1005 考える
「ベー様。買い物終わりました」
穏やかな時間が終わりを告げた。
意識を前に向けると、満面な笑みを浮かべるミタさんがいた。
「買い残しはねーかい?」
「はい。アイスも買いましたし、ジュースも買いました。一月は大丈夫です」
どのくらい買い占めたかは知らんが、とても一月で消費できる量ではないと思うのだが、まあ、一月に一回なら来てもイイだろう。ここ、落ち着くしよ。
「猫と不気味ガールは?」
「アヤネ様ならお帰りになりました」
と、ミレイさんが教えてくれた。
「それと、アヤネ様より伝言です。たまにはお姉様のところに遊びに来てくださいとのことです」
うん。ぜってーいかねー。
と、心の中で堅く決意しながらも了解と答えておく。
「で、猫は?」
「外の長椅子で寝てました」
とは、ボン・キュー・ボンなメイド型ドレミさーん。改めて見ると動き難そうな体してんな。
……まあ、見る分にはイイけどよ……。
外に出て猫を回収。ドレミに渡した。
「世界には変わった生き物がいるんだね」
ばーさんタヌキがしみじみと呟いた。ってことは、ばーさんの種族って結構いんのか? まあ、カイナーズホームでばーさんタヌキ以外見たことないけどよ。
「じゃーな。また来るわ」
「あいよ。またお出で」
あっさりと別れを告げてココノ屋をあとにした。
「プリッつあんは、まだ買い物してんのかい?」
「はい。今は食器選びしているそうです」
まだ終わってないんかい。姉御はそこまで求めてないと思うぞ。
と言ったところでプリッつあんが聞くわけないので好きにさせておこう。
「せっかくだし、戦略ニートの物を買うか」
まだ拠点は決めてないが、用意しておくのもイイだろう。
「寝具売り場に案内してくれや」
「はい。こちらになります」
「つーか、こんだけ広いんだからカートかなんか移動用の乗り物はねーのかい?」
歩くのが嫌とかじゃなくて、無駄に広いから無駄に時間がかかるんだよ。
直通エレベーターからココノ屋までだって十五分くらいかかったんだぞ。十五分あれば軽く一キロは歩けるわ。
「カートですか? 少々お待ちくだはい」
スマッグっぽいものを出してどこかへとかけた。
「ミレイです。六十三区画の十一番にカートを二台出すことは可能でしょうか? ……はい。そうです。運搬用ですか? 少しお待ちください」
問題か?
「ベー様。申し訳ございません。ただ今ご用意できるのは運搬用のカートのみで、お客様を乗せるカートとなると少々お時間をいただきたいそうです」
「運搬用で構わんよ」
時間が短縮できるのならなんでもイイさ。そこに拘りはねー。
しばらくして軽トラサイズのカートが二台、やって来た。
「こう言うカートもあるんだな」
荷台と床の差が五センチもなく、台車の積み降ろしがしやすい用な造りになっていた。
荷台に乗り込み、中を見回した。改造されてる感じだな。
「運搬用で椅子がないので、しっかりとつかまっててください」
ミレイさんは、助手席に座り、後ろを向いて注意して来た。
ちなみに、この運搬用カートにはオレとミタさん。もう一つのカートにはドレミと猫が乗り込みました。
まあ、一台で間に合うと言えば間に合いそうだが、せっかく用意してもらったのだから、ありがたく利用させてもらいましょうだ。
「では、発進します」
スムーズに運搬用カートが発進した。
多分、時速五キロ。やや早歩きくらいな速度だが、移動用としてはこんなものだし、客を乗せていてはこれ以上出せないだろうよ。
のんびり外を眺めていると、カイナーズホームの制服ではない服を着た魔族の集団が遠くに見えた。
「あれは、軍の方ですね」
と、ミタさんが教えてくれた。軍?
「軍のお給料はよいので休暇になるとよく来るんです」
その金はどこから出てるのか気になるが、カイナーズホームに来るくらいには給料がイイのは理解できた。
「あんだけいてカイナーズホームを維持できんのか?」
海軍や魔大陸にいた基地だけでも一万人くらいいんだろうが。
「お給料がよいと言っても月に一回来られるかどうかですし、家庭のある方はほとんどを仕送りしますのでそうは来られないんです」
「……カイナは王に向かんか……」
あれだけの力があればやりようはいくらでもあるだろうに、まったく活かし切れてねー。魔大陸に街の一つでも造って、農業と工業をやれば五万人くらいならやって行けんだろうによ。
「そうなると、戦略ニートは魔大陸かな~?」
最初、ヤオヨロズ国が襲われないように戦略ニートを配置しようかと考えたんだが、下手に置いて人外どもに警戒されるのも問題だと気がついた。
まあ、カイナがいる時点でどうかと思うが、カイナは戦うだけ無駄な存在。でも、戦略ニートは勝てるかも、と思える存在だ。下手に煽るのは悪手だろう。
だからと言って魔大陸も問題はある。戦略ニートは魔王より上の存在だが、他にいる魔王がちょっかいかけてこないとも限らない。基本、魔大陸の魔王は脳筋らしいからよ。
「まあ、なるようになるか」
どっちにしろ魔大陸に街は必要だし、これ以上、ヤオヨロズ国の人口が増えても維持できない。やるしかないのならやれ、である。
寝具売り場まで、そんなことを考えた。




