1119 ジャンジャンバリバリ
あらよっ! ほらよっ! どっこいしょー! は魔法の言葉。それを唱えるだけで二階建ての家ができました~!
なんてことはなく、最初にもらい受けた場所に建てるのに半日はかかったわ。もう辺りは真っ暗だぜ。
「基礎はともかく石組みの家は難しいぜ」
「いや、半日で造るとかあり得ねぇーから!」
なんて突っ込みを入れて来たのはシュードゥ族の土建屋さん。名前は……忘れたから親方でイイか。
「そこは努力と根性の賜物だな」
神(?)からもらった才能とは言え、なにもしないでは宝の持ち腐れ。才能は鍛えてこそ力となるのだ。
偉そうなこと言うな。とか言うアホは画用紙に絵でも描いてみろ。原稿用紙に物語を書いてみろ。自由だからと言って細かい描写はできるのか? 文字を書けば物語になるのか?
まあ、世の中には天才奇才がいる。初めてでも描いたり書けたりもするだろうさ。だが、オレには無理だ。幼児にも劣る絵しか描けねーだろうし、小学生並み物語しか書けねーだろう。センスもねーしな。
それは土魔法も同じ──どころか魔法のねー世界で生きて来たオレには謎だらけ。少しずつ使ってみて、模索して、試してみて、失敗してみて、反復練習の繰り返し。それを温かく見守ってくれた両親には涙が出るほど感謝したわ。
試行錯誤や訓練は今も続いている。まあ、オレは影でがんばるタイプなのでよく非常識とは言われちゃいますけどね。
「その歳で努力と根性と言われたらおれらの立場がねぇぜ」
「職人の弟子の育て方に文句はねーし、口出す気もねーが、オレはあんたらとは違う方法で技術を習得してんだよ」
技は盗めもイイとは思う。だが、オレは土魔法に一生を懸ける気はねー。先人に学べるのなら頭も下げるし金も積む。短縮できるところは短縮するんだよ。
「立場がねーと嘆く暇があるなら知恵を絞れ。前を進む者に教えを請え。技術を停滞させる矜持なんぞゴブリンに食わせちまえ」
なにを! と反発するならそのまま滅んじまえ。先を進む者の邪魔だ。だが、なにクソと、やってやんよとか、強がりでもイイから口にできんならオレはオレの持っている知識も技術も惜しみなく出してやるさ。それは回り回ってオレに返って来るんだからな。
「ミタさん。夕食を頼むわ」
それ以上はなにも言わず、いつの間にかそこにいたミタさんに夕食を頼んだ。ちなみにプリッつあんはいません。ヴィベルファクフィニー号──と言うか、カイナーズホームと言うか、家具とか食器とかの買い出しをお願いしました。
「あんたらも食っていくかい?」
一応、朝に来てもらい、暗くなったら終了とは言ってある。うちは労働者に優しいところなんでな。
「いいのか?」
「構わんよ。うちは何人いても大丈夫な体制だから」
ミタさんの背後には何十人(怖いから正解には調べないけどさ)といる。百人と増えたところでビクともしねーだろう。だよね?
「皆様の分もご用意しておりますので遠慮なさらないでください」
にっこり笑う万能メイド。いつもあなたには感謝しかありません。
「あんたら酒は飲めんのかい? 飲めるなら出すぜ」
以前、カイナが出した酒がまだまだあるし、魔大陸で食料と交換したガルメリアって酒もある。あ、そう言えば、隊商から買ったエールが樽であったな。
いずれと思って貯めておいたが、他から酒が手に入りそうだし、ここで消費しておくか。うちじゃエールを飲むヤツなんていねーしな。
「あ、ああ。飲めるんなら是非とも頼む。なかなか飲める機会がねぇんでな」
飲めない? なんで? カイナーズで……は買えねーんだったか?
「食料は支給はしてもらえるが、酒や嗜好品は支給してもらえやしねぇんだよ。シュードゥ族は仕事がなく、難民キャンプで過ごしてたからな」
そう言うところははっきりしてんだな、カイナのヤツは。まあ、頼られて、依存されたらメンドクセーし、はっきりと区別してわからせるほうが自立心は芽生えるってもんか。
「じゃあ、うちで働いている間は夕食には酒を出してやるし、身内価格で安く売ってやるよ」
オレもカイナに見習って、シメるところはシメらせてもらうか。それでも前世基準だから甘いっちゃー甘いんだがな。
「それは助かる! 酒がなくちゃ生きてる意味がねぇからな!」
やはりドワーフの系譜だけあって酒好きな種族なんだな、シュードゥ族ってのは。酒がなくなったら滅びそうだ。
「な、なぁ、べー様よ」
「べーでイイよ。ごっつい親父に様とか虫酸が走るわ」
ほんと、様とか止めて欲しいぜ。なんか村人のアイデンティティーを否定されてる感じだぜ。うん、自業自得なのは理解してるから突っ込むのも止めてね。
「そ、そうか。なら、べーよ。もっと人数を増やしてもいいか?」
「それは願ったり叶ったりだが、忙しいからこそのこの人数なんじゃねーのか?」
ここに来たのは三人。長命だけあって年齢は不詳だが、どうも一線級から身を引いた感じがする。たぶん、引退した連中だろう。
「それはそうだが、酒が出るなら別だ。シュードゥ族は酒が飲めるなら二倍でも三倍でも働ける種族だからな!」
別に威張って言うほどのもんじゃねーと思うが、種族特性ってのはある。んなアホなと言えないところがもどかしいぜ。
「まあ、あんたらがそれでイイってのならオレは構わんよ。汗水流した分だけ飲ましてやるよ」
「そいつはありがてぇ!」
「明日が楽しみだぜ!」
「おいおい、今日は飲まねー気か!」
なんとも陽気なヤツらである。
まあ、なんにせよ。明日からジャンジャンバリバリ働いてくれや。




