今は亡き竜王に花束を①
結構長くなったな…
(久々の2000字越え)
「ギュィ!グゲゲェ!」
イベントマップに出て、城に向かって進んでいたのだが、
進み始めてすぐ、敵が出てきた。
「見たことない奴だな…警戒して戦うぞ」
ライカが言う。
ライカが言う通り、町の近くでは見たことがない
2~3mくらいの動く石像のような敵だ。
「数がいたら厄介かもしれないが…
まだ一体しか見えない。仲間を呼ぶかもしれないし
まだ一体の内に倒そう」
「おう!俺のハンマーが火を噴くぜ!」
「あぁ、頼んだ」
テットウが自分の武器を構えて、
そのまま突っ込んでいく。
「おりゃぁ!そのまま倒れろ、【ブレイク】!」
スキル名らしきものを叫び、ハンマーで敵をぶっ叩く。
スキルの効果なのか、かなり強そうなエフェクトが飛び散る。
攻撃がかなり効いたのか、石像の動きがいったん止まり
石像が苦痛の声を上げる。
「グギィ!?ギャギィァァァァァ!」
石像がテットウに向かって攻撃を仕掛けようとする。
しかし、テットウは攻撃を避けようとはせず、
武器を構える。
「効くかよ!【フロントインパクト】!」
「ゲギャッ!?」
テットウの持っているハンマーにさっきとは違うエフェクトが入り、
石像の攻撃をはじき返す。さっきの攻撃のダメージがまだ残っているようで
石像は立っていられずに倒れる。
「トドメだ、オラァ!」
テットウは勢い良くハンマーを振り下ろす。
それが決定打となったようで、石像のHPはゼロになり
戦闘終了のリザルトが発生する。
リザルト
経験値
格上(Lvが10Lv以上離れている)との戦闘を行う
合計 250
獲得アイテム
石像の欠片
ただ見ていただけだったので、
経験値は少なめだ。この辺の経験値の事情は
ファルたちとのレベリングの時に把握している。
「おう、テットウ。ナイスファイト」
「おう!あいつはそんなに強くなさそうだな。
ちゃんとイベントに向けてレベル上げしてたから
この程度ならサクサク行けそうだな」
「あぁ。だが油断するなよ、
このゲームの運営は性格が悪い。
序盤はサクサク進めるように設定してるっぽいが、
このイベントには背景ストーリーがあるってことを考えると
序盤に何か隠し要素がある可能性も否めない」
考えすぎだと思う。確かにこのゲームの製作陣の性格は悪いと思うが。
「おいおい…ずいぶん弱気じゃねぇか、らしくねぇなぁ」
やはりテットウもそう思うようだ。
しかし、ライカの顔は晴れない。
「お前…このゲームの背景ストーリー担当
誰だか知ってるのか?」
「ん?いやぁ、知らんな。
なんでもすげぇ大物がやってるってことくらいしか知らない」
ライカは深刻そうな顔をして言う。
「…このゲームのストーリー担当は藤川夜歩だ」
「ん?どっかで聞いたことがある気が…」
私も聞いたことがある。
確か兄の話では…
「お前が知ってるゲームで説明するなら、
クロオン、シザキル、シャバゾー…」
『作者の人格を疑うような鬱シナリオを量産するシナリオライター』
だっただろうか。
「わかった、すまねぇ俺が悪かった頼むからその名前を出さないでくれ
トラウマがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
急に叫んだと思ったら、その場に蹲るテットウ。
顔はよく見えないが、ぼそぼそと聞こえる
「すまねぇミーちゃん…許してくれ…許してくれ…」
「なんでだよ…なんで確定で殺す相手に感情移入するような描写入れんだよ
人の心がないのかよ…」
という独り言を聞いている限りでは正常な状態ではないだろう。
「だから言いたくなかったんだよ…
お前がこうなるのは分かりきってたからな」
「うぅ…うぅ…」
ふらふらと立ち上がるテットウ。
さっきの石像と戦った時の元気さはもうない。
「お前がそうしてるのは勝手だ。
けどよ、その場合誰が戦うと思う?」
「お前だろ?」
「いや、このゲームの難易度を考えると
俺だけじゃ対抗できないだろう。
フジカのできることはさっき話してもらったが、
やっぱりフジカが初心者ってことを考えると
無理がある部分が出てくるだろう」
「……………」
「そんな時、お前がお荷物じゃダメだろう。
このゲームのモンスターに積まれてるAIを考えみろ。
お前狙いで攻撃してきて、体制が乱れたらもう終わりの状況も
あり得るんだ、何とか頑張ってくれ」
「あぁ…そうだな。よくよく考えてみたらもう終わった話だ。
今更蒸し返しても遅いしな」
それに、とテットウがさらに付け加える。
「俺たちだけでやってるならここで小一時間くらい
愚痴を言い合うような状況になってたが、
今はお嬢ちゃんがいるからな…なんとか頑張るぜ」
「おう。このイベントが終わったら愚痴くらい
いくらでも聞いてやるから、今は胸張って攻略してやろうぜ!」
「おう!」
どうやら完全に立ち直ったようだ。
よかったよかった。
「おし、済まねぇな、お嬢ちゃん。
みっともねぇ姿を見せちまったな…
もう大丈夫だ、進もうぜ」
「はい!頑張りましょう!」
こうしてひと悶着あったものの、
私たちは先に進むのだった。
テットウの戦闘スタイルは基本的にパワーでゴリ押すスタイルです。
今回も使っていましたが、基本的な武器はハンマーで
何もバフを付けないような攻撃でもかなりの攻撃力となります。
(スキルでの補正も入れた場合、同レベルのプレイヤーの中でも
相当高い火力となります)
ハンマー以外にも使える武器はありますが、
基本的にはハンマーが一番扱いやすく、慣れているといった感じです。
そして、藤川夜歩、及びライカの言ったゲームについて。
藤川夜歩は最近勢い付いてきた新人のシナリオライターです。
ライカやお兄ちゃんの話の通り、読んだ人間の心を徹底的に
へし折るようなシナリオを得意としています。
しかし、それだけならば鬱シナリオを描くヤベェ奴、という評価です。
藤川が評価されている点はそこではなく、そこに至るまでの
葛藤の描写の緻密さ、及びシナリオを進めるに内に出てくる謎や疑問に対して
完璧な回答を返し切り、疑問などを残さないような完璧なシナリオ構成など
鬱シナリオを書く、それ以外は完璧なシナリオライターです。
本人の話によれば、救いは存在するそうなのですが…
現在、苦痛に耐えながら藤川シナリオのゲームを周回中の考察勢でも
「救いってドコ…?ココ…?」とあまりの苦痛に人の心を失って
いる様子を見る以上、それを信じる人間はいません。
しかし一説には「著しく諦めの悪い人間にしか見ることの叶わない
超極悪隠しエンディングが存在する」との噂が。
以下、藤川シナリオのゲーム。
モノクロームオンステージ(通称クロオン)
藤川の記念すべきデビュー作。
視界がモノクロの主人公がトップアイドルになるために頑張る物語。
かなり大きなゲーム会社が作成しており、
藤川が新人だったこともあり、藤川の実力が疑問視されていましたが
実際にリリースされ、プレイし始める人が出始めると
評価は一転、藤川のシナリオ構成に対し絶賛すると同時に、
物語の救いのなさに絶望する人が多発します。
(他二つは、あとがきが長くなってきたので次回に説明します)
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