第四話 七罪、此処に降臨
ガラガラ…
私は馬車の中、一人揺られながら、この後どうしようか考えていた。
『そういえば私が出る時の日程聞いてなかったなぁ、どうしよう。』
とりあえず王都に着いたら七罪の誰かに教えてもらおうかな。ルシフェルかマモン辺りに。
そんな事を考えながら窓の外の景色を見る。
辺りにはまだ畑か野原ばかり。
でもこの後の林を抜ければ結構早くに王都に着く。
…まぁ、山賊とかに会わなければの話なんだけどね!
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ボス!ここら辺一帯の家からは全て金品回収しました!」
「よし、それならばもういい、ずらかろう。」
「ハイっす!…あれ、ボス、なんか馬車みたいな音しません?」
「!? 伏せて草むらの中に隠れろ!」
カサガサッ…
「…ほほう?あの馬車は…」
「知ってるんですかボス!」
「少しうるさいぞ、口を塞げっ。…あの馬車にはきっと王都に行く奴が乗ってるんだ。もうすぐ王都学園の入学式だからな!おそらくだが学生が入ってるぞ…」
「モゴモゴ…そしたらとっ捕まえればいい奴隷になって金になるかも!!…モゴモゴ」
「クククッ…ここの山道を走ったのが運の尽きだったな!捕まえるぞ!!」
「イエッサー!!」
ヒヒィィィンッ!
「止まれ!!命が惜しくば中にいる野郎を出せ!!!!」
「ひ、ヒィ!?山賊!?や、やめてくれ!!死にたくない!!見逃してくれぇぇっ!!!」
早々に馬車から降りて逃げ出す運転手
「ヒャハハハ!!あいつ中の奴を置いて逃げたっす!!!!」
「これは好都合…無抵抗のまま中にいる奴を捕まえるぞ!」
そう言って馬車の扉を開ける二人、しかし
「…は?中に誰も…いない?」
「おかしいっすね…誰も乗ってなかった訳もないっすし…」
その時
『はぁ…』
後ろからため息の音
「!? だ、誰だ!」
『誰だって言われて答えるほど私は子供じゃ無いって事だけ伝えてあげるよ。』
そう言って、女声の何かが姿を現す
暗闇に映える黒いドレスに、深いフード、所々に金色の装飾がなされている。
「チッ…見られたからにはここで____!」
ナイフを持って女声のフードに突き刺す
突き刺した…はずだった
『残念、そこじゃあない。』
気づけばフードの女は背後にいた。
「お、お前!どうやって!?」
『やり方?簡単だよ』
そう言って彼女は手に魔力を込め始める
『まずこうやって魔力を人間の形に造形するの。そしたら人は勝手にそこに人間がいるって錯覚する。たったそれだけ。』
「で、デタラメ言うな!!」
そう言ってまた男はナイフで切りつける
『ネタバラシしたのに…なんでまた同じ事をするの?』
「ヒィッ!?」
彼女はまた____彼の後ろにいた。
「っ…!なら挟み撃ちで刺してやるっス!!!!」
山賊の手下が彼女の背中にナイフを刺そうとする、が
『はぁ…まぁいいけど、君ら相打ちすることになるよ?』
「は?」
グシャッ
挟み撃ちしようとした二人はそれぞれ、ボスと手下を刺していた。
「な…なん…で…お前が…俺…を…」
「ぐぇ…ッ」
バタリ…
山賊達は倒れ、血がだくだくと流れていた。
『敵としては百点満点中二点ぐらいかな。まぁ弱かったし妥当だよね。』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『ふぅ、とりあえず一件落着かな。』
私は魔力の糸でできた服を脱いだ。
そしてそれはハラハラと塵のようになり、私の手元に戻り再び魔力として身体に吸い込まれていった。
私は死体を一瞥して、
『…何が「命が惜しくば中にいる野郎を出せ!」だ!! しかも運転手逃げてるし…あーもう!思い出したら腹立ってきた!!何!?ここから一人で歩けっての?!』
そう言って一息ついてから、周りを見渡す。
『はぁ………あ、馬車の馬!! その子に乗ってけば怪しまれずに行けるかなぁ』
全力魔力ダッシュでも行けないことは無いんだけど、そうなると「どうやってあいつは森の中から一人で出てきたんだ…!?」と思われかねないし、何よりこんなことで魔力を消費するのは嫌だ。
ヒヒィン!
