絵本と作者とキャパオーバー②
リバイス新フォーム楽しみですね
この目の前の方が藤川さん…
先日聞いた話では新作でさらなるダメージを負ったらしい
テットウさんの精神を度々ボコボコにぶっ壊し、
着々と偉業を積み重ねているらしい時の…時の?
まぁ噂の大偉業を成している人物だ。
そんな方がうちの姉に何の用だろうか…?
失礼かもしれないが、聞いてみよう。
「あの…今日は何の御用で姉を呼ばれたのですか?」
姉が大人気の絵本作家とはいえ、大人気のシナリオライター、
それも今は人気が上昇し続けているSROのシナリオライターさんが
姉を呼ぶ理由が思いつかないのだが…
私の質問に、藤川さんは少しばかり言いにくそうな顔をしていたが
すぐに教えてくれる。
「あの…私、藤野先生の作品のファンでして。
前々からお会いしたいと思っていたのですが、
海外で旅をしていらしたので会う機会がなく…」
…なんというか、とてもありがたい理由だった。
純粋にファンとして会いたい、というのは私にも分かる感情だ。
何せ姉が旅に出ている間は枕の下に姉の写真を置いて
姉の夢を見られるように念じ続けていたような生活だったので
思わずうんうん、と頷いてしまった。
「この場も、帰ってきたときに
お話しできる場を作れればな、と思い
自分の権力を最大限活用して出版社の方にコネを作って
お作りさせていただきました」
そこまで、とは私は言わない。
私が逆の立場だったら恐らく私もそうする。
というか手段がまだ足りない気がするので更にダメ押しの手段を
作って絶対に行かなければいけない状況を作るだろう。
藤川さん…意外と気が合いそうな人だ。
「…ですが、先生に無理を言ってしまったようですね…
先生が人見知りとは知らず、酷なお願いをしてしまいました…」
「そんなことは!ない、です!」
藤川さんが申し訳なさそうに言う。
それに反論するように、背後から姉の声が上がる。
復活したのだろうか、と思い振り向くが
まだ足が震えていて辛そうだ。大丈夫だろうか…?
「ファンの方のお話は聞いてみたかったですし!
自分の人見知りも、いつかは直さなくちゃいけないですし!
このような機会を頂けて、非常にありがたいです!」
「え、ぇと…」
藤川さんが困惑している。しかし、
その顔はどこか嬉しそうだ。
姉もその顔を見て安心したのか、雰囲気が自然体に近くなる。
「せっかくお呼び頂いたのに、挨拶もなく端っこでうじうじしてて
申し訳ありません。今から、という事で申し訳ありませんが
お話ししましょう、なんでもお答えしますよ」
落ち着いたらとたん大人の余裕のようなものを醸し出す姉。
その反応を受けて、藤川さんも返答する。
「いえ、もとはと言えば私のわがままが原因ですし…
こちらも失礼は承知だったのです。これでおあいこ、
という事で今後とも仲良くしていただければと思います」
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
そう言って、二人は握手を交わす。
この部屋に入ってから2、3分程度であるものの
姉の成長を目の当たりにしている私は満足げな顔をしていると思う。
「えっと…藤野先生には申し訳ないのですが、
妹の永華さん。一緒にちょっと外でお話しできませんか?
3分くらいで終わるので」
藤川さんが私に聞く。なぜだろうか?
しかし断る理由もないし、了承しておこう。
「?はい、いいですけど…お姉ちゃんもいい?」
一応姉にも聞いておこう。
今回の主役は姉なのだ。
「大丈夫だよ、そもそもメインの用事は終わったから
予定はないし。藤川さんも、私はいくらでも待つので大丈夫ですよ」
姉の了承を得た藤川さんが姉に向かってお辞儀する。
「ありがとうございます。では、妹さん行きましょう」
そう言うと、藤川さんは速足で扉を開け
私に手招きする。
直感で察した。
私は部屋を出て藤川さんと速足で部屋から離れた。
休憩所のようなところで私たちは立ち止まり、藤川さんが口を開く。
「妹さん、なんとなくですが…私の言おうとしていることは、
分かりますか?」
「…なんとなくですが。とりあえず、合ってなかったら申し訳ないので
せーので、お互いの思ってること言ってみましょう」
「そうですね。それがいい気がします」
早口で会話を進め、呼吸を整える。
そして私が口に出す。
「では、私に合わせてください。せーの」
「「お姉ちゃん(藤野先生)可愛すぎないですか???」」
発言してから数秒。お互いの顔を見つめ合ってから、
私たちは熱い抱擁を交わす。
もはや言葉はいらない。私たちは、十年来の友達のように
通じ合ったのだった。
最凶タッグ、結成。この後連絡先も交換したようです
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