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女王陛下の宝飾職人  作者: Jun


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10/13

10 公爵令息の断罪1

見つけてくださってありがとうございます。

次の日から、本気でキリアンの素行について証拠を揃え始めた。

今までは何かあると父に口頭で婚約破棄を願い、その都度幼馴染のよしみで見守ってやれなど感情論でなだめられるか、後ろ盾が大切と言い聞かせられるかの繰り返しだったので、これからは明確な事実を積み重ね王配を変更すべき証拠を示そうと考えたのだ。


実際父には手足となって情報を取ってくる影がいて、絶対キリアンの素行の悪さを聞いているはずなのに、手足がせっかく集めた情報もそれを判断する頭である父が受け入れないなら元も子もない。

私も最近は諦めが先に立って父と会話をしなくなっていたが、これからは婚約破棄まで何度でも話をするつもりで気合を入れた。


キリアンの素行についての調査はエドワードを始めとして私の友人にも力を借り、家の使用人の噂話や目撃談を集めてもらった。

今までは婚約という私事に他人を巻き込むのは良くないとか、あれでも幼馴染であるキリアンの醜聞が広がるのは可哀想だと、一人でどうにかしようとしていたが吹っ切ったのだ。


この婚約は国を導く王家の婚約で、貴族にも国民にも影響は大きく、規範となるべき公的事項。エドワード達は臣下であり同時に友人なのだから、公的にも私的にも困った時には頼ろうと腹をくくって皆に依頼した結果、溢れるほどの証拠が驚きの速さで集まった。


その中の一つに見過ごせない情報があり、私は友人の公爵令嬢ダリアの侍女と、秘密裡に面会することにした。不自然にならない様ダリアの邸のお茶会に招いてもらって、人払いした庭のガゼボで話を聞いた。

妹がキリアンの被害を受けたという侍女は男爵家出身で、少女の頃から長く公爵家に勤めている女性だった。

彼女は最初「家族の仕えていた屋敷の内情を話す事は出来ません」と固辞し、ダリアが「これは王家、引いてはこの国の将来の為に必要な調査なの。あなたが私達にこの話をしたからと言って、使用人として失格などとは思わないわ。私はあなたが公爵家に忠誠を尽くしてくれている事はちゃんと分かっているし、あなたも妹さんも決して悪い様にはしないと約束します」と説得して話す決心をしてくれた。


「それでは、クロス伯爵家に勤めていたあなたの妹さんは、最近辞めさせられたの?」

「はい。妹は決して不品行な行いなどしていないのに、ひどい濡れ衣を着せられて、紹介状も無く解雇されました」王太女と主家の令嬢を前に緊張していた侍女だが、妹の受けた仕打ちを話し出すと怒りを隠しきれない表情になった。

「濡れ衣ってどういう事かしら」私が尋ねると「王太女殿下の前では大変申し上げにくいのですが…」我に返ったようにこちらを見てくるのに微笑みかけ「構わないわ。今日はそういう事を確認したくて来たのだから」と安心させる。

侍女はひとつ深呼吸をして、さっきよりも落ち着いて話し始めた。

「妹はクロフト公爵令息に言い寄られていました。あの方は以前からクロス伯爵令嬢の元へ通っていらして、それは王太女殿下の侍女を令嬢が辞めさせられてからも続いていたそうです」

「そう」私は気にしていない事を再度示し、話を促す。

「クロス伯爵も王配になられるクロフト公爵令息を無下には扱えないのか、令嬢の元へ訪れる事も、二人きりになる事も止めなかったそうです。その訪問の折、令息が私の妹を見かけ、関係を迫るようになったといいます」


侍女の話はこうだった。

恋人の邸の侍女を餌食にしようとしたキリアンは、思い通りにならない彼女を無理やり手籠めにしようと伯爵邸の一室に連れ込んだ。彼女は抵抗し、死に物狂いで振り回した手が偶然キリアンの目を直撃してその隙に運良く逃げ出せたが、目の周りを青くしてベッドに倒れているキリアンを他の使用人が発見してしまう。その後手当を受け事情を聞かれた際、逆恨みしたキリアンは伯爵に嘘をついて彼女を陥れたという。


