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綿棒

作者: キラキラ☆まんまるドーナツカレー丼鰤




「おやすみなさい、綿棒」

私は今日もいつものうようにサイドテーブルの綿棒に告げた。告げてから眠りに落ちるまで私は綿棒に意識が芽生えた日のことをまた思い出していた。



ある夜、私はいつものように体液に塗れた手を拭こうとティッシュに手を伸ばした。すると、うっかり隣の綿棒に触れてしまった。


「あっ……」


赤黒い血が真っ白な綿棒の束のほとんどについてしまった。


「あーあ、これもう捨てないと。」

「次からはちゃんと蓋しておいとこ。」


綿棒の容器を掴んでゴミ箱に投げ捨てようとした、その時だった。


「……捨てないで。」


小さな男の子の声がした。


「………えっ」


何……?今、声がしたよね。え、何どうしよう、え、やだっやだ…っダメだそんなわけない


「動画をスマホでながしっぱなしにしてたかな…?」

「……おかしいなあ。」



「……綿棒だよ、お姉ちゃん。」


また、男の子の声がした。


「いやぁああああああああああ!」

「あ、あ、いや、誰か助けて」


私は綿棒から手を離し、少しでも距離を取ろうとした。狭いシングルベットの上に居ることも忘れ後ろにさがろうとした。そんな私を横目に、綿棒はかわいい声で言った。


「大丈夫、君も綿棒になれば良いんだから。ほら、すぐによくなる」


そう言うと綿棒はにこっと笑った。笑ったのだ。少なくとも私にはそう見えた。


次の瞬間、私は不思議な感覚に晒されていた。それは、体が綿棒になっていくような感覚だった。まるで昼下がりの学校で寝落ちするような気持ちよさが全身に溢れ体が綿棒へと変わっていくのを感じた。傷跡が残っていた腕はひとつにまとまりなめらかな単色の白棒に変わり、かって身体だったものと同化して1本の大きく太い綿棒に変わった。


そんな私に横の綿棒がまた話しかけた。


「ね、良いでしょ?気持ちいいよね?」

「……気持ちいい。」


心の底から気持ち良かった。頭がふわふわしていてどこへでもとんでいけそうだった。





……懐かしいな。私はあの日から毎晩寝る前に綿棒に自分自身を綿棒にしてもらってから寝ている。おかげで毎晩ぐっすりだ。自己否定しリスカに走ることもなくなった。前向きになり人生に希望が持てるようになった。全て綿棒のおかげだ。彼には何回お礼を言っても足りないだろう。もう私は綿棒が何なのかはどうでもよくなっていた。

その時、ふと私は疑問が浮かんだ。



「ねえ、綿棒。」

「どうしたの?」

「なんで綿棒は私に良くしてくれるの?」


「それはね……君を僕の生贄にする為だよ。」


「………………生贄ってどういうこと。」


私は急に不穏になった綿棒の雰囲気に焦りを感じてきた。綿棒はそんな私に関係なく落ち着いた口調で話始めた。


「君は、八百万の神って知ってるかな? 我が国で太古から信仰されているあらゆるものに神が宿るという数多の人々が信じ、心をよせる神のこと。」



「まさか……あなたは。」


「そう、その通り。僕は綿棒の神だ。偉大なる綿棒の神だ。古来から人々は万物の神に心も体も捧げ、祠を建て祀ってきた。新たな神である僕達綿棒にも当然その対応をすべきだ。しかし、君たちはなんだ。綿棒を敬い崇める心が少しもありはしないよ。」


そう述べると、綿棒は嬉しそうに笑った。いやなんで笑っているんだ。困惑する私を無視して、綿棒は続けた。


「だから、君のところに来た。君なのは偶然だよ。君を綿棒にして私の供物にするために。そしたら僕の心も少しは収まるというもの。どう?嬉しいでしょ。神の供物になれて。」


嬉しいわけない、せっかく生に前向きになってきたんだ。まだ死にたくない。


「嬉しくない。やめて。」


「あー、ごめん。言い方が悪かったよね。君はもう供物の綿棒になったよ。」


その言葉に聞き返すより早く、体が綿棒になっていくあの感覚が現れた。多幸感に包まれ脳みそが蕩けて、ぐちゃぐちゃになった体がくっつきあい大きな綿棒になっていく。


「ー!…!」


必死に声を出そうとしても、口が溶けてなくなってしまい声がだせない。私はどろどろの目玉を動かし、必死に綿棒に視線を向けた。


するといつのまにか私と似た姿をとった綿棒が私を見下ろして、言った。


「うん、ちゃんと綿棒になりそう。良かった。じゃあ、これからよろしくね、綿棒」


そんな言葉を溶け消えた耳で聞いた気がした。









やっほ〜☆初めて書いた小説投稿するよ〜ん!これからもちょこちょこSF作品投稿していきたいな!なんちゃて疲れたなあアセアセ





次回作に乞うご期待!いいねを押せ!!押せ!!押せ!!後APEXのフレンドなって!!

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