無能が裏返った令嬢の話
「雨が降ってきた・・・」
私が王都の外の街道を歩いていると雨が降ってきた。気がつくと家がポツンと建っていた。
「雨宿りさせて下さい・・・」
中からヒゲもじゃの男達が出てきたわ。
「お嬢ちゃん。雨宿りかい?」
コクコクと頷くことしか出来なかった。
「ここはよう。賭博場だ。賭ける者以外は立ち入り禁止だぜ?」
「それかお姉ちゃんが酌婦でもしてくれるのかい?」
「ヒィ、なら、賭けます・・・」
私はポケットからなけなしの手切れ金を出した。銀貨1枚だ。
「銀貨1枚か?まあ、しばらく様子をみて覚えて賭けな」
「はい・・」
小さな部屋にむさ苦しい男達が10人くらいいる。ディーラがサイコロをテーブルの上に投げて・・
「半!出ました!」
偶数を半と言うらしい。
「まさか、丁かと思ったぜ!」
奇数を丁というらしい。
「半出ました!」
「またかよ!」
「イカサマじゃーないか?」
☆☆☆
『アメリ、貴方は無能令嬢よ。貴女は選択を全て間違えるわね』
『僕は妹と婚約を結び直すよ。なんだい。君が選んだ演劇はつまらなかったよ・・他にもあるな。君が買った食べ物は全て不味い』
『出て行きなさい。いるだけで不幸がうつるわ!』
『お義姉様、無能でかわいそー』
お義母様は鼻をつまんで私を汚いもののように追い出した。
選択を全て間違える。
なら、逆の選択をしてみてはどうかしら・・・
・・・・・・
「お嬢ちゃん。そろそろ賭けな」
「はい、半に賭けます」
「はあ?6連続で半だぜ・・」
「お、銀貨か・・・銀貨頂き。俺は丁だ!」
「「「丁、丁」」」
私一人で銀貨1枚を賭けた。
「よろしいですね。サイコロを投げます・・・・は、半!」
「お嬢ちゃんの総取りだ!」
・・・・・・・・
それから10連続で勝った・・・選択を全て逆にした。
「さすがにおかしいだろ!」
「イカサマ女だ!」
「ヒィ・・・!」
男達に囲まれたわ。
【おい!待てや。たまにいるんだよ。運があるではなく運を引き寄せる女がよぉ】
「親分・・・」
それから私は裏組織の客分待遇になった。
「ヒヒヒヒ、商会長様、こちらが噂の占い師でございます」
「う~ぬ。これが?」
私は聖女服を着せられて占い師みたいなことをするようになったわ。
「えへへへへ、利益の1パーセント頂きます」
「分かった。売れたらな。これを見たまえ」
新発売の香水だ。貴婦人に宣伝してもらうにも新興の商会だから相手にされないそうだわ。
「香水の名前を考えた。二つある。『エレクシアロマーネ』と『香水だポン!』だ。占い師殿はどちらが良いか?」
「香水だポン!・・・」
これはないだろう。
「ああ、出資者がおっさん・・いや、老齢の紳士でな。センスがいささか古い」
これはない。と思ったから『香水だポン!』を推した。
そしたら、売れたわ。
「香水だポン!売れきれです!」
「まあ、いつはいるのかしら?あれは覚えやすいのよ。インパクトがありますわ」
「男がお土産で買いやすい!最近のは似たような名前の香水ばかりだ」
「「「「売って!売って!売って!」」」
また、売れなくなったドレスの老舗店も来たわ。
「ビビアン・エマニュエルの商会長でございます。店名を変えたく思っています。是非、ご教授下さい」
「あのお店はどこにございますか?」
私は行ったことはないわ・・・義妹の好きな店だった。
「王都の西北でございます」
「王都の西北・・・」
「王都の西北でございますね!」
「あ、ちょっと・・」
「前金でございます」
それからドレス王都の西北は人気店になったようだわ。
「西北!覚えやすいわね!」
「王都の~西北~っと、歌にしようぜ」
これはないだろうと思うことが連続で起きた。
いえ、名を少し変えると気分転換になるらしい。
「レストラン、バージニアクロースでございます!」
「あの、オーナ様のお名前は?」
「ハンスでございます。平民出身です」
「なら、ハンスさん?」
「分かりました」
ハンスのレストランが誕生したわ。
これも義妹の好きな店だったわ。
お金が沢山入るようになった。利益の1パーセント、更に親分さんに0.5
パーセント渡しても大金だわ。
屋敷を買う・・・
