閑話:夏休み旅行⑱
連続投稿期間です。
ここ数日投稿が遅くて申し訳ありません。
今朝早朝に住んでる地域で地震があって
めっちゃ寝不足だったのが遅れた原因です。
少し歩いて、なんだか店内が森っぽい装飾で飾り付けられた
お店の前で私たちはライカさんと話していた。
「それでなー、ここが妖姫の遊林ってエリアを
モチーフにした期間限定のグッズショップがなんだよ。
んでそこにある…あるはずだった草竜の赤子ってモンスターの
ぬいぐるみがほしかった、ほしかったのに…」
店頭に掲示された商品在庫を示す電子式の在庫表には
確かに夏樹さんの話している商品の名前があった、が。
「無くなってますね、きれいさっぱり…」
「草竜ってめっちゃ可愛い竜の赤ちゃんだよね。
なんか攻略サイトを覗いたらたまたま好きなモンスター
ランキングみたいなのがやってて、可愛さ部門トップ10
みたいなの取ってたやつ」
「そうだよ、朝早くから並ぶつもりだったのに!
姉さんが色々したせいでパアだよパア!うぅぅぅぅ…!
おとなしく通販で届くのを一週間待てってのか!?」
「二個目を買うつもりだったんですか…?」
「いや四つ目だ!!」
「買い過ぎでは!?そういうのって
いいとこ三つじゃないんですか、男の僕が言うのもなんですが!」
「うるせえ欲しいもんは欲しいの!四つ集めたら
凄く良いことが起こるの!」
夏樹さんが四つと答えると、まーさんが驚きのあまりそう返し
それに対して子供のようにムキになって夏樹さんは
よく分からない理論を振りかざす。
「よっつ…四葉のクローバーみたいなものでしょうか」
「どうなんだろうねえ…なんとなく幸運の数字って七つの
方が多い気がするんだけど」
「定義にもよるのではないでしょうか。8は横に倒したら無限、
尽きることのないものとなるから幸運の数字…という話を
今調べました」
「それの根拠どこさ…いやまあそもそも数字に
幸運も何もないと思うけど」
アオイちゃんたちと灯夜さんたちが夏樹さんの理論に対して
大真面目に話しているが、しかしこれそんなに
深く考えるようなことだろうか…?
「むぅぅぅぅ…!ほんとに、本当に欲しかったのに…!」
「さっきから思ってたんですがゲーム内と
キャラ違い過ぎません…?」
「あっちでは理想のキャラ演じてるの!したいようにするの!
というかぬいぐるみが好きで何が悪いんだ言ってみろ!!」
「すみません、そういう意図はないんです。
なるほど…そういう楽しみ方だったんですね、いいと思います」
「なんでそんなに切り替え早いのさえーさん」
「だってそこまで掘り下げることでもないし…
人の好みってそれぞれだから馬鹿にするものでもなくない?」
「そっかぁ…お姉さんが好きなえーさんが言うと重みが違うね」
それにしてもそういうことだったのか…口調とか色々違う気がしたが
ゲーム内だからゲーム内の自分を演じていた、という事なのか。
確かに声を作っていると言っていたしそういう楽しみ方も
あるのだろう、演劇のようで楽しいのかもしれない。
「ん…?」
そんな話をしていると、不意に違和感に気付く。
あれ、在庫表の上の方に何か書いてあるな…?
私の身長が少し低いがために見辛かったが…とりあえず、
頑張って背伸びして読んでみる。
「『ステラドールをご購入済みのお客様には棚以外の在庫から
ぬいぐるみを台数に応じて一つお好きなものをプレゼント?』」
「…そんな高級品、俺が持ってるわけ」
そう言いかけて夏樹さんは私の後ろにいるファルたちを見ると、
私に対して手を合わせて真剣な瞳でお願いしてくる。
「…通販で届いた奴をあげるから
貰えるか聞いてきてもらっていいか?」
「いいですよ、聞くだけならタダですし…
ほしいのならタダであげますよ」
「それは本当に申し訳ないし向日葵姉さんの問題も解決してもらった
手前それはできねえ…というか本当に今日ずっと悪いことしてるな俺…」
夏樹さんは先ほどからずっと自分たちの事情に
巻き込んでしまったのを悔やんでいるが…別に悪い人ではないことは
私もよく知っているし、私の方が変な人や物事に出会うことが多いので
今回もそういう物事の一つだったというだけだし
気にすることではないと思う。
「いいんですよ、ゲーム内とはいえもう一年ちょっとの付き合いですよ?
それにトカゲ共の話を教えてくれて私もありがたかったですし」
「あれ俺としては個人的に失敗だったと思ってるんだが…
いやまあ、そこまで言ってくれるなら頼む。
だけど一週間後に届いた奴はお前にやるよ、そこだけは譲れねえ」
「素直じゃないなぁ夏樹、素直にありがとうっていべげ」
「お前は黙れ、本当に黙れ、便所行くって言って嘘ついて
他の店で買い物してた裏切り者は本当に黙れ」
うっかりとそう口を漏らした灯夜さんは顔面をがっしりと掴まれ
メリメリと音がするようなすごい力を入れられる。
どうやら私たちを待っている間トイレからこっそり抜け出して
自分の買い物をしていたらしく、それに対してライカさんは相当に
怒っているらしい…が、私としてはトイレからどうやって
抜け出しているかが気になる。
なんで二人ともトイレの鍵を一定時間経過で
開くように細工で来ているんだろうか、というか小さな窓とかから
あの体の大きさでどう脱出しているんだろう…大学生の間で
そういうことが出来るようになる特殊な技術でも
出回っているのだろうか?
「ごめんんんんん…!本当に時間ぎりぎりだったんだよぉぉ…!!」
「じゃあ俺は犠牲になっていいってのか!!
畜生、俺の精神的な健康と3621円返せ!」
「だから金銭については色々話し合いで解決したじゃないか
いだだだだだだだ!!!!」
「うるせえ!!!」
…先程までの状態に比べたら平和、なのだろうか?
間違いなく灯夜さんの顔は現在進行形でダメージを
負ってはいるが、夏樹さんの笑顔は戻っていることを見るに
まぁ、いいのかもしれない。
「いててたたすけて、助けて藤野ちゃん!!」
「うるせえてめえは今日俺の財布だよ!!
財布が意思を持つな!!」
「いででえええええ!!!」
「それ以上は辞めてあげてください!!骨がミシミシ
言ってるから怖いんですよ、それ以上はまずいですよ
夏樹さん!!」
「うるせえオーマ!中二ネームにゃ言われたかねえ!!」
「おーさん…普通にそれは悪手だよ…」
「じゃあどうすればよかったっていうんですか福音さん!?」
テットウさんは断末魔のような叫び声を上げ、
それに対して他のみんなが慌てて止めに入りつつ
私はそれでいいかとお店の中に入り、店員さんへ話を聞く。
…というか私が話をしても特に聞いてもらえる気がしないので
先にぬいぐるみを得てそれを渡し落ち着いてもらおうという
算段でもある。
「すみません、ステラドール用の在庫ってまだありますか?」
「…ございますが、ひとまずお連れ様を店前から
移動させていただいてもよろしいでしょうか、
場合によってはこちらから営業妨害で訴えさせていただきます」
「…分かりました」
余談だが、その後しばらくしてなんとか灯夜さんは解放されたが
夏樹さんの機嫌は直らず、発言の通り灯夜さんは夏樹さんの
財布にされていたことをここに書き記しておく。
ライカさんはぬいぐるみが好き、
あと名前を付けるタイプ。
誤字脱字あれば報告お願いします。




