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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun


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14 セシール・クロス伯爵令嬢 1

見つけてくださってありがとうございます。

セシールは自室に閉じこもり、日に日に大きくなっていく腹を抱えて不安にさいなまれていた。腹の子の父親で恋人であるキリアンは、子が出来た事を告げた日からセシールを訪ねて来ない。


始めの内はまだ良かった。手紙の返事はあったし、子を宿したと伝えた時は

『わかった。君と結ばれる為に、父とアイリーンを説得する。私は王配になんてならなくても良いんだから。愛しているよ、セシール』といつものように抱きしめてくれた。

その時キリアンから『伯爵が今まで私と君の逢瀬を黙認していたのは、私が王配になると思っていたからだよ。もし王配にならないと分かれば、君も子どもも何をされるか分からない。全て解決するまで子が出来た事は絶対に秘密にするんだよ』とも言われたので、セシールは彼の指示に従い、妊娠がバレないよう隠しながらキリアンが迎えに来てくれるのを信じて待っていた。


妊娠したことを隠すのは、最初の内は簡単だった。

セシールのつわりは軽かったし、月の物は元から不順だった。

両親から、王太女殿下の侍女を解任されたほとぼりが冷めるまで謹慎するよう言われていたので、コルセットで腹を締め付けるドレスも着る必要が無く好都合だった。


しかしだんだん腹が大きくなってきて、月の物が来ない事も不順では片づけられなくなり、身の回りの世話をする侍女たちに妊娠を隠すのは難しくなっていった。

この頃には、キリアンは手紙の返事さえ寄越さなくなっていたので、誰にも相談出来ないセシールが独りで秘密を抱え込むのも限界で、子どもの頃から信頼している専属侍女ハンナにだけ涙ながらに打ち明けた。

ハンナは薄々怪しんでいたので驚きはしなかったが、幼い頃から仕えているセシールの今後を思うと可哀想でこっそり涙をこぼした。

しかし伯爵夫妻に報告しないわけにはいかず、すぐに伯爵夫人の部屋へと向かった。


ハンナから知らせを受けた時、夫人は自室で夜会へ行く準備をしていた。

セシールの事で報告があると聞き、一旦侍女を全員部屋の外へ出して話を聞き終わると『これ以上秘密が漏れない様、今後あの子に仕えるのはおまえだけにして。一歩も部屋から出さないようにしてちょうだい』と指示し、『あの人にはクロフト公爵令息は危ないって言っておいたのに。王配に目がくらんで父娘揃って愚かだこと』とつぶやいた。


夫人は侯爵家出身で格下のクロス伯爵家に嫁がされた事をずっと不満に思い、元から夫にも子にも愛情は無かった。

『王家に不敬を働いた伯爵家に良い未来は無いわ。離縁して、お祖母様が私個人に残してくれた領地の邸へ行こう』とこの時密かに決めた。


その後夫人は、伯爵と夜会へ向かう馬車の中でセシールの妊娠を教え、それを聞いて驚き怒る夫へ冷たく言い渡した。

「あなたは王太女殿下の不興を買ったセシールを、20も年上の侯爵の後妻にして支度金をもらうつもりだったのよね。その上クロフト公爵令息が王配になったら王配の妾にでもしてもらおうと思っていたんでしょう。

私は、そんな虫の良い話は通用する訳がないって忠告したけれど、無駄だったみたいね。

これでセシールは侯爵の後妻はおろか、王家への不敬でどんな罰を受けるか分からなくなりましたわ。クロフト公爵令息があの子と二人きりで会うのを貴方が許したりしなければ、こんな事にはならなかったでしょうに。あなたが今回の責任を取って当主の地位を譲るマークは、相当苦労するでしょうね。私はあなたと離縁して、侯爵家へ戻ります」


夜会会場へ着くと、夫人は実家の侯爵家を探してすぐ離れてしまい、クロス伯爵は必死になって会場中キリアンを探し回ったが、見つけられずに邸に戻り、すぐにセシールの部屋へ向かった。

すごい形相で現れた伯爵に、部屋の前に控えていたハンナはセシールの危機を感じ

「お嬢様はもうお休みになられました」とやんわり入室を阻んだが無言で押しのけられ、伯爵はノックもせず乱暴にドアを開け放った。


大きく開かれたドアから部屋の中が見えて、奥まった場所に置いてあるソファに怯える娘が座っていた。娘の腹は大きく、どう見ても妊婦だった。

「おまえ!」伯爵が激高して近づき、大きく振り上げた腕にセシールは身をすくませた。

一瞬遅れて人が殴られる音が聞こえたのに衝撃は無く、恐る恐る目を開くと自分の前にハンナが倒れていた。


「ハンナ!」セシールが叫び声をあげてハンナに抱きつくと、ハンナはヨロヨロと身体を起こしながら「旦那様。お嬢様は身重です。暴力はいけません」と必死に懇願した。

「ハンナ、ハンナ」セシールも号泣しながら「お父様、許してください。私がいけないんです。ハンナは何も知らなくて、私がキリアン様を愛してしまったからこんなことに」と腹をかばうように手で覆った。

普段暴力を振るう事に慣れていなかった伯爵は、我に返って二人を茫然と見ていたが

「セシール。腹の子は確かにクロフト公爵令息の子なのか」と尋ねた。

「はい。そうです。私はキリアン様と愛し合っています」

「愛。くだらない。明日医師を呼ぶ。お前は部屋から出るな」と言い残し去って行った。


翌日お抱えの医師が呼ばれ、ハンナが手伝ってセシールは妊娠の検査を受けた。

検査が終わり伯爵が入室すると、医師が「お嬢様は現在妊娠7か月です」と告げた。

「今から子を流す事は出来ないのか」伯爵の問いにセシールは蒼白になったが、医師が「もうこれほど大きくなっては無理です。お嬢様も危険です」と答えると「何の役にも立たんな」と吐き捨てて「分かっているだろうが、これは他言無用だ」と念押しした。

医師が帰ると、伯爵はセシールへ申し渡した。

「セシール。お前は子を産んだ後、サンディス侯爵の後妻として嫁いでもらう。後妻だから結婚式もしないし、お前の使う物は全てあちらが用意するから何も準備しなくて良いそうだ。良かったな」

「え、お父様、私はキリアン様と。それに、産んだ子どもはどうなるんですか」

「クロフト公爵令息は王太女殿下の婚約者だ。こんなことが発覚したら伯爵家は不敬罪で終わりだ。

子どもは公爵家が欲しがれば渡すが、おそらく欲しがらんだろう。その時は孤児院へ行かせる」

「そんな。嫌です。後生ですからキリアン様に会わせてください」

伯爵は感情の無い目でセシールを見て答えた。

「お前は遊ばれて捨てられたんだ。もうクロフト公爵令息に何も期待するな」



読んでいただき、ありがとうございます。


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