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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun


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7 ビルの身の上話1

読んでくださってありがとうございます。

俺は元は隣国で生まれたんだ。両親は小さい雑貨店をやってて、父さんが時々仕入れの旅に出る時以外、いつも母さんと三人で一緒だった。父さんは元々孤児で、母さんは家族と縁を切ったとかで親戚は誰もいなかったけど、家族でいつも笑い合って、母さんの作ってくれるご飯は美味しくて、両親は俺をいつも抱きしめてくれたから、幸せだった思い出しかない。


「20年位前に隣国で疫病が流行って、沢山の人が死んだのは知ってる?」

「まだ私は生まれてなかったけれど、歴史で学んだわ。その悲しい体験から、数年前に隣国は特効薬の開発に成功したわよね。この国に同じ病気が流行った時、その特効薬のおかげで沢山の命が救われた。本当にありがたかった」

「そうだったね」


最初に父さんが疫病にかかったんだ。俺を近寄らせないようにしながら看病してた母さんも、しばらくして感染した。俺には絶対に近寄るなって怒るから、家にあった食べ物を部屋の前に持って行って二人を呼んだけど、しばらくしたら返事が返ってこなくなった。

どうしていいか分からなくて泣きながら外に出たら、ちょうど近所で亡くなった人を弔いにきた司祭様が俺を見つけてくれてね。うちまで一緒に様子を見に来てくれて、二人はもう亡くなってるって教えられた。それから教会の人達が来てくれて、二人を運んで共同のお墓に埋めたけど、仲の良かった近所の人たちは皆疫病が怖くて家に閉じこもっているし、俺一人では葬式もできなかったよ。司祭様は俺に、親戚はいるか、いないなら孤児院に送って行こうって言ってくれたけど、俺は孤児院が怖かったから、親戚がいるって嘘をついて独りで教会を出て家に帰ったんだ。


「どうして孤児院が怖かったの」

「今は昔よりは良くなってると思いたいけど、その頃隣国のほとんどの孤児院はひどい所だったんだよ。父も孤児だったけど、孤児院にいた頃の事は忘れたいって絶対に話してくれなかった。だから俺が知ってるのは近所の孤児院の事だったけど、子ども達はいつも腹を空かせてひどく痩せてて、そのくせ沢山働かされてた。だからよく脱走して、店の食べ物を盗んでは殴られて、連れ戻されては殴られてた。それなのに、疫病が流行ってる間はどんどん孤児が生まれて、既に満員の所がさらに満員になるんだ。食べ物なんてある訳がない。どうせ食べ物がないなら、そんな所に行かないで俺たちの家で両親の元へ召されるのを待つ方が良いと思ったんだ」

「司祭様はそんな所だと分かっているのに、あなたを孤児院へって言ったの?」

「司祭様も仕方なかったのさ。それまでだって司祭様、町の人、俺の両親、とりわけ父親は孤児院の子たちの事で心を痛めていたけど、結局やれる事なんて限りがある。自分の子どもを食べさせられない時に、他人の子を助ける事は出来ないだろう。…だから、この国は、孤児達がちゃんと寝て食べて学べる場所を作ってくれてる事に、俺は本当に感謝してるんだ」

孤児院への施策はお父様が王太子時代からずっと取り組んで実を結んだ事だから、嬉しく誇らしい気持ちでいっぱいになる。

「そう言ってもらえると、おとう、王家の人たちもすごく嬉しいと思うわ。だけど、それからビルはどうなったの。この国に来たのはどうして」

「食べ物も無くなってもうダメかと思った時、顔も知らなかった伯父さんがうちに訪ねてきてくれたんだ。父さんが疫病にかかってすぐ、母さんは自分が感染する前に、縁を切ってた伯父さんに手紙を出してくれてたんだ。もしもの時は俺を頼むって。その手紙を読んだ伯父さんが、急いで隣国まで会いに来てくれた」

ビルは、遠くにいる人を愛おしく懐かしむような目をしていた。

「母さんがこの国の生まれだってことも、この国にお兄さんがいることも俺は全然知らなかった。伯父さんに母さんも父さんも亡くなったことを話すとわんわん泣いて、それから俺に早く来れなかった事を謝って、たくさんご飯を食べさせてくれた。そのまま一緒に連れて帰ってもらって、ずっと面倒みて育ててくれたんだ」

「お母様に優しいお兄さんがいてくれて良かった」

「俺もそう思う」


俺が大きくなってから、伯父さんは昔の母さんの事を話してくれた。

母さんは一家に遅く生まれたたった一人の女の子で、家族みんなで可愛がって、その中でも特に伯父さんは妹に甘かったんだって。だから、隣国の孤児だった商人と結婚したいって母さんが言いだした時、伯父さんは誰よりも強く反対した。


ある日、母さんがもう一度きちんと話を聞いて欲しいって伯父さんに頼んだのに、結婚の話なら聞けない、絶対許さないって突き放して、結局その晩二人は駆け落ちしてしまった。

あの時ちゃんとあの子の話を聞いてあげていれば、駆け落ちなんてしなくて良かったんだって、あの時の妹の絶望した目が忘れられないって、伯父さんはうんと後悔してた。


会ったことない俺の祖父母も、母さんがいなくなってすぐに病気で亡くなって、伯父さんは結婚する気にもなれないでずっと独りで暮らしてた。そんな時母さんから俺を頼むって手紙が来て、妹の願いを今度こそ絶対にかなえると思ったって。

だからかな、伯父さんは俺を本当に大事に育ててくれた。


そこまで話して、ビルは私を正面から見つめた。

「だからリーンのお父さんと、諦めないで話をしてあげて欲しい。もし君がいなくなったら、そこに残った後悔は一生消えないと思うよ。」

「私の父は私を信用していないの。いくら話してもムダよ」

「信用していないんじゃなくて、心配しているんだよ。だから、あなたを守る手段を出来る限り用意したいんじゃないかな。本当は、お父さんもあなたがもう小さな娘ではないって分かっているのに、それでも心配で仕方ないんじゃないか」

「あなたに何が分かるの。あなたと私は違う」

勝手な言い分で父をかばう彼に腹が立ち、けんか腰に言い返した私に「俺と伯父さんも同じだったから分かるよ」ビルは静かに答えた。



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