第五話 私の名は…
馬に乗って王都に向かって数十分。流石にもうすぐ着くかな?と考えていた私は王都を見て目を見開いた。
「えっ…おいおいおいおいマジかよ」
なんと王都が火の海になっていたのだ
それも教会を中心にして燃え広がっていた
このままいけば学園も燃えてしまうだろう
「これはあかんな…原因は教団なのかな…?」
私は馬から降りて王都に入った。
とりあえずこの事態が何処から始まったのか確認しなくてはならない
魔力を練って全身に纏い、足に魔力を集中させて飛び上がる
そこから指の先に魔力の糸をするすると出し、壁にくっつけて遠心力で進む。
擬似ス◯イダーマッ!の出来上がりだ。
「アーアアーーー…何回もやってるから面白みがないな。」
そうぼやきながら教会の塔の上を目標にして進んでいく
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「…ベルゼブブが静かになったわね。ベルフェゴールがついたのかしら。」
そう言ってルシフェルが上から王都を見下ろす
「それにしても…サタンが暴れすぎているわね。いくらなんでも教会を中心に大爆発を起こすだなんて…」
「…まぁ、あの脳筋じゃしかたないわね、レヴィアタン。」
「はぁ…主様に起こられないといいけど」
「さて、そろそろ私たちも教団の奴らを懲らしめに行きましょうか。」
「えぇ、ルシフェル様。」
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同時刻、サタンは教会の中で教団の構成員と戦って…いや、一方的に嬲り殺していた。
「うわぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!」
「ぐわぁぁぁぁっ!!?!」
教会の中は悲鳴と血の匂いと地獄で満ちていた。
「はぁ…この程度でやられるのか、教団というものも期待はずれだな。」
「く、くそぉっ…! ば、化け物、ばけものめぇっ!!」
「なーにが化け物だ。我は最古の悪魔ぞ。」
そう言ってぐしゃりとその人間の体が潰れた
「う、ぁ、ぁ…」
びちゃびちゃっと音が鳴り、血が吹き出す
「おっと…派手にやってしまった。すまんな。まぁ反省はしないが…なっ!!」
そう言ってまた後ろから来た敵を蹴り飛ばした
「ぐぼふっ…!」
「は〜ぁ…不意打ちとは卑怯極まりないぞ?ちゃんと正面から戦え。まぁどちらにせよ我には敵わんがな。」
「あ…あ…まだ…死にたく…」
「強者の前に生きるも死ぬも選択はない。ただ弱者は打ちのめされるだけだ」
サタンは鉈の形をした刃物でそいつの首をちぎり落とした
生首は炎の中に消えて行った。
「もう人間はいないのか?つまらんなぁ…」
そして彼女は屍体の山の上に座りあくびをかいた
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「はっ…はぁ…っ…はっ…」
「どうなってるの…これ…!」
赤髪にショートカットの彼女は教会に向かって走り続けていた
彼女もまた王都学園の新入学者だ
「火の海の中心は…教会!まだ誰か取り残されているかも…!!」
「まだ…間に、会う…!」
彼女は魔力を使い、足の速度を上げ、教会へと火中を潜り抜けて行った…
「くっ…熱い…けど…!」
「あそこに取り残されてる人に比べれば…!」
走り続けて数分後
「た…助けて…」
「!! 見つけた!今助けるよ!待ってて!!」
「うぅ…熱い…熱い…」
倒れている人の周りには火の渦、そして足元は不安定…
おまけに身体には大きな家の瓦礫が積み重なっている
「んぐ…!!」
頑張って持ち上げてみるものの、びくともしない
「うぅ…!!!」
その時
「…人の力で持ち上げられるって思ってるの!?そこを退きなさい!!」
甲高い声が響く
「え…?誰?」
「アンチグラビティ!」
魔法の呪文が唱えられた途端、持ち上げようとしていた瓦礫がふわりと雲のように持ち上がった
「ほら早く!その人をこっちに!!」
「わぁ…!! ありがとう!!」
彼女は倒れていた人を背に担ぎ、避難する
「学校の避難施設まで運ぶわ、こっちに担架があるからそこに乗せて。」
「至れり尽くせり〜ってやつだね。本当にありがとう!!」
「当たり前よ。さ、話してないで次の人!!」
「おー!!!」
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同時刻
ソフィアが丁度教会に着いた頃
「…うわ…酷い有様」
「酷いとはなんだ?これでも我慢した方だぞ?」
「悪魔の基準で語らないでもろて」
「もろ…?」
「…あーうん、気にしないでサタン」
教会の有様は酷いもので、血の匂いが漂う屍体の山や、ところどころ血がへばりつきボコボコになっている壁、炎によってチリチリになった教典などなど、ボロボロになっていた
「よく完膚なきまでこんなぐちゃぐちゃにできるよね…そこだけ尊敬しとく」
「ふふん! 破壊は私の得意分野だからな!」
「はは…誇ることでもないと思うけど…」