『よしよーし、いい子いい子〜』
首の辺りを撫で、ご機嫌を取り、どうにか背中に乗る。
『よいしょっと…案外揺れるなぁ』
背中に乗った後、ぽんぽんと優しく馬の首を叩き、宥める。
少し乗馬の心得はあったが、こんな所で役に立つとは思わなかった。
『よし!それじゃ__出発!!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
同時刻、教団のアジトにて
「準備は順調に進んでいるか?」
その場を取り仕切るリーダーが言う。
「はい、何事も起こらず順調です。」
「そうか…見張り番はそこで見張っていろ。一人たりとも敵はここに入れるなよ。」
「はっ」
バタバタバタバタ…
「だっ…第一部隊!!第一部隊のリーダーは!?いるのか!?!?」
他の部隊の教団の仲間が逼迫した容姿で走ってきた
「なんだ!うるさいぞ!場所がバレたらどうする?!」
「はぁ…はぁ…たす、助けてくれ…!俺らの部隊が、もう…!!」
「いいから落ち着け、何があったんだ?」
「く、黒ずくめの…はぁ…奴が…突然やってきて、うちの部隊を滅茶苦茶に…!!仲間もほぼ全員嬲り殺しにされた…!!!」
「な、何!?そいつはお前を追ってきていたのか!!」
何やら事はかなりまずいことになっているようだ。
「クソッ!全員武器を____」
その時
ガシャン!!!
「見つけたァァァァァァァッ!!!!!」
人の形をした黒ずくめの何かが部屋に入ってきた
「うわぁぁぁぁぁっ!!!!!こ、こいつ、こいつだぁぁぁぁぁ!!!!!」
「総員攻撃を仕掛けろ!!ここを見られたからには殺せぇぇッ!!!!!」
「うぉぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
全員その何かを攻撃したが__
「ぐはぁっ…」
「う”ぁあぁ…!!」
何一つとして攻撃は通っていなかった…しかもなぜか全員が返り討ちにされている
「…ぐ…ぅ…お、お前…何者だ…!?」
「獲物…獲物…おいしい獲物…たくさん…」
どうやらそいつは…いや、化け物と言った方がいいだろうか…こちらの言葉なんて耳に入っていないようだ
「オ前も…おいしそう…殺す…殺して…その後すぐ食べる…!!!!」
じゅるり、と化け物の口から音が鳴り、ぼたぼたとよだれが落ちる。
「く…クソッ…!まだだ…まだ死ねない…!昇格して一定の地位にまでつかなければ…逝けない…!」
そう言ってリーダーは地面に手をつき、立ち上がって逃げ出そうとした、だが__
「はい、ダメなの、ストップ〜。」
「なっ!?」
何者かによって体が動かなくなってしまった
「うぅ…!邪魔…しないで!べルフェゴール!!」
「ベルゼブブ、流石に暴れすぎだと思うの。ルシフェル様と主様に起こられるの。」
「うっ!? あ、主…怒られるの、嫌…」
「わかったら大人しくするの。」
「うぅぅ…」
そしてその何者かが姿を現す
「こんばんは。…ふぁぁ、こんな夜に出動するだなんて…眠たいの。」
「…あ、私はベルフェゴール。そしてこの子はベルゼブブなの。宜しくなの。」
「は、はぁ…?」
そいつは化け物の仲間で、ベルフェゴールというらしい
そして急に襲ってきた化け物の名はベルゼブブ…こいつらは…
「お前らは…なんなんだ…?」
「私たち? 私達は_」
「_天使を断罪するもの…七罪なの」