「妹に色仕掛けで迫られて、不道徳な事はやめるよう諫めたら、錯乱した妹から顔を殴られたと言ったそうです。本当なら公爵子息に暴力を振るうような使用人は死罪でもおかしくないけれど、自分を恋い慕う女性が思い余って起こした出来事だから大事にはしたくない。けれどこのまま済ませる訳にもいかないから、今後一切顔を合わせず済むように伯爵家で取り計らうよう命じたそうです」

話しながら涙にくれる侍女に罪悪感が募る。まさかキリアンがここまで腐っているとは思わなかった。こうなったのも元はと言えば、キリアンをいつまでも婚約者に据えてのさばらせていた王家のせいと言えよう。


隣でダリアも同情した顔で「本当に妹さんには気の毒な事だったわね。クロス伯爵家を辞めさせられて、妹さんは今どうしているの?もし良ければ公爵家で働いてもらう事も出来るわよ」と尋ねた。

すると、侍女は初めて明るい顔を見せて

「ありがとうございます、お嬢様。実は妹がそんな風に男爵家に戻されて、次の勤め先も見つからず途方に暮れていたんですが…突然ホール侯爵家に仕えないかとお話を頂いたんです。何でもホール侯爵令息様が妹の事情を知って心配してくださったとかで、有難く申し出をお受けして今はホール侯爵家で元気に働いております」


(ホール侯爵家ってエドワードの家よね。言ってくれたら私も力になれたのに、先を越された。いずれにせよ、エドワードには後でお礼を言わなきゃ)内心で臍をかんでいると、侍女がさらに聞き捨てならない事を言い出した。


「妹も私も、仕えているお家の内情を漏らす様な真似をするつもりはありません。けれどダリアお嬢様からこれは必要な調査であるとお話を受け、またこのような非道な仕打ちを将来王配となる方から受け、男爵家とはいえ貴族の末端として王太女殿下のお耳に入れておきたいことがございます」

「何かしら。ぜひ聞かせてちょうだい」

「クロス伯爵令嬢ですが、妹が辞めさせられる少し前から使用人の前に姿を現さなくなっていました。まだ伯爵邸で働いている付き合いのある使用人が言うには、今は幼い頃からの専属侍女にしかお世話をさせないそうです。頻繁に出かけていたお茶会や夜会にも行かず部屋にこもったきりで、クロフト公爵令息には毎日手紙を書いているのに、全く訪ねて来なくなりました。

先日、夜会からクロス伯爵が血相を変えて帰ってきて、すごい剣幕で令嬢の部屋へ行って何か激しくやり合ったらしいのですが、その際『お腹の子』『クロフト』という言葉が部屋の外まで聞こえたそうです。その翌日に人目を忍びながら、伯爵家お抱えの医師が訪ねてきたのを使用人が見ています。

これを聞いて、このままクロフト公爵令息が王配になる前に、この事を王太女殿下にお伝えしなければと思いました」

侍女は場合によっては不敬に当たるかもしれない事を、決意のこもった目で話してくれた。貴族として人として勇気を持って私に伝えてくれた事に、感謝こそすれ咎める事は何も無い。

「ありがとう。あなたの勇気に感謝します。きっと納得のいく結果を導くから見ていてちょうだい」

「勿体ないお言葉、痛み入ります」侍女は深くお辞儀をして、その場を辞した。


「さて」私はダリアと顔を見合わせ「確かクロス伯爵家のお抱え医師はサミュエル家よね」

「そうね。うちの寄り子のアンバー伯爵家が援助して、この前王都に病院を建てたわ」

「ダリアにお願いして良いかしら」

「分かったわ。きっちり証拠を揃えてあげる。私だってそんな卑劣な人間を王配にも、あなたの夫にもしたくないわ。これは将来の王国への投資と友情の証よ」

「ありがとう、ダリア。恩に着る」



読んでいただき、ありがとうございます。


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