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1  夢

訪問いただきありがとうございます。

この小説は、自分自身の経験や想いをつなぎあわせて書いています。

初小説なので至らない点も多々あるかと思いますが、少しでも読んでいただけたら幸いです。

 --私が助手席に座っている、あなたが運転している。どこにいくんだろ、行き先は分からないけど、それは私を不安にしない。助手席に座っている、あなたが運転している、それが私を安心させるから。--


 目を開ける。明るい白い壁。青色の椅子。「ゴー」という、うるさくもなく、静かでもない一定の音。

 新幹線。新大阪行き。2列シートの、窓側。

 私はそこで、夢をみていた。助手席に座っている、夢。あなたが運転している、夢。


 でもそれは、あり得ない現実を想像だけで作り上げた夢じゃない。

 それは、思い出を材料に作り上げた夢。

 私は夢の中で、思い出していたんだ。私が助手席に座って、あなたが運転して、いつもどこかに行っていたのを。行き先が変わっても、車の中の空間は変わらなかった。その助手席には、家に帰って布団にもぐったような気持ちよさがあった。行き先がどこでも大丈夫。助手席に座っているから。あなたが運転しているから。

 それを、思い出していた。新幹線の中で。ここは、助手席じゃない。あなたは、いない。


 左隣の見知らぬおばあさんは縫い物をしている。黙々と。黙々と。孫にあげるのか、自分で使うのか。どこかの民族が身につけていそうな、原色と原色がギザギザに並んだ模様を器用に形作っていく。おばあさんのぬくもりとにおいが、冷たくて硬い針に連れられて、布地の中にスッスッと縫い込まれていく。その温かさに、甘えたくなる。そのにおいに、包まれたくなる。でも、できない。すぐ隣にあるのに、とても、遠い。


 おばあさんと反対側を向いたら、窓。夜の街が、左から右へ、過ぎていく。いや、本当は、街はじっとそこに居てくれているのに、私がもの凄い速さで通り過ぎている。家の灯りが、車のランプが、焦点も合わせられない間にどんどん、どんどん遠くに行って、記憶に刻むこともできない。


「かえりたい」


 心がつぶやく。あの灯りも、この灯りも、私の帰る場所じゃない。だから、どんどん目の前から去っていく。その灯りに照らされている人が、うらやましい。どこかに、かえりたい。

 ただ、窓を見つめる私だけが、そこで静止している。時間も景色もおばあさんの針も、すべて進んでいくのに、私だけが置いて行かれる。

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