閑話:夏休み旅行②
連続投稿期間です。
前回に引き続き旅行関連のお話、
事前準備に関するお話です
「はいみんなー、こっちきてー」
私は姉が出かけている隙を狙い
事前にみんなへ話を進めていくことにする。
そのために、リビングでみんなのことを呼ぶと
ファル、ミソラ、アオイちゃん、グリムの順番で
こちらへ寄ってくる。
「どうかしましたか?」
「はいはーい、とりあえず来たよー」
「どうしましたかえーさんさま!」
「全員一気に呼ぶなんて珍しいね?
何か面白いことでもあるのかな」
みんなが話を聞ける態勢になったのを確認し
私はみんなへ計画を話始める。
「まー、みんなが外に出られるようになったから
そのお祝いもかねてみんなを連れて
旅行に行きたいと思います」
「え、どこですかどこですか!?
海ですかね、ご主人様の水着見たいです!!」
旅行と聞いてテンションを三段階は跳ね上げた
ファルはそう言って興奮した表情でこちらを見る。
うーん、どうだろう?短い旅行の予定だし…
「はーいファルちょっと落ち着いてね、
あと機械に潮風は毒…いやまぁある程度は大丈夫だって
言ってたけど海水浴とかは行かないし水着は着ないよ。
場所的に海は見えるかもしれないけど」
「えぇ~…」
目に見えてファルのテンションが下がる。
それを見たグリムが肩をポンポンとたたき、
囁くようにファルヘ助言する。
「まーまー、温泉とかあるかもよ?
浴衣とかも楽しそうじゃないー?」
「…!流石グリム、天才です!私はそっちを楽しみにします!」
三段階上がってから少し下がったテンションが
もう一度上がったようだが…うーん、こっちもどうだろ?
「…うーん、どうなるかなぁ。割と短い期間にはなるし、
泊まる所もそういうのあるかなぁ…」
「…ぐりむのばか、むだなきぼうをつかまされました。
おぼれるものはわらをもつかむとはこのことですか…」
ファルはグリムに励まされる前よりも
さらにテンションを下げて床と一体化し始める。
なんで悔しがる時だけ語彙が豊富なんだ…
「…かもしれない、の話でここまで
罵倒されるの初めてかもしれない」
「グリム様、大丈夫ですか…?
ファル様もそこまで気を落とさなくても」
アオイちゃんが落ち込んでいる二人を励ましにかかるが…
しかし、ここで止まっていては話が進まないので
私は声を張り上げて話を続ける。
「…とりあえず話を戻すけど。
とりあえずこの旅行は姉さんも行くし、
私のお母さんもお父さんも…一応兄も来るの。
移動手段は車で、まぁお父さんが運転するんだけど…」
「隣に乗りたいです!!!
ごしゅっ、永華の隣に乗りたいです!!」
「どうどう、落ち着いて。その辺の話もするから…」
復活と蘇生があまりに早い。
そういうところがファルのいい所ではあるが…
「…ともかくね、うちの車はチエちゃんとか
親戚の人が一緒に乗ったりすることがあるから
それなりに大きいんだけど…それはそれとして定員があるんだよ」
具体的には八人で、私、姉、兄、母、父、チエちゃんの
六人、残りの枠は二人分だ。枠に入れなかった残りの三人は…
「…だから、移動時に眠ってもらって格納モードで
移動する面子を決めておきたい…ってことだね」
「…グリムの言った通り、さすがに狭いからね。
収納だったり先に荷物を送っておくとかはできるから
みんなの体を持っていくことはできるけど、
流石に移動中もみんなをそのまま連れていくことは出来なくて」
「はいはいはーい!!私は乗りたいです、隣に!!」
「はいちょっと待ってね!みんなには今から
トランプでババ抜きして乗る人を決めてもらいます!!」
これ以上話を聞き続けると
次に発言できるタイミングがいつになるかわからないので
私は何か言われる前に結論を言う。
「う~ん、私は別にいいなー。
格納モードって奴の時どんな気分かが気になるし」
「それはそれでいいけど…まぁ他の人を指定できる権利を
あげるからそれでお願い」
「りょーかーい。ま、気楽にやらせてもらうよー
トランプちょーだい、シャッフルするから」
「…負けません、今度こそはミソラに負けません!!」
「わぁ~、前ファルさまたちがやってたゲームですよね?
私もやらせてもらえるんですか!?」
「うんうん。一緒に勝とうねアオイちゃん」
「ミソラさま!はい、私も頑張ります!」
それから四人の、ババ抜きでの真剣勝負が始まった。
◆◆◆◆◆◆◆
「あ、勝った」
「なんでそんなことするんですかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ぺちりとトランプが机に当たるいい音が響き、
トランプの勝者が決定する。
「おめでとーグリム。アオイちゃんもよかったねぇ」
「はい!おめでとうございますグリムさま、
ミソラさまもお褒め頂きありがとうございます!」
一番目に上がったのはアオイちゃん。
初めの手札が全部ペアだったので
防ぎようのない勝ちだった…あれ、前回もミソラが
同じような勝ち方をしていたのだが…うん、深く考えるのは
辞めておこう、普通に二人とも滅茶苦茶運がいいのだ。
そこから三人で普通にババ抜きをしていたのだが、
そこでグリムが勝ったのだ。
「うぐぐぐぐぐぐ…!譲ってくださいグリム、
先程乗らなくてもいいと言っていたでしょう…!」
「えー?ミソラの方に上げようかと思ってたんだけど。
アオイちゃんと約束してたし…」
「ふ、ファルさまにあげてもいいと思うんですが…!」
「そうですよ!ミソラも最近ご主人様に
かまってもらってばっかりなんですから私にください!」
と、グリムに乗る権利を譲ってもらおうと
鬼気迫る表情で迫っているファルをいつ止めようかと
考えながら見守っていると、突然私の携帯が鳴る。
「…あれ。藤川さんは、違うし。
不破さんも違う…誰だろ」
二人とも突然電話する人じゃないので
誰だろう、ふーさんとかだろうか…?
それとも姉だろうか、何か良くないことが起こったのか?
私は一旦確認すべきと携帯の画面を除くと…
「…げ、兄か」
しかし最近はまぁ、まぁ…まともになってきていて
ちゃんとした連絡の時以外は電話しては来ないのだが、
体に染みついた嫌悪感はまだ消えてはくれない。
とりあえず応答のボタンを押し、電話に出る。
『もしもし、お兄ちゃんだ。今時間は大丈夫か?』
「はいはい。大丈夫ですよ、何でしょうか兄さん?」
「今度の旅行についての話なんだが」
…?旅行については家族でグループSNSで詳細が
張られていて情報については抜けがなかったはずだが…
「お前、SROの召喚獣というか…ステラドールの皆さんを
連れてくる予定なんだろ?母さんたちから