物語の続き
――そうして、お姫様は王子様といつまでもいつまでも幸せに暮らしましたとさ――
――おしまい――
いつもそうだ。
『幸せ』
物語はそう言って終わらせられる。
なら、その続きは?
私は本を開く。
こんなところで終らせたりなんかしない――。
子供の落書きみたいにぐちゃぐちゃに本を汚していく。
綺麗な物語なんていらない。
「全部っ……醜いのよっ!」
いろんな色のクレヨンでページを塗りつぶす。
赤も青も緑も黄色も。
綺麗な色は混ざりあって黒になる。
「醜いね」
顔を上げるとそこには一人の少年が立っていた。
嬉しそうでも、悲しそうでもない虚無の顔。
瞳の奥には何も宿してはいない。
「貴方は誰?」
「僕は君ではない。ただそれだけの存在だよ」
「名前がなければ困るわ」
「どうして?」
少年は問いかける。
「名前がなければ、『綺麗』も『醜い』もないのに?」
少年は私の持っていた本を取り上げるとびりびりに破り捨てた。
『綺麗』な終わりの汚れたページが宙に舞う。
「これで『終わらない』」
にこ、と少年は微笑んだ。
「なんで……」
「僕は君の願いを叶えただけだよ。幸せな『終わり』を捨てた」
「『終わり』を捨てたら続いてしまうじゃない」
「そう。でも、『終わり』を捨てたら君が嫌った『綺麗』な終わりは来ない。永遠に続いていくんだ」
ずっと、希望を持って生きていける。
少年は囁いた。
「君は……どうする。続けるのか、『綺麗』な終わりを迎えるのか」
「始まったらいつかは終わってしまうのよ」
当たり前の答え。
少年は少しだけ悲しげに微笑んだ。
「そう、君も同じことを言うんだね」
そういうと、足元からたくさんの紙が溢れ出してきた。
「『終わりを迎えたい』。そう、願っているのでしょう」
紙が。
包み込む。
私を。
そして、
くしゃくしゃに丸められ、床に捨てられた。
だけど、紙は広げられて元通り。
綺麗な一冊の本になった。
さっきよりも1ページだけ増えて。
私が嫌いだった、
だけど、私が求めていた、
綺麗な終わりを迎える物語。
こうして『私』は『私達』になった。
――あるところに少年がいました。
――彼は、とても重い病気にかかっていました。
――そんな彼の願いは一つだけ。生きること。
――彼はとても強く願いましたが、
――彼は死にました。
――だから、彼は今でも願い続けているのです。
――死にたくない、と
だから、物語は今でも続いているのです。




