1109 天上天下唯我独尊
冒険者ギルド。
その昔、四人の英雄が創ったとされる大規模組織は、この大陸どころか他の大陸まで及んでいるとか。なんとも荒唐無稽な話である。
と、小さい頃そう思い、なにかの偶然の一致かと流していたが、人外や転生者に出会ってからは確信した。冒険者ギルド設立には転生者がかかわってる。アルファベットでランクづけされてんだからな。
「意外とデカいんだな。ハルメランの冒険者ギルドって」
都市の規模から言えば当然と言われたら納得もするし、これだけの規模を維持する仕事があるのかと疑問にも思う。
「冬はそうでもないんだけど、魔物が結構出るらしいわ」
「冒険者も冬は南のほうに移るんだよ」
なるほど。逃げたわけじゃねーんだ。
「となると冒険者相手の店はたまったもんじゃねーな」
「冬は隊商相手にするそうよ。流通は一年中だから」
さすが冒険者。ちゃんと情報収集は行っていたか。
「冒険者ギルドは営業してんのか?」
人の出入りはなく、窓も扉も堅く閉じている。どっから入るんだ、これ?
「冬は閉めて別館に移るのよ。冒険者も職員も七割以上南に移るからね」
へ~。そう言うところもあるんだ。世界は広いな。
その別館とやらは本店(?)から五十メートルほど離れた、大通りから一本入った道の、看板すら掲げてない二階建ての粗末な建物だった。
「随分と寂れてんな。ケチってんのか?」
いくらなんでもショボすぎんだろう。仮にも一都市の冒険者ギルドなんだからよ。
「無駄を嫌ってるんでしょ。ほぼ開店休業状態だから」
「いざってときはどうすんだよ?」
ワイバーンとか出ただろうが。
「いざと言うときは都市の兵士が動くでしょ。動かない都市は滅びるだけよ」
滅びかけた都市だけに笑えんな。
「オレに言わせたらいざってときに動けない冒険者ギルドなんぞに価値はねーと思うけどな」
冒険者ギルドの理念やあり方に興味はねーが、いざってときに動くことも、その用意も怠った組織に価値はなし。いや、邪魔なだけだ。この都市にはいらんよ。
「ちょっと、止めてよ。冒険者ギルドを潰すの。冒険者が失業しちゃうじゃない」
おっと。顔に出たか。失敗失敗。
「害にならないならほっとくよ」
「それは害になるなら介入するってことでしょうが。あたしたちはS級を目指すんだから冒険者側につくからね」
「そりゃ怖い。チャコは容赦なさそうだからな」
こいつはオレと同じタイプだ。敵にしたら厄介だろうな。ふふ。
「あんちゃんとチャコが争ったら冒険者ギルドどころかハルメランがなくなっちゃうよ」
弟からの信頼(?)が重い。オレ、そこまで力はないよ。精々、破綻させるくらいだよ。
「冒険者ギルドのあり方に口は出さんよ。元々、冒険者ギルドに興味もないしな」
敵になるならぶっ潰してやるが、そうでないのなら放置だし、好きにしろ、だからな。
「ほんと、頼むわよ」
ハイハイと肩を竦めてみせる。
チャコを先頭に、もう一人の花人(名前なんだっけ?)、ガブ、トータと入り、オレらは最後に入った──のだが、そこは廊下で奥へと続いていた。
ってか、ここはなんて呼ばれてんだ? ここも冒険者ギルドでイイのか?
「仮所って呼ばれてるよ」
トータに訊いたらそんな答えが返って来た。まんまだな、それ。
奥へと進むと、なぜか酒場っぽい場所に出た。
「冒険者ギルドの職員がやってるんだ。冬の仕事として」
所変われば品変わるっては言うが、冒険者ギルドの職員が副業するなんて初めて聞いたわ。ここはよっぽど特殊なところなんだな。
「ってか、疫病騒ぎがあったのに営業してんだな」
ギルド? 店? の中にはいくつかのパーティーがいて、なにやら暇そうにしている。こいつらはなんなんだ?
「南にいくほど実力がないヤツらよ」
と、不快そうにチャコが口にした。
なるほど。言われてみれば安そうな装備を身につけ、負け犬っぽい雰囲気を出している。こんなのと思われたらたまんねーわな。オレなら追い出してるぜ。
「まあ、黒丹病から逃れるだけの運はあるんだからまだマシか」
ましてや南にいけなくても生きてられるんだから生活能力はそれなりにあんだろう。かつあげとかしてたら即追い出すわ。
「そう言や、チャコたちのランクはどこだ?」
普通なら最低ランクのEだろうが、こいつらは見た目を裏切る能力を持っている。
チャコは転生者で三つの能力を持ち、花子さん(仮称)は目からビームを出す。トータはスーパー六歳児。ガブには結界武装を纏わせてある。これでEとかDとかだったら詐欺もイイところだわ。
「パーティーとしてのグロリオサはB級よ。ちなみにあたしはB。カナコはC。トータとガブはEよ」
グロリオサ? また変な名前をつけたな。なんか意味あんのか?
「チャコがB級なのはわかるとしてトータはなんでE級なんだ?」
能力的にはCはある。が、精神的にはEかも知れんがよ。
「隠してるのよ。この歳で大人顔負けとか面倒しか起こらないからね」
こそっと耳打ちするチャコ。
まあ、わからないではねーが、そこを上手く乗ったり切ったり回避したりするのが一流の冒険者だ。アリテラたち闇夜の光はそうしてたぞ。
女だけの冒険者パーティーなんて男の冒険者パーティーから見たら格好のエサだ。侮られたりからかわれたりするのが日常だと言っていた。
親父殿も言っていた。精神的に強く、技術や知識を持ち、臨機応変に対応し、いざとなれば力で示す。それができての一流だと。
まあ、オレ的には『脳筋理論』とは思うが、間違ってもいねーので受け入れてはいる。
「あたしはテンプレ冒険者になる気はないし、従う気もないの。あたしたちはナンバーワンよりオンリーワンを目指すのよ」
なにを言ってるかはわからんが、ニュアンスはわかる。つまり、我が道をいく、ってことなんだろうよ。
「そっか。なにものも染まらないのも一流の証だ。お前らの色になるとイイさ」
天上天下唯我独尊の花と成れ、だ。




