悪役令嬢ですわ!おほほほほ!~王子様、婚約破棄などさせません~
婚約破棄される悪役令嬢の物語がございます。
乙女ゲームやら小説やら漫画やら、たくさんございまして、その中の悪役令嬢に転生すると婚約破棄をされるというのがテンプレでございます。
えぇ、てんてんのぷれぷれですわ。
「第一王子クリストフ殿下の婚約者になって早十年。今宵私に婚約破棄なさるおつもり?」
「え!? えっと、えっと、いや、そんな、婚約破棄だなんて、あははは! と、突然何を言い出すんだ!?」
視線が泳ぎすぎ、言葉が詰まりすぎ。
はぐらかそうとするのも下手くそすぎという、私の可愛い婚約者様。
金色の髪に、麗しい靑色の瞳。
真っすぐに切りそろえたどこかの城の魔法使いにそっくりなその風貌。
私の好みです。
「ふぅ。殿下、あのですね、今宵の舞踏会、殿下には国王陛下も王妃殿下も参加されませんとお伝えしていましたが、参加されます」
「え!? そ、そんな! なんで!」
「殿下がそろそろ、男爵令嬢にそそのかされて婚約破棄される頃でしょう?」
「な、なんでそれを!?」
「残念ですが。婚約破棄は出来ません。あぁ、男爵令嬢ですが、聖女というのが嘘だとばれて、現在地下牢に拘束中です」
「え!? は!? う、嘘!?」
「はい」
「で、でも僕が怪我をしたら、それを美しい光で癒してくれた……」
私の横に控えていた侍女が、私にさっと青い小瓶に入った液体を手渡す。
「こちら、魔法使いによって作られた回復薬です。どうやら、こちらを男爵令嬢は仕込んでいたようです」
「え……で、でも彼女は心根が優しく、毎日孤児院に通い、子どもたちの世話をして、誰にでも親切で……」
「孤児院の子ども達を買収されてましたわ。毎日ではなく、クリストフ様と来た時に初めてあったらしいですわ」
「え? う、嘘……あ、で、でも! シスターが、彼女はその孤児院出身で、その後男爵家に引き取られたって!」
「男爵の実の子で、それはそれは溺愛されて、男爵家で育ったそうです」
「え……えぇぇぇぇ?」
首を傾げるその姿も可愛らしい。
そう、王子殿下は騙されやすくて、頭はいいのにちょっとおバカ。
そこが大変可愛らしい。
私は、クリストフ様の手をそっと両手で包み込むと言った。
「私、アデリーンには全てお見通しですの。ですから、婚約破棄という騒動を起こされる前に、事前に全て潰させていただきました」
「つぶ……え、彼女は……地下牢?」
「はい。今後、男爵家は取り潰しになるかと」
「え。本当に全部嘘だったの?」
私は書類を全て机の上へと出すと、それをクリストフ様に見せる。
「こちらがその証拠ですわ」
「これ……は……うそ……わぁぁぁ。僕、完全に騙されている」
「そうですわね」
がっくりと肩を落とすクリストフ様。落胆した表情がたまりませんわ。
そんな瞳に涙をためながら絶望するクリストフ様に私はそっと囁く。
「大丈夫ですわ。クリストフ様の最近の男爵令嬢との逢瀬の件については、全て私が握りつぶさせましたから」
「え……? あ、アデリーン?」
「クリストフ様がいくらポンコツであろうと、大丈夫です。このアデリーンが全てカバーいたしますから」
「ふぇ……」
「あら、泣かないで」
「どうして僕の婚約者はこんなに恐ろしいんだ。逃げようとしても逃げようとしても、逃げられない……」
クリストフ様が希望を抱いて婚約破棄を企んだのは、本日で十回記念日。
ですが、残念でしたわね。私、婚約破棄させるつもりはございませんの。
「だって、私、貴方をあいしているのだもの」
「ふえぇ」
泣きそうな顔がたまらなく好き。
私は、あぁ愛しの王子様はどうしてこんなに可愛らしいのかと、王子殿下の手を引いた。
「さぁ、もうすぐ舞踏会ですわ。参りましょう」
「……うぅぅ」
私達は舞踏会会場へと向かい、皆様からの拍手を受ける。
「いつか、婚約破棄してみせる」
小さく呟くクリストフ様。でも、残念ですわ。
国王陛下も王妃殿下も、他の方々もみんな私の見方。クリストフ様に逃げ場はございませんわ。
「私、悪役令嬢に生まれてよかったですわ」
「え?」
「私ほど、悪役令嬢に相応しい女はございませんでしょう?」
美しく妖艶に微笑む私は、きっと誰が見ても悪役令嬢。
でも、クリストフ様が好きなの。
だから……。
「婚約破棄なんて、絶対にさせませんわ」
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