今は亡き竜王に花束を⑫
詫び三話目ェ!
そんな時、テットウさんが叫ぶ。
「おい、ちょっとHP減ってんぞ!?
何が原因だ!?」
テットウさんの言う通り、シテイオウのHPを見てみる。
シテイオウ Lv68 HP□■■■■■■■■(不死状態)
「テットウ!?お前が把握してなくてどうする!!
メインで攻撃してんのお前なんだぞ!?」
「分かってんだよそんなの!でも消費アイテムバンバン使いすぎて
どれが効果あったのかわからねぇんだよ!!」
「直近で使った奴試せ!そうすりゃ絞れるだろ!?」
「了解したぁ!」
ライカさんの指示を受け、テットウさんが攻撃を再開する。
私も考える。不死状態は変わっていない。つまり、
今まで攻撃が効いていなかったのは不死状態が原因ではない?
ならば、どこかにダメージを負わない原因があったのだろうか。
何かヒントはないかと、シテイオウを観察する。
見た目はどこも最初と変わっていない。しかし、テットウさんの攻撃で
非常に緩やかとはいえHPが減り始めた。
さっき攻撃が効かなかったのは何故だろうか?
時間で攻撃が効くのか、それとも、特定の攻撃だけが効くのか。
それとも、何らかの行動をとることで攻撃が入るようになったのだろうか?
この中で一番可能性が高いのは特定行動をとるとシテイオウに
攻撃が通るようになる、だろうか。指輪を取り出してから
シテイオウの動きがおかしくなった。
シテイオウはやはり、王たちの死体から出来たのだろうか?
指輪を取り戻そうとする意図は分からない。
…というか、よく考えてみたらあの指輪を結婚指輪と考えるならば
もう片方はどこにあるのだろうか?
シテイオウを見る。シテイオウの手は人型ベースだから二本だ。
しかし…どちらの手にも指輪はしていない。
つまり、シテイオウは指輪を持っていないと考えられる。
つまり、あの指輪は結婚指輪ではないのだろうか?
あの部屋に指輪があった、というミスリードなのだろうか?
「おっし、半分くらい減った!さっきまでの状況とは違って優勢だな!」
「最初はどうなるか不安だったが、何とかなりそうだな…
今回はクリアできないかもしれないと思ったが、大丈夫そうだな!」
そんなこんなで考えている内に、シテイオウのHPは半分程度減っていた。
このまま押し切ろうと、ライカさんたちは攻撃の手を強めていく。
攻撃はもうすでに見切っているのか、危ないと場面はあるが
スレスレで躱すことができている。
そして、シテイオウのHPがついに半分を切る。
シテイオウ Lv68 HP□□□□□■■■■(不死状態)
「◆◆■◆◆◆◆…」
シテイオウはHPが半分になった瞬間、攻撃を中止し
何かを貯めるような動作をし始める。
「…!!やばそうだ、早く決めろテットウ!」
「分かってる!こいつはくらっちゃいけねぇ感じの攻撃だろ!?
速攻で中断させて…!?」
しかし、シテイオウは溜めの動作を終わらせ、行動に移る。
翼は消え、継ぎ接ぎのような体は形を変え、
四人の人型に変化する。
シテイオウ Lv68 HP□□□□□■■■■(分裂状態)
HPの量に変化はない。そして不死状態も消えている。
しかし、さっきまで継ぎ接ぎだった体は分かれ、
四人の王の姿そのままになっている。
「勝負」
「なっ…っくう!?」
ライカさんやテットウ、ミソラとファルに向かって
一人ずつ攻撃を仕掛けてきた。さっきのような声にならない声
ではなく、しっかりと会話ができるようだ。
「くっ…!!こいつら、さっきよりも強え…!!」
「こっちも手一杯だ、各自で対処してくれ!」
「ふぁ!?また?怖い怖い!この子的確に急所狙ってくるぅ!?」
「頑張りましょうグリム!私は手を貸せないので一人で頑張ってください!」
「うぁーん!?ファルちゃんが辛辣だよ!!?」
さっきまでの口調が崩れ、弱気な口調になるグリム。
しかし、攻撃をしっかりと回避して反撃しているのを見ると
ある程度余裕はあるのかもしれない。
「グリム!大丈夫、危なそうなときは私も手を貸すよ!」
「あぁああありがとうミソラ!助かる!」
グリムの方にミソラも加勢し、再び戦況が安定する。
私はみんなのHPを見ながら、危なそうになったら
回復アイテムを投げる。
「くっそ!?またダメージが入らねぇ!
さっき効いた攻撃もまた効かなくなっていやがる!」
「くっ、こっちも同じだ!どうしてまた通らなくなったんだ!?」
また、HPの減りが止まったらしい。
つまり、不死状態がダメージを負わないことには関係していなかったという事だ。
つまり、HPの減少の条件を突き止めなければいけない。
そんな時、いきなり後ろから声が聞こえる。
「答えて」
後ろから声が聞こえる。
誰だ…?四人の王はライカさんたちと戦っている。
この場にはライカさんとテットウさん、私にグリム、ファルにミソラ
そしてシテイオウしかいないはずだ。しかし、後ろから声が聞こえる。
この声は誰のものだ?
「貴女は見た。あなたは知った。ならば答える必要がある。
貴女は、どう答える?」
頭が混乱でうまく回らない。
え、この質問の仕方を考えるとあの人…だよね?
でも見た感じシテイオウの方にもあの人らしき奴もいる。
そんな混乱を察したのか、声は答える。
「あのうち一人は師匠。師匠が頑張って私だけ逃がしてくれた。
そして、貴女たちのような存在を待っていた。
あの忌まわしい奴が作った、私の大事な人たちの亡骸
を使った化け物を追い詰められるような存在を」
情報量が多すぎる。
私にどうしろと?そもそも相当昔の人なのに何で生きてるの?
「私は死んでないだけ。もうあの頃みたいな力は使えない。
だから、答えてほしい。私が残したあの記録の最後の質問に。
そうすれば私はあなたに力を貸せる」
どういうことだろうか、分からない。分からないことばかりだ。
でも、言われたとおりにあの質問に対する答えを、
記録を見終わった瞬間に思った答えを言う。
「正しいと思う」
「それはなぜ?」
「豪商たちは相当な根回しをしていただろうし、
豪商たちだけじゃなく何か大きな何かが動いていたかもしれない。
子供たちを守るためにできることはあれしかなかったと思う。
敵が相当上手だった。こっちの準備が間に合わなかった。
つまり、あの状況での判断と言えば間違いじゃない」
「でも、私たちは師匠を犠牲にした」
「貴方が生きているなら、それもわかるはず。
貴女の師匠はそれを恨んではいない」
「…そっか」
言葉を噛みしめるように、数秒の沈黙が訪れる。
そして、また話し始める。
「これで、託せる。私は答えを得た。
最後の質問。貴女は、力が欲しい?」
「欲しい。流石にこんな状況で役立たずなのは嫌だ。
みんなが頑張ってくれたのに、勝てないのは嫌だ」
「いいよ。あげる!さぁ、逆転の時間だよ!」
高揚したような声が聞こえ、不思議な感覚が体を包む。
「私、ヒルデの意志は紡がれた。我が悠久の問いの答えは得た。
継承者の同意は得た!ならば、我が力、存分に使うがいい!
【魔導伝承:竜姫】!」
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