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2.Vtuberってなに?

「それじゃあVtuberになってみない?」


そう言われたものの、さくらの頭には、大きなハテナが浮かんでいた。


「…Vtuberって何ですか?」


「そっか!普通そこからだよね!」


謎の女性は、パンっと手をたたいた。


「はじめまして。私、個人でVtuberをしているみゃあこって言います。みゃあこ、っていうのは、もちろん偽名ね」

「はあ」

「そして、これがVtuberってやつ」


みゃこさんは、スマホを見せた。

YouTubeだ。

YouTubeはたまに見たことがある。

気づいたら時間がたってしまうから、受験中は見ないように封印していた。

スマホの画面の中には、アニメ調の女の子が、かわいらしいアニメ声で話をしている映像があった。


「これがVtuber」

「はあ」


と言われても、さくらの頭には、いまだにハテナが浮かんでいた。

さくらは、再びスマホを見た。

可愛らしい部屋で、ゆらゆらと揺れながら、可愛らしい声で話している。

まるでアニメのキャラクターが話しているかのようだった。


「つまり、声優ってことですか?」

「うーん。そういうとらえ方もあるわね」


みゃあこさんは、腕を組んで首をひねった。


「Vtuberにも、いろいろな方法があるけど、今の主流は声優とはちょっと違うかな。声優は完全にキャラクターになりきっているけど、Vtuberは中身の魅力が重要というか。

ちょっとメタい話になっちゃうんだけど、キャラの見た目と中身って全然違うことが多いのよね。キャラは18歳だけど、中身は25歳だったりするから、普通に会社とかお酒の話をしたりするし。

今日あったこととか、最近はまっていることとか、そういうリアルの話をして、リスナーと交流するのが、今のVtuber。もちろん、完全にキャラになりきってロールプレイする人もいるけどね」


さくらは、はあ、としか言えなかった。


「どう? Vtuberにならない?」


みゃあこさんの説明を聞いても、Vtuberについてはわからずじまいだった。

けれど、脱ニートできるなら、何でもよかった。

両親から『働くか進学を』、と言われていた。生活費くらいは稼がないといけない。


「Vtuberって稼げるんですか?」

「うわっ。いきなりどぎついところ来たね」

みゃあこさんは、うげ、と身をそらした。


「…最初のうちは、そう簡単ではないかもね。YouTubeの収益化には条件があるの。最初のうちは、それをクリアするのが、結構大変かもしれないわね」

「そうなんですね」

「だいたい収益化するまでに半年くらいは考えておいた方がいいかも」


半年。

バイトだったら、働いたその日からお金がもらえるが、YouTubeはそうもいかない。

さくらにとって、半年の期間は、想像以上に長かった。


「あ、もしかしてVtuberって面倒とか思っちゃった?

でも、どの業界だって、楽していきなり稼げるわけではないわ。働いてお金を稼ぐには、苦労がつきもの。だから、最初に言っておくと、かなり厳しい業界ではあるわね。

私だって、今はVtuberの収入で食べていけているけど、いつ炎上して収入がなくなるかわからない。自営業だから、不安定ではあるわよね」


甘いことばかりではない。

さくらは働いたことはなかったが、働くことの苦労は想像できた。

みゃあこさんの言葉は、ぐさりと響いた。


「でも、安心して! Vtuberには、かなり大きなメリットがある。顔出しのYouTuberと違って、身バレもしないし、こうして平日の昼間っからふらふらと公園を散歩できる。それに、私はひとりでやっているから、いつ休もうが自由! なにものにも縛られない解放感! 最高だと思わない!?」


みゃあこさんは、両手を広げて空を仰いでいる。

自由でキラキラしている。

少し、うらやましいと思った。


「それに、安心して。この私がついているんだから! 機材とか、ノウハウとか、そういうの、ぜぇんぶ教えてあげる! これでも私、結構有名なのよ~」


どうして初対面の自分にそこまでしてくれるのだろう。

新手の詐欺のような気がしてきた。

後で多額の金額を要求するのではないだろうか。


「…目的は何ですか?」

「へ?」

「今日出会ったばかりの見ず知らずの私に、どうしてそこまでするんですか」

「もちろん! タダで、ではないわよ。実はね、動画編集をお願いしたくて。こんなこと言うの、恥ずかしいんだけど、実は今までお願いしていた人が飛んじゃって」

「飛ぶ?」

「急に連絡不通になったってコト。ちょうど、新しい動画編集者を探していたの」

「でも…私は経験者じゃないし」

「大丈夫よ! 簡単な編集だから。ここら辺に住んでるのなら、お互い家も近いし、打ち合わせもしやすそうだし。そ・れ・に!」


みゃあこさんは、にこにこ笑顔で、顔を近づけた。

近づくと、甘いいい香りがする。


「あなた、かわいいんだも~ん!」


さくらを両手でぎゅう~と抱きしめた。

みゃあこさんの大きな胸と柔らかい体をさくらを包み込んだ。


「ねぇねぇ! 名前って何て呼ぶの?」

「さ、さくらです」

「何歳? まだ若いよね?」

「18です…」

「きゃー! 18歳、お肌ぴちぴち! 小さくてかわいい~!」


く、苦しい。胸が顔に当たって息ができない。

苦しみから解放されたい一心で、さくらは名前と年齢を伝えてしまった。


「それじゃあさくらちゃん! ライン交換しよ」


ようやく解放されたかと思ったら、みゃあこさんは、スマホを出した。

さくらは言われるがまま、ライン交換をした。


「それじゃあ、何かあったらラインするから。じゃあね、さくらちゃん! あでゅ~~~」


謎の女性、改めみゃあこさんは、手を大きく振りながら消えていった。

そういえば。

Vtuberになるとも、動画編集をするとも、言っていない。


「強引な人だ…」


そう思ったけれど、みゃあこさんと一緒なら何かが変わるかもしれない。

さくらには、そんな予感があった。




<おまけ>

今回は特にノウハウ系はなし。

さくらとみゃあこさんの出会いの話でした。

次回からVtuberの始め方などノウハウを説明できたらと思います。

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