11 公爵令息の断罪2
見つけてくださってありがとうございます。
それから私は王宮へ戻り、執務室で待っていたエドワードに公爵家の侍女に聞いた話と、セシールについてダリアが調べてくれる事を伝えた。そこで侍女の妹を雇ってくれたお礼を言って、どうして私に教えてくれなかったのかと尋ねると
「それは、事が事だけにあまり殿下の耳に入れたく無いと思ったんです。今回の様に無理強いすることは初めてだったようですが、殿下はキリアン公爵令息がそこまでひどい事をするとは思っていませんでしたよね。仮にも婚約者で彼に情もある殿下には、さすがに伝えられませんでした」とバツが悪そうに答えた。
それを聞いて、確かに私はキリアンを配偶者としてありえないと思っているけれど、小さい頃から弟のように可愛がっていた期間が長い為に、どうしても対応に甘さがあったのだなと自覚した。
「そうね。私もキリアンを甘やかしていた一人だったわ。あの侍女の話を聞いて、放っておいた私が原因でもあるってすごく反省した。だから、今回本当にセシールがキリアンの子を妊娠しているとしたら、もう決して言い逃れはさせない。
王配になる者が婚前に子を持つなんて、反逆罪に問われても仕方ない事だもの。
ダリアは必ず証拠を集めてくれるから、これを切り札にして婚約破棄するつもりよ」
ほどなくしてダリアはクロス伯爵家に呼ばれた医師を突き止めて、サミュエル家に圧力をかけてその医師の証言と診断書を入手してくれた。やはりセシールは妊娠していて、もう7か月になるらしい。同時に王配教育の教師達にも詳細に教育の進捗が遅れている報告書をあげてもらい、それらの証拠を手にした私は父に再度謁見を申し入れた。
「アイリーン。また婚約破棄の話か。公爵からは、キリアンは反省して最近は大人しくしていると聞いているが」
「お父様。それはさすがのキリアンも大人しくせざるを得ない事情があるからですわ。こちらをご覧ください。私達が集めたキリアンの素行と王配教育の報告書です。特に素行の方で、私の侍女だったセシール・クロス伯爵令嬢については栞を挟んでおきましたので、しっかりお読みください」
父は差し出された厚い書類を受け取り、つまらなそうに読み始めた。ほとんど影に報告を受けていた事ばかりらしくパラパラと読み飛ばしていたが、栞の挟んである箇所まで来るとだんだん顔色が悪くなり、読み終わる頃にはグッタリとうなだれてしまった。
「アイリーン。これはまことか」力なく問いかけるのに、ダリアの集めた証拠を差し出す。それを見た父はついに反論の余地が無くなり、深いため息をついて婚約破棄に同意した。
そして、とうとうクロフト公爵とキリアンを呼び出し四人での話合いを持つことになった。
私的な応接室に通されたクロフト公爵とキリアンは、父と私が入室すると立ち上がって「国王陛下、王太女殿下にはご機嫌麗しく…」と挨拶を始めたが、父がさえぎり「挨拶は良い。
座りなさい」と着席を促した。
ソファに座った公爵はどこか不安そうな面持ちだったが、並んでいるキリアンはいつものように自信に満ちた目つきで私を見ていた。
「今日は、王太女とキリアン公爵令息の婚約についての話で来てもらった」父が話し出した。「結論から言おう。二人の婚約の継続は出来ない。公爵家の有責で婚約破棄とする」
「な、何故でございますか。キリアンに何か無作法がございましたら改めさせます。理由をお教えください」公爵が声を上げた。
そこにキリアンも横から「陛下。アイリーンは何か誤解をしているのだと思います。彼女は私を愛するあまり、いつも私と周りの御令嬢の間に何かあると思い込み、嫉妬されて困っているのです」などと言い出す。隣で公爵がぎょっとして止めようとしているが、気づかない。
父のこめかみに青筋がたっているのを見ながら、私はキリアンの素行に関する報告書と教育に関する報告書を二人の前に広げた。素行に関しての報告書からは、わざとセシールの部分は抜いておく。
「公爵。こちらはキリアンの学院入学以来の素行と王配教育の進捗に関しての報告書です。御覧になればお分かりと思いますが、どちらも今から矯正するのは無理と思われる状況です。これは私の主観ではなく…キリアンいわく『嫉妬』のような馬鹿げた妄想とは異なり、きちんとした調査を元にした物です。公爵は既にご存じの事も多いでしょうけれど、どうぞご覧ください」
公爵はしぶしぶ報告書を手に取ってざっと目を通したが、父同様既に把握していたことだったのだろう、戦法を変えてきた。
「陛下、王太女様。愚息の教育が行き届かず、誠に申し訳ない。今後は王太女様を大切にし、王配教育も真面目に取り組むよう、もっと厳しく言い聞かせます。
なんならキリアンには監視を付けますので、もう一度考えていただけませんか。
殿下も、お小さい頃はキリアンを弟の様に可愛がってくださったではありませんか。
キリアンが殿下に少々敬意にかける態度を取ってしまうのも、身内として殿下をお慕いしているが故と思います」
キリアンは報告書を読もうともしなかったが、公爵に監視を付けると言われた時は何故か私をにらみつけてきた。
「私は既にキリアンには十分な機会を与えてきました。彼はもう十八歳で、十分に大人です。現時点でまだ自分の立場と役割を理解できない者が、今後私の支えとなる王配になれるとは思えません」
ここで突然、キリアンが大声を上げた。
「アイリーン、変な意地を張って私の気を引こうとするのは止めてくれ!」
「キリアン、やめないか!」さすがに公爵が青くなって止めるが、キリアンは止まらない。
「父上、アイリーンの言葉に陛下は惑わされているだけです。
私に言わせれば、アイリーンは陛下や父上まで巻き込んで、私を独占しようとしているだけなのです。先日も、自分の侍女であるセシール・クロス伯爵令嬢を嫉妬でクビにしたんですよ。彼女が転びそうになったところを私が支えたというだけで!セシールは本当に気の毒でした。
アイリーン、こんな茶番なんてしなくても、私はちゃんと君の夫になってあげるから、いい加減にしてくれないか」
私は青くなったり赤くなったりしている公爵を見ながら、(あなたが王家に丸投げして、きちんとキリアンを教育しなかったツケが回ってきたわね。おあいにく様)と内心で笑っていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
続きが気になる!と少しでも思っていただけたら、ブックマーク、評価(下の方にある☆☆☆☆☆)やブクマ、いいねで教えていただけると、嬉しいです!




