高校一年生編
他県から通学してくる生徒が多い学校は嫌いだ。僕が通っていた高校は県境にあり、隣の県から通学してくる友達がたくさんいる。そんな高校で僕は比較的県の中心ら辺の地域に住んでおり家から学校までは一時間弱かかる。高校を選ぶときに親には「遠くて朝早くなるから地元の高校にしなさい。」と散々言われた。それでも僕は電車通学に憧れて地元の高校には進学しなかった。この電車通学が思いもよらぬ出会いを生む。
高校生活が始まって一ヶ月が経とうとした頃、朝にめっぽう弱い僕は電車通学が嫌になってきていた。同じクラスに同じ方面から通っている友達がいなくて電車の中では音楽を聞いて寝ていた。いつもは学校の最寄り駅の少し前で目が覚めるのだが前日に夜中まで課題をやっていたせいで寝過ごしそうになってしまった。ふと目が覚めると目の前には同じ高校の制服を着た女の子が立っていた。高校の最寄り駅は少し大きいこともあって約十分ほど停車するのだ。電車のドアが開いていて目の前に立っている女の子、僕は「この子が僕を起こしてくれたのかな」とその場で思った。電車を降りたところでつけていたヘッドフォンを首にかけ「ありがとうございました」と敬語で言った。女の子は軽く会釈をして立ち去ってしまった。その後僕はまたヘッドフォンをしてお気に入りの曲を聴きながら学校へ向かっていった。僕の通っている学校は校則が厳しくヘッドフォンなどをして通学することが指導対象になることは理解していた。しかし普段は正門にしか先生は立っていないのでいつもギリギリまで音楽を聴いていた。運が悪い時はとことん悪いものだ。曲がり角を曲がったところで先生と遭遇してしまったのだ。これもまた運が悪く、その先生は生徒指導部の先生だったのだ。「放課後に生徒指導室まで来い」と言われその日は気が気ではなかった。実際放課後になって進路指導室に行くと先生からは「次はないからな」と注意だけですんだ。学校を出て少ししたところで僕はヘッドフォンをつけて音楽を聴き始めた瞬間後ろから肩を叩かれた。僕は内心「終わった、、、」と思い後ろを振り返った。すると朝の女の子がニコニコしていた。女の子は「バレたら指導されちゃいますよ」と言った。僕は苦笑いをしながら「さっき注意されてきたところだよ」と言った。すると彼女は軽やかな口調で「誰に見つかったんですか」と聞いてきた。「生徒指導部の先生に今日の朝見つかっちゃったんだよね」と苦笑いをしながら言うと、彼女は「意外とあの先生優しいから見逃してくれますよ」とニコニコしながら言った。僕はこの時「なんて可愛い笑顔なんだろう」と心の中で思っていた。どの世代でも同じ学年に可愛い子がいたら男子同士で話題になるだろう。実際彼女のことを可愛いと思っている人は少なからずいただろう。しかし、男子が話しかけにくい大人しくて真面目な雰囲気があったのだ。実際話してみると冗談も通じてとても楽しい子という印象に僕の中で変わっていった。僕は彼女が電車を降りる前に「LINE交換しない?」と言った。彼女に惹かれていたからだ。すると彼女は快くオッケーしてくれた。QRコードを読み取るとそこに表示されたのは「ななこ」という三文字だった僕はここで彼女の名前を初めて知った。違うクラスだったと言うこともあって基本的にはLINEで話すことが多かった。僕は彼女と話したいと思っていた。「屋上で一緒にご飯食べない?」と送ると、「いいね!食べよ!」と返信がきた。この時の僕はとても馬鹿だったと思う。好きな子と二人っきりで周りには誰もいない僕と彼女だけの空間がいかに緊張するか分かっていなかった。案の定緊張して自分から話をするkとがなかった。でも何回も一緒に食べてると慣れてきて話せるようになってきた。屋上で彼女とご飯を食べているときは楽しかったせいか四十五分のお昼休みがカップ麺を待っている時と同じ三分に感じていいた。しかしそんな幸せは長くは続かない。放課後に屋上でタバコを吸っていた生徒がいたらしく屋上が立ち入り禁止になってしまったのだ。その後二人っきりでお昼を食べることがなく月日が経っていった。それでもLINEでは毎日くだらない話ばかりしていてとても楽しい日々だった。その後、この状況が続き、僕の高校一年目が幕を閉じた。
高校二年生編に続く