光の餃子と五番町の赤ん坊
プロローグ
それは餃子だった。
いや、かつて餃子だったもの。
焼かれる熱とジュウジュウという音とともに、餃子の中に宿っていた「何か」……
目覚めるその瞬間、それは量子のもつれを作り出す器官から解放され無限の自由を得た。光の粒子となり、夜空を漂い、大気中へと拡散していく。
その粒子たちには「記憶」があった。 しかし、その記憶は断片的で、単語や情景として盛り込んでいるだけだった。それらのキーワードが何を意味するのか、自分自身が何者かすらもわからなかった。
ただ、漂いながら…
いつかその答えに思いを馳せながら…
願いながら…粒子たちは夜の町を漂い続けた。
To be continued…
「第一章: 五番町の奇跡」
ある冬の夜、五番町の産婦人科でひとりの赤ちゃんが生まれました。 産声を上げたその瞬間、空から微細な光の粒が降り注ぎ、赤ん坊を覆いました。が、それは一瞬の出来事で消えてしまいました。
「この子、なんだか特別な気がするわ。」
母親は赤ん坊を抱きながら不思議そうに呟いていた。その赤ん坊には「魂」が宿っていた。
そう、あの餃子だったものの魂が…
To be continued…
「第二章: 記憶の兆し」
赤ん坊――厳太が3歳になった頃、彼は家族の誰にも理解されない奇妙な言葉を口にするようになった。
「ワシントンに鷲がいるんだ。でも、黒い車に乗ってなくなっちゃった。」
その場にいた父親と母親は顔を見合わせて笑った。
「また厳太の不思議な話が始まったぞ。」
しかし、厳太の瞳には自信が宿っていた。 彼の言葉はただの空想ではなく、記憶のようなものだったのだ。 しかし、彼自身もその映像の意味を完全には理解していなかった。ただほんの少しだけ心に印象やイメージが、まるで夢の中のように現れただけだった。
夜、家族でドライブをしているとき厳太が突然叫んだ。
驚いた父親が車を路肩に止めた。
厳太は窓の外のシャッターアートを指差しながら続けた。
母親が「どういう意味?」と聞いても、
厳太はそれ以上の説明ができなかった。
ただ涙を浮かべながら、悲しそうに窓の外を見つめていた。
そこには、黒い車と遠くに飛ぶロケットが描かれていました。
ロケットには「アスぺースX」という文字がはっきりと書かれ存在していました。
「厳太くん、どこでこんな名前を知ったの?」
問いたが、厳太は首を傾げるだけだった。
その絵を見た父親は「アスぺースX」という言葉が気になり、インターネットで調べ始めた。
すると、知得袋という質問サイトで
通称知得カテの博識の高いユーザーさんから
宇宙開発企業ではないかと回答を頂き、
彼は不思議な感覚に襲われた。
知っているのか……。
この名前には誰も知らない何かが隠されているのか……
厳太がときより語る「61」という数字、「黒いプリウス」、「ワシントン」などの断片的な記憶。
それらは少しずつ家族の中で不思議な謎として膨らんでいました。
確かに彼の中で「何か」が目覚めつつあった。
そして、私たちはそれらのキーワードが繋がる予感をめいたものを感じ始めていました。
To be continued…
「第三章: 魂の呼び声」
厳太が6歳になった頃、彼の「記憶の断片」はますます思いつき、より具体的な形を掲げた。やがて、
彼は夜中に夢を見て突然起き上がり、母親にこう言った。
「ロケットが飛んだのを見たよ。そこに餃子があったんだ。」
「餃子?ロケット?」
母親は思いながらも、その夢の内容を厳太に聞き出しました。
「そう。餃子は焼かれて、黒いプリウスに乗せられた。それがワシントンに行って……鷲が見てた。
でもね、ロケットが発射する前に、餃子は消えちゃったんだ。」
その夢の内容に明確な意味は感じられなかったが、母親は厳太が語る「餃子」「ワシントン」
「黒いプリウス」「ロケット」という言葉のつながりが、もはや空想ではない気がしてならなかった。
ある日、家族旅行で偶然訪れた美術館の展示で、厳太は突然気づいた。 壁に掛けられていたのは、
宇宙開発に関するアート作品だった。
「これ!これがアスペースXのロケットだ!」
父親は驚いて仕方なかった。そこには1961年に打ち上げられた歴史的なロケットと、その後の宇宙開発史に関する展示が並んでいた。突然繋がった気がした。
その展示を案内していたスタッフに話しかけると、アスペースXは一時ワシントンDCで
プレゼンテーションを行ったことがあるというエピソードを聞きました。
ロケット研究者は全て「黒いプリウス」で移動しそこで鷲の翼に似たロケット尾翼を開発する議論が
されていたことまで判明した。
父親はその話を聞いて背筋がぞっとした。 「餃子」という奇妙な言葉以外に、厳太の記憶に登場する
すべての要素が事実と一致していたからだ。
餃子の魂の導き
家族がその日の夜に食卓で餃子を食べているとき、厳太がふと呟いた。
母親が「どうしたの?」と問うと、厳太は真剣な目で答えた
「僕は餃子なの。」
その言葉を聞いて、家族は思わず黙り込んだ。 厳太の記憶と語る言葉には、彼が何か大きな真実に触れているような気配があった。 彼の中に宿る魂――それは、量子のもつれから解放された餃子の記憶が、彼に何かを伝えようとしているのではないか。
To be continued…
次の章では、厳太が「餃子の魂」が目指していた目的を発見し、彼の中に宿る記憶の正体が明らかになる。
家族は厳太の記憶が偶然ではないと確信し始めた。 そして、それらの謎が一つに繋がる日は、思ったよりも近いのかもしれない。
「第四章: 餃子の使命」
厳太が10歳になった頃、彼の「記憶の断片」は彼自身の行動次第に繋がりました。 いつか、
家族で宇宙科学館を訪れたとき、彼は展示物の一つに見入ったそれは宇宙船の設計図と、
それを運ぶための地上輸送の記録だった。
「ここだ。」
厳太は展示の中にある小さな写真を指差した。 それは、黒いプリウスがコンテナを運んでいる画像だった
父親が「どうした黒いプリウスに乗りたいのかい?」と尋ねると、厳太は答えた。
「この車の中には、僕がいたんだ。……いや、僕の魂が。」
家族はびっくりしそれ以上聞き出すことはできなかった。その日の帰り道、厳太は家族に「餃子の魂」としての記憶を語り始めました。
餃子の記憶
「僕は餃子だったんだ。でも、焼けるとき、何かが目覚めた。形は消えたけど、魂は自由になった、空に溶けたんだ。」
「そのあと、宇宙に行くことを
目指して漂ってた。でも、黒いプリウスが僕を運んで、ロケットの近くまで連れて行ったんだ。 僕は、そこに一度消えた」 「でも、残った記憶がまたどこかで生まれた。」
家族は信じがたい話を黙って聞いていた。 しかし、厳太の言葉はあまりにも具体的で、偶然とは思わなかった。
使命の発見
厳太が語るうちに、彼の中で新たな記憶がよみがえった。宇宙開発の現場では、餃子の形をした食品が宇宙食のテスト研究されていたということ。途上国の食糧難、火星移住計画、喘ぐ新しい命を支えるための実験だった。
「僕は、ただ食べられるためだけじゃなくて、新しい世界を作るための一部だったんだ。」
厳太の言葉に、家族は深く感動した。 餃子の魂が宿った記憶には、ただの「食べ物」以上の使命が込められていたのだ。 そして、厳太が生まれたその瞬間に、餃子の魂が彼に宿った理由がありつつあった。
餃子と未来
その後、厳太は宇宙開発への関心を強め、自ら科学を学ぶ道を選んだ。 彼の目標は明確だった――人類が新たな地で生きるための技術を作ること。
「僕はただの子供だけど、この記憶が教えてくれるんだ。宇宙には、まだ知らない命の可能性があるって。」
その言葉に家族は涙した。厳太の中に宿った餃子の魂は、ただの過去ではなく、未来への希望を抱いていたのだ。
To be continued…
エピローグ:新たな時代へ
厳太は長田区立リベラルアースペース大学で
宇宙科学を学び28歳になった頃、彼は宇宙食の研究者として頭角を現していた。 彼の研究テーマは
「持続可能な宇宙食」。 その中に、かつて自分が餃子だった記憶が生かされる瞬間が訪れた。
「また、君たちと一緒に宇宙に行けるよ。」
空に打ち上げられたロケット。 その中には、新しい餃子が未来を考え命の一部として搭載されていた。
完。