴るよ……」
「はい。これでやっちゃいなさい」
と、こちらも久しぶりなメルヘンさんが近くにあった魔道剣を赤毛のねーちゃんに渡した。
あ、ちょっと、止めて! その魔道剣、ハンパないものなんだからさ!
さっとミタさんの背後に避難。助けて、ミタえもん!
「……なんでしょうか。前にもこんなことがあったような……?」
ないない。ミタさんを盾にしたことなんてないよ。気のせいだよ。そんなことより赤毛のおねえさまにお茶を差し上げて。お菓子も忘れちゃダメだからね。
「で、なんだっけ?」
とマジで聞いたら赤毛のねーちゃんの額に青筋が浮かび上がった。
ヘイ、レディー。君に怒りは似合わないぜ。あと、テーブルの下で足蹴りしないで。痛くはないけど地味に傷つくからさ……。
「ふざけたことばかり言ってると海に沈めるわよ」
え? それで気が済むの? なら沈めてくれてイイよ。まあ、すぐに浮いては来るけどさ。
「落ち着きなさいナバリー。フィアラに言って叱ってもらうから」
なぜそこで婦人を出す。関係ねーだろう。だが、全身全霊をかけて謝っておこう。ごめんなさい!
「……あんたには矜持ってものがないの……?」
そんなもんゴブリンに食わしちまえ! 必要ならオレは土下座でもなんでもする男だ。だから許して!
「はぁ~。もういいわよ」
ハ~イ。お許しが出ました~。
「あーコーヒーがうめー!」
許されたあとのコーヒーが旨いこと。心が洗われるようだぜい。
「…………」
おっと。許してくれたんだから魔道剣を握っちゃイヤン。紅茶でも飲んで落ち着きなさいよ。
「船の調子はどうだい?」
気持ちも話も変えて未来へと歩むとしましょうや。だから魔道剣を振り上げちゃイヤン。ケーキでも食べて落ち着きなさいよ。
「……順調、とは言えない。力が足りなくて外洋に出れないんだ……」
「まあ、あの魔道剣の出力ではな。船も重いし」
もう二回り小さいなら適当なサイズなんだろうが、それでは近海を遊覧するのが精一杯。外洋を渡るのは自殺行為だろうよ。
「なんで新たに魔道船を造る。その魔道剣を出力装置としてな。もちろん、使っている船は土へと還し、形見の魔道剣はねーちゃんの好きにしな」
どうも形見のものを使うってことに違和感と言うか、モヤッとしたものがあった。だから機会があれば新たに魔道船を造ると考えていたのだ。
「で、どうする? 今のままでイイと言うならそのまま使えばイイし、新たに船を望むなら造るが」
押しつけはしねーよ。これはあくまでもオレの問題だからな。
「新しい船を造ってくれ! 力がある船が欲しい!」
「わかった。最高の船を造ってやるよ」
シュードゥ族が、だけどよ。
いつも誤字報告ありがとうございます。




