「タイトルは面白そう!」 テーマは風鈴
幸次と初めての共同作業で作った風鈴は夕子の宝物になった。
夕子は風鈴に『ふうくん』と名付けて大切にしていた。
しかしふうくんはは赤ん坊の手が当たって割れてしまい、引き出しにしまわれた。
数十年後、風鈴は夕子の手で金継ぎ技法で蘇った。
割れた風鈴はふうくんになって夕子のもとに戻ったのだ。
夕子は何となく見ていたテレビの画面にくぎ付けになった。
そして急いで書き留めた。
友達の紹介で交際を始めたばかりの幸次から『行きたいところ』を聞かれていたからだった。
夕子のリクエストで出かけたのは陶器の町だ。
そこでは観光客が絵付け体験ができるからだ。
夕子が選んだのは風鈴だった。
茶碗や湯呑ではないことに驚いた幸次だったが夕子の選択を尊重した。
「僕はトンボが好きなんだ。
トンボは前にしか進まない勝ち虫なんだ。」
そういって幸次は風鈴にトンボを二尾描いた。
夕子は「トンボに合う気がするから」とトンボの周りにススキを描いた。
「風鈴なのにススキなのかい?」
「あ、ほんとだ!」
二人は顔を見合わせてコロコロと笑った。
10日後、風鈴は専用箱に入れられて夕子の元に届けられた。
箱を開けて風鈴を見た夕子はそれはそれは嬉しそうな顔で僕を見た。
夕子は風鈴に『ふうくん』と名付けた。
トンボとススキの組み合わせが少年っぽいという理由だった。
初めて二人で一緒に作った『ふうくん』は夕子の宝物になった。
夕子が幸次のもとに嫁いだ時、ふうくんも一緒に引っ越した。
『風雨にさらしたくない』夕子の希望で玄関の下駄箱の上に置かれた。
外出時や帰宅時にふうくんに話しかけるのが二人の日課になった。
僕はそれがとても心地よかった。
僕は軽い高温を響かせた。
ある日新しい家族がやってきた。
あかちゃんだ。
ある時、三人で出かけるときに赤ちゃんの手が僕に当たった。
僕はバランスを崩して落っこちて、割れた。
「「「あっ!!!」」」
夕子さんは黙って割れた僕を拾い集めて専用箱に入れて箪笥の引き出しに収めた。
あれから何年経っただろうか。
家族は増え、そして今は二人に戻っている。
賑やかだった毎日が静かなものになった。
そんなある日、夕子さんが慌てた様子でどこかに電話をしていた。
夕子さんは引き出しから箱を取り出してふたを開けて僕を見た。
久しぶりmに見た夕子さんは白髪交じりになっていた。
次の日から何度も夕子さんは僕と一緒に電車とバスを乗り継いで出かけた。
「できた。」
僕は夕子さんの家のリビングにいた。
金継ぎという技法で僕は蘇った。
「おかえり、ふうくん。」
夕子さんはそう言って微笑んだ。
『ただいま』
僕は低い音を響かせた。
思い出の品というのは何十年経っても大切で、たとえ形が変わってもその時の思い出は決して消えないのではないかと思っています。




