表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/1719

110 小賢者

「さっそくだが、領主に陳情書を書いてくれねーか」


「は? なんだ突然?」


 まあ、確かに突然だったな。


「ワリー。はしょり過ぎたな。親玉のことはオレのほうでなんとかするが、あくまでも村は関係ねーことにしてー。だから領主に最近魔物の出現が多いから調べて欲しいと陳情してくれ」


「いや、さっぱりわからん! それとこれがどう繋がるんだ!」


「陳情書は、将来このことがバレたとき、なぜ報告しなかったの責めを回避するためのものだ。ここでなんの報告もしなかったら親玉と村の関係を決め付けられ、見せしめに殺されるかもしれねーし、うちのアホ領主に責任を押し付けられるかもしれねー。そうならねーための布石だ」


 報告はちゃんとしておくのが責任回避の基本だ。


「だが、あの領主のことだ、そんなもの知らんと惚けるんじゃないか?」


「ああ、そうだな。なんで、冒険者ギルドにも村を護衛する依頼を出してくれ。C以上の冒険者を募集。一日大銅貨五枚。護衛期間は要相談。村の専属になってくれるなら住む場所は村で提供。負傷した場合は村の薬師が診てくれますってな」


「来るわけなかろうがっ!」


「だろうな」


 C級以上の冒険者なら一日銀貨四枚は必至だし、護衛期間要相談なんてあいまいどころか怪しい過ぎて見なかったことにするだろう。ましてや村の専属なんて損でしかねー。いくら住む場所や薬師の援助はあっても普通に依頼を受けていれば充分に稼げるだろう。


「なら、なぜ?!」


「領主が惚けようが握り潰そうが、冒険者ギルドの情報までは手は出せねーし、出したら冒険者ギルドを敵に回す。ちゃんと陳情書を送ったことを証明するもんだ。だから依頼を受けてもらわなくても構わんし、仮に受けてくれるヤツがいるならガンバって村を守ってもらうまでだ」


 もしクズ野郎がきたのならエリナに美味しくいただいてもらえばイイし、物好きなバカがきたら丁重にもてなせばイイだけだ。


「低すぎず高すぎもしない。村で出せる精一杯の報酬。切羽詰まってる感じだろう?」


「……ま、まあ、そりゃそうだが、そんなに上手くいくものなのか?」


「それだけじゃあ、ダメだろうな。だから、他の街でも依頼を出すし、小細工はする。あくまでもこれは、領主のアホが村に手を出させねーためのもんだ。領主の方は別の手を打つさ」


 困ったときの友達頼み。力とコネは最大限に利用しましょうだ。


「他の街へ依頼はオレが行くよ。そろそろルククが遊びにくるからな」


 ここから王都まで十日くらいの距離(一日二十五キロから三十キロ歩いての場合)もルククに掛かれば三時間くらい。竜、ハンパねーぜ。


「なんでしばらくしたら伐り場を解禁してくれ」


「わかった。五日くらいでイイか?」


「ああ、それでイイよ」


 山部落と薪置き場の残量からして十日は持つ。まだ初夏前だから充分取り返しはつくだろう。さすが村長。良く見てるぜ。


「いくのはいつになるかはわかんねーが、そんときは薪の納めは後にしてもらうぞ。泊まりではねーが、朝早く、数回に分けていくからよ」


 いろいろ回りてーところもあるしな。


「お前から充分すぎるくらいの薪は納めてもらってるし、薬代の払いが溜まっておる。気にせんでイイわ」


「ありがとよ」


 別に礼を言う必要もねーんだが、まあ、よりよい立場を構築するための手段。小さいことの積み重ねが大事なのだ。


「んじゃ、なんかあったらまた来るよ」


「なるべくこまめに下りてきてくれよ。小賢者どの」


 ったく。恥ずかしいからやめてけれ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