これもここはないだろうと思う土地を買って工事をしてもらった。王都の古びた屋敷跡だ。幽霊がでるらしい。夜中光るそうだわ。
「これは・・・金だ!」
「そう言えば、昔、金持ちが住んでいた・・・」
「施工主のアメリ様に報告だ!」
石をどかそうとしたらそれは汚れた金だった。
もう、どうすればよいのかしら・・・
悩むわ。
「親分さん・・・」
「はい、アメリ様!」
また、ここでもこれはないだろうとの選択をした。
「あの、全額王国に寄付したいです」
「はい?」
「私の取り分を全額王国の救貧院、孤児院、廃兵院に使うようにして下さい」
「う~む・・・」
親分さんは考えた後に、ポンと手を叩いて。
「しゃーねーや。今まで稼がせてもらったからな」
「親分さんの取り分は今までで通りで・・・」
「いいや。俺も稼ぎすぎだと思っていた。今までの稼ぎで子分を連れて農園でも買うよ。それが分と言うものだ」
「有難うございます。よろしくお願いします」
「おう、アメリ様は?」
「どこかでメイドでもしますわ」
「あんた本当に聖女様みたいだ」
折角建てた屋敷も・・・お別れね。独りで暮らすのは慣れているわ。
そしたら、義妹と家族がやってきたわ。
「ちょっと、お義姉様、私のお気に入りの店をダサダサの名前に変えてもしかして仕返し?!」
「違います・・・偶然です」
「とにかく、ミミリーは傷ついたわ。元の屋敷は上げるから交換しなさい。慰謝料よ」
「そうだ。そうしろ。すぐに出ていけ!」
「あの、違います。ここは王国の物に・・・なります」
話を聞いてくれない。
結局、追い出されて元の屋敷に戻る。
お母様とお父様の匂いがする家だわ・・・
「グスン、ここで暮らすわ」
☆☆☆王宮
「陛下・・・巨額の寄付の申請がございました・・目録をご覧下さい」
「な・・・」
国王はしばらく口を開けたままだった。
「これは、毎月入るのか?」
「はい、王都の有名な商会の利益1パーセントでございます。馬鹿には出来ません」
「うむ・・・これは・・・税金にしよう。して、寄付をした者は?」
「アメリ・クロイツです。王都の領地無しの男爵令嬢です」
「感心だ。年金を渡そう。毎年金貨50枚だ」
「はい、騎士団の梯隊長クラスですね。ちょうど良いと思います」
「それと、婿を紹介してやれ」
「御意!」
・・・・・・・・・・・・
折角、メイドに応募しようと思ったら婿候補と名乗る方が2人来ると先触れがあった。
1人は、金髪碧眼のハンサムな方・・・花束を持っているわ。
「やあ、ロバーツ・レッセンと申します。伯爵家です」
花束を捧げ、跪き手を取りキスをするわ。洗練された殿方だわ。
「今、お茶を出しますわね」
「アメリ殿、メイドは雇わないのですか?」
「ええ、年金が出ますが、雇えるほどではございません」
もう、この方に決めようかしら・・・
「遅れました・・・」
また、1人来た。今度は茶髪で目は薄い青だわ。
「ドム・ガンツです・・・これ、お袋が作ったドーナツです」
「なら、3人でお茶会をしましょう」
ドム様は終始だまってお茶を飲んでいる。
対してロバーツ様は饒舌だ。
「メイドは5人、執事は2人かな。この屋敷も改築しよう。アトリエを作りたい」
「・・・・・・・俺はお袋と同居が希望だ・・・」
これは・・・殿方もこれはない・・かしら。ドム様?
結局、これはないにしたら・・・
「お義母様、庭仕事をなさらないで下さい」
「フフフフフ、やらせてお願い。土いじりが好きなの。お母様の植えたお花素敵ね」
「はい、有難うございます」
よく働いて下さる。
そして、お義母様と義妹夫婦が来るが・・・
「ちょっと、お義姉様、追い出されたわよ!」
「そうよ。アメリ!何で寄付するの!」
「君って奴は!」
「・・・帰れ!ここはアメリの家だ。俺とお袋は住まわせてもらっている・・」
「な・・」
旦那様に追い返してもらっている。
王宮で役職に付いている。身分は低いが陛下のお気に入りとのこと。
ロバーツ様は画家志望で売れないそうだ。
そう言えば、最近、これはないだろうと思うことはなくなった。
この力は幸せになると消えるみたいだ。
最後までお読み頂き有難うございました。