この脳筋バーサーカーが…これが終わったらルシフェルに報告だな
「さて、主は今からどうするつもりだ?」
「え…普通に避難するつもりだったんだけど…」
「なんだと?ならメインディッシュは我が頂くとするか!」
「ちょっとまって、メインディッシュって何??」
「む、マモンから聞いていなかったのか?」
「何も聞いてないよ…襲撃の話以外」
「ふむ…では此処の地下に教団の小さな拠点があることも知らんのだな?」
「なにそれ…ゴキブリみたいじゃん…」
「ふふ…確かにあのゴミ屑供にはそう呼ぶのが最適だろうな!」
「…今回の襲撃の目的は大きく二つ。一つ目は地下にある拠点を潰すこと。そしてもう一つは____」
「今回のメインディッシュ…教団の構成員、No.12の討伐だ」
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ギリギリ…
「う…ぅ…あぁ……」
首を絞められているのは第一部隊のリーダー
そして…
「正直に答えるの…そうしたら…解放してあげるの…ほら…早く…」
絞めているのはベルフェゴールの拘束魔法だ
「あ…あ…やめ…言いたく…ない…」
「…言ったら楽になるって言ってるの」
「言ったら…ころ…され…!」
「殺され…?」
その時
「随分と俺の部下がお世話になったようで…」
「!」
一人の男が現れた
その一瞬の隙を突いて彼は部下を拘束魔法から解きはなった
ドサッ
「ゲホッ…ゲホ…!」
「あ、ありがと…ございま…」
「お前はもう用済みの駒だ、死ね」
「え…?」
ゴシャッ
部下の頭が潰れる
ぱたり、と体が倒れ、それを彼は蹴飛ばした
「ふん、役立たずめ」
「…貴方が、マチヤス…なの?」
「あぁそうさ、俺はマチヤス。教団の構成員の12番目さ」
「そう…じゃあ…ベルゼブブの相手をお願いなの…ずっと待てをされて…不機嫌だから…」
「ほう?そのベルゼブブとやらはどこにいる?」
「後ろ…なの」
ドゴオォォォォォォンッ!!!!!
天井を突き破り、ベルゼブブはマチヤスを抱えて外に出た
「…これだから…脳筋は…困るの…」
「アハハハハハハハーーーーーッ!!!!!」
小さな黒いものが、業火で照らされる
その姿こそ悪魔と相応しい、とマチヤスは目を見開き、そう思った
マチヤスを狙った攻撃が空を切り、向こう側にある塀が一刀両断される
「…恐ろしい程の攻撃力…当たったら確実に…!」
死ぬ…!
そう思った、思ってしまった
その瞬間、彼を包み込む気持ちが、余裕から恐怖に変わる
なんなんだ、こいつは
彼はあまりの恐怖に逃げ出した
勝手に体が動いたのだ
「ひひッ…!逃げても____無駄だ!!!!!」
そう声が聞こえた後、後ろからとんでもない魔力を感じた
思わず振り返ると、そこには大きな魔法陣
そこから蠢く無数の口と触手
思わず目を疑った
「ば、馬鹿な…!!こんな大きな魔法陣…しかも召喚…!なぜガス欠にならん!?なぜ倒れん!?!?」
彼は全速力で逃げる
教会に行けばあの大きいものは入って来ないだろうと考え、そこに向かう
「…あれ?どこ行った!?」
戸惑う声が聞こえる。間違いない、あいつは魔力量と力量が凄いだけでまるで扱えていない…!
「ふふふ…ひとまず逃げさせて貰うぞ…!」
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教会にて
「暴れてる音が聞こえるね」
「あぁ、ベルゼブブだろうな」
「あー…あんなに大きい魔法陣で召喚しちゃって…魔力が勿体無いなぁ」
「…おや?見失ったようだな」
「本当だ、キョロキョロしてる」
「…地団駄を踏んでいるな」
「…自業自得なのにね」
サタンと話していると、何かが飛んで来るのが窓越しに見えた
「あれっ?なんかこっちに来てない?」
「本当だな」
「もしかしてあれがマチヤスだったりする?」
「そうっぽいな」
「…これ変身した方がいいかな?」
「そうだな」
「ですよね」
グダグダな会話をしながら、正体を隠すため全身を魔力の糸で覆う
そしてその糸は私の身体に纏わりつき、形を形成してゆく
漆黒のドレスの出来上がりだ、ついでに顔もお面で覆っておこう
そうこうしているうちに、ドアが勢いよく開く
「おぉ、来たか」
「ハッ…ハッ…ハァッ…!」
息切れを起こしている。おそらく魔力を使いすぎたのであろう
「…サタンが相手をすると相手が死んじゃうから、私がやるね」
「えぇ〜…」
そう言って唇を尖らせる
「…本当にダメだから!いい?少し他所に行ってて!」
「はぁ…つまらんの…」
そしてサタンが消える
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「こんばんは、マチヤスさんで合ってるかしら」
「!? だ、誰だ!!!」
彼は酷く動揺していた。どうやら、教会には誰もいないと思っていたのだろう
「誰だと言っている…!」
私の名前か…考えたこともなかったな
…よし!ここは有名なあのセリフで凌ごう!!
「…私は七罪の主である……名はまだ無い」




