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【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】  作者: ステラ


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指輪ものがたり 9

なるべく早くクレイトス領に行けるようにと親書を書いてくれたリオン様だったけど、そんなリオン様にシグウェルさんは


「二日後に出発する」


と言った。え?急がなくていいの?自分の魔力の半分が国外にあって、それがいつ指輪から取り出されて利用されるかもしれないのに。


そう心配したら、


「たった一日か二日でクレイトス領の者が俺の魔力を封じ込めている宝石部分の防護魔法だけでも解けるなら大したものだ。そうしたらむしろ褒めてやってもいい。」


なんて言う余裕ぶりだった。そんなシグウェルさんにリオン様も、


「まあ君がそう言うならそれでもいいけどね・・・?では向こうには君達の訪問が二日後になることを正式に通達しておくけど、くれぐれも無駄な騒ぎだけは起こさないでよ?お目付け役にユリウスもつけるからね?」


と不安に思ったのか念を押してユリウスさんまで同行させると告げた。


もちろん突然の話に驚いたのはユリウスさんだ。


魔導士団の団長に副団長、更に癒し子である私までもが突然ルーシャ国を留守にするっていうんだから。


「コトがコトだけに団長が騒ぎを起こさない保証がどこにもないんすけど⁉︎どう考えても俺は団長の尻拭い要員ですよね?ていうか、その間の王都の守りが心配っす!やっぱり俺は残った方が・・・!」


一応リオン様が婚約破棄が穏便に済みそうなきっかけを作ってくれたから、後はそれを利用して正式にシグウェルさんの婚約をなかったことにするだけなのにやけにユリウスさんは嫌がる。何か穏便に済みそうにない予感でもしているんだろうか。


だけどリオン様は、


「君達が留守の間はノイエ領からアントン殿を呼んであるから大丈夫。彼ならシグウェルが不在の間もきちんと王都を守ってくれるからね。」


とにこやかに頷いた。さすが、隙がない。


そんなわけで渋るユリウスさんと、私の専属護衛のエル君にシグウェルさんという最少人数でクレイトス領へ赴くことになった。


「どうして四人だけなんですか?」


いつもなら侍女のシンシアさん達や他の護衛騎士さん達も同行するのに。


出発する日、ミアさんがルーシャ国にやって来たように私達も魔法陣を使って移動するというので魔導士院のあの移動用魔法陣のある場所へ向かいながら聞けば、


「クレイトス領はここから山を三つと大河を一つ、国を二つ隔てた山中を魔法で切り開いた場所にある。普通は間にあるその他国を中継地点に魔法陣での移動を二、三回繰り返すが今回は急ぎだからな。ここから一気にクレイトス領へ移動するが、そのために運べる人数には限りがある。」


とシグウェルさんが説明してくれた。それをユリウスさんが補足する。


「一度に長距離を跳ぶ分、魔力消費も激しいからあんまり大人数は移動出来ないんすよ。まあ、そもそもそんな長距離を魔導士じゃない人を二人も連れて一気に移動出来るっていうのが団長しか出来ない事なんすけど。」


そういえばミアさんがルーシャ国に来た時も一人だったし、現れた時と帰る時にはものすごい熱量の魔力を放っていた。


もしかしてあれも中継地点を挟まずに一気にクレイトス領とルーシャ国を行き来していたのかな?


そう思ってユリウスさんに聞けば


「そうっす!そういう点ではミア様も、団長には劣るけど才能に溢れた魔導士なんすよねぇ・・・。ていうか団長、いつもの半分くらいしか魔力がないのに大丈夫なんすか?」


とシグウェルさんにも尋ねた。


「勿論平気だが、お前も移動にきちんと魔力を使ってくれればなお好都合だ。向こうでは何があるか分からないからなるべく俺の魔力は温存しておきたい。」


「その温存した魔力で騒ぎを起こさないでくれるのを願うばかりっす・・・」


つい先日、ミアさんを迎え入れたばかりのあの大きな魔法陣がある場所に着くとユリウスさんは諦めたようにため息をついた。


そして魔法陣の円の真ん中に立つよう、私とエル君を促す。


「エル君は俺にしっかり掴まるっす。任務や訓練で魔法陣での移動は経験があると思うっすけど、移動距離が長い分今までとはちょっと勝手が違うと思うんで。」


そう言いながらユリウスさんは自分のローブの内側にエル君を入れて肩を抱いた。


エル君も珍しく素直にユリウスさんの言う通り、肩を組んで抱き込まれたその服の脇腹部分をちゃんと握りしめている。


「君もエルのように俺に掴まれ。移動は一瞬だが魔法陣での移動に慣れていない君はエルよりも体に感じる負担が大きいはずだが、絶対に手は離すなよ。」


ユリウスさん達の準備が出来たのを確かめたシグウェルさんが、そう言いながら私をエル君と同じようにローブの内側に引き入れると私の腰を抱き寄せた。


「は、はい!」


慌てて私も両手でシグウェルさんに抱きつく。なにしろ魔法陣での移動はシグウェルさんちの家宝騒ぎに巻き込まれてユールヴァルト家のタウンハウスからシグウェルさん個人のお屋敷へ跳んだのと。リオネルの港町へ行った時くらいしか経験がない。


