デジャヴからのブラックホール!
異世界らーぶ!!
保健室へと行ったちなは、その後はいつもどうりの学校生活をおくった。一限目と二限目は制服を洗い乾かすことを理由に授業を休み、保健室にてぐうたらな時間を過ごし、三限目からは嫌がりながらも授業に出て、クラスメートに冷やかされながらの楽しい時間を過ごし、お昼に友達と弁当を食べ、残りの授業をしっかりとうけてからの職員室。みっちり説教されたあとにネックレスとともに解放されたちな。
そのあともいつもどうりだった。
家について「ただいま」と声をかけ、「お帰り」と母に声をかけられる。晩御飯までに宿題を終わらせ、風呂に入り、テレビを見て父の帰宅を待ち、三人で晩御飯を食べる。
いつもどうりだった。
「暑いな~本当に!」
次の日、ちなはいつもどうりの時間に家を出た。その日は朝からじりじりとした日差しで、思わず暑いとは言わずにはいられないほど。ちなは目の上に手をかざし、少しでも涼しくなろうと工夫するが失敗に終わった。
「あー……暑い暑い暑ーい……っつぉっ!!…」
いつもより少しゆっくりと歩いていると、背中に衝撃が走る。首がぐきっとなり、アスファルトの上に転ぶ。上には何かが乗ったままで、身動きがとれない。
「いっつぁ~……あ!ちな?!ご、ごめんね!大丈夫?」
「うおぉぉ……とりあえず退いてくれ、お腹が圧迫されている!」
「ごめーん!!」
上からの圧迫がなくなり、ゆっくりと起き上がると、後ろからまた声がかかった。どうやら知り合いらしい。ちなもそれをわかっている。
「本当ごめんねちな!あ、私、友達待ってるから、先行くね!本当ごめん!!」
「いや、大事大事。転ばないようにな~!」
謝りながら去っていく友達にひらひらと手を振りながら叫び返す。友達が見えなくなるまで手を振る。もちろん歩いてはいるが。友達が見えなくはなっていないが、どうやら友達と会えたらしい。
ふぅ、とため息をつき目を閉じて空を仰ぐ。
なんか、さっきのまじデジャヴ。もしかして、あれ夢じゃなかったの……?
ちなは思い出していた。昨日の谷に起こされる間に見ていた夢のことを。
コスプレイヤーみたいな四人の美形な男女。奇妙な話。歪で大きすぎる砂時計。いきなり現れたブラックホール。落ちていく感覚。何一つ忘れてなどいない。
「………あれ?」
ちなはふと首を傾げた。
顔が、思い出せない。顔だけではなく、服も思い出せないのだ。美形と言うことは覚えていて、見た瞬間にコスプレイヤーと思ったことも覚えてはいる。しかしそれを思い出してみろと言われると、できないのだ。他のことは鮮明に思い出せる、しかしその四人だけはぼんやりと霞がかって見えるのだ。
「なんで………」
ちなの中で、どんどん不安が膨らんでゆく。もしかして、あのサラ…なんとかの言っていたことは、本当なんじゃないのかと。
考えながらも歩みを進める。視界の中に学校が見えてきた。
なぜかは分からないけど、おそらく彼らは顔を見られてはいけないのではない…。そのせいで霞んで見える。うん、そうなんだきっと。他のことは知られても支障がない。きっとそうだ。
って、あれ?私なに夢のことこんなに解析してんの?私変な人じゃん……。でも夢をこんなに覚えているのってなぁ……夢じゃないのかな…。ほんとに。
確かに、今思うと、夢にしてはできすぎなのではないか。そう思い始めるちな。
しかしそんなこともすぐに忘れるような出来事が起こった。
キーンコーンカーンコーン♪
「あ、チャイム………チャイムゥゥウウ?!」
サッと腕時計を見ると八時四十分。ショートホームルーム始まりの時間だった。
ちなは思い出していた。昨日のみっちり説教を。説教の中に遅刻はするなという内容も含まれていたのだ。担任の顔を思い浮かべると、途端に顔から血の気がなくなる気がしたちな。
猛然とダッシュしようとすると、またどこからか音がした。
ゴーンゴーン ゴーンゴーン
いきなりちなの影が濃くなったかと思うと、勢いよくそれが広がり初め、それがあの夢で見たブラックホールにそっくりだと気付いたときにはすでにちなは呑み込まれていた。
『また会うぜ、多分!』
ちなの頭の中に夢で見た四人の美形のうちひとりのセリフが飛び交った。
ちなは精神体とは違い、肉体で感じる落ちてゆく感覚に身震いしながら、どんどん遠のく青い空へ向かって、叫んだ。
「助けてぇぇえええええええ!!!」
次はチナちゃんのエピソードですよ(ゝω・)