しかもそれは今回とは比べ物にならない短距離だ。


しっかり離さないように抱きついて、よろしくお願いします!と言えば


「では行こう」


シグウェルさんはふっと笑い片足の先でとん、と魔法陣を打った。


途端に地面からぶわりと魔力の流れが湧き上がってくる。それは青や紫、白銀色の風に形を変えて私達を包み込む。


少しだけひんやりと感じるそれは、ミアさんの性格そのものみたいな炎を巻き上げた魔力とは真逆のシグウェルさんの雰囲気そのものだ。


これだけ大きな魔力を動かすと個人の性格みたいなものがそこに現れるんだなあ、とぎゅっと目をつぶりながら思っていたら突然足元の地面が抜けたような、奇妙な感覚と浮遊感に陥った。


「⁉︎」


落ちる。そう思ったけどびっくりし過ぎて声も出せずに必死でシグウェルさんに掴まっていたら


「大丈夫か?着いたぞ」


ローブにくるまれている頭上からシグウェルさんの声がした。


「え?つ、着いた・・・?」


気付けば、抜け落ちて宙ぶらりんになったと思った地面はしっかり私の足の下にある。


地面がなくなったと思ったそのほんの一瞬の間にどうやらクレイトス領への移動は終わったらしい。


「おい君、大丈夫か?」


ばさりとローブが取り払われれば、現れた周囲の景色は周りを緑に囲まれている。


私達の立っているところは石畳の円形状になった広場のような高台で、見下ろす先にはこじんまりとした家々の並んだ街並みや空中にいくつか浮かぶ小島のようなものとそれから流れ落ちる滝、そこから落ちる水が霧になって空中に広がり綺麗な虹を作っている様子が見えた。


ルーシャ国とは全く違う風景・・・そもそも小島が空に浮かんでるというファンタジーそのものな光景に見惚れていたら、そこで自分の足がガクガクなのに気付いた。


シグウェルさんもそれに気がついたようで、


「やはり負担が大きかったな。」


そう言うと私をひょいとお姫様抱っこする。


「ちょっとシグウェルさん⁉︎」


「腰は抜けていないようだがクレイトスの迎えの者達の所へ歩いて行くのは無理だろう。」


私を抱いたままのシグウェルさんが顎でくいと指し示した先を見れば、私達のいる広場から数段階段を降りたところには橋がかかっていて、そこから繋がっている真正面には立派なお城がそびえている。


そしてそのお城の門扉・・・こちらと繋がっている橋のところには何人もの人達が私達を出迎えるために待っていた。


「いやちょっと、初対面の人達の前でいきなりお姫様抱っこって・・・‼︎」


「そんな生まれたての小鹿のような震える足では橋の向こうに渡るまで時間がかかるがそれでもいいか?自分で歩くなら今すぐ降ろすが」


全く降ろす気はなさそうなシグウェルさんは、私を抱いたままスタスタ歩きながら面白そうに目を細めてそう聞いてきた。


「勘弁してください・・・!」


確かに、足の力が抜けて立っているのがやっとだけど初めて会う人達の前にいい歳をしてお姫様抱っこで現れるとか羞恥プレイもいいところだ。


クレイトス領の人達に合わせる顔がない。


あまりの恥ずかしさに真っ赤になって両手で顔を覆えば、そんな私にユリウスさんは


「しょっぱなから団長とユーリ様の仲の良さを見せつけて牽制になるし、いい事だと思うっすよ?」


と呑気に話し、シグウェルさんは


「君、まだまだ軽いな。クレイトス領は食に無関心な魔導士が多いからあまり君の好みそうな食事はないかもしれないが、食事量が落ちないようにせめて君の好きな甘いものだけでも多めに準備させよう。」


と私の羞恥心などお構いなしで人の食欲の心配をした。


こんな時まで私の食い意地を気にかけるのは大きなお世話だよ⁉︎


そう言いたかったけど、さすがに初対面の人達の前でそんな言い合いをするのはどうかと思い、恥ずかしさに耐えて黙ってお姫様抱っこに甘んじるしかなかった。



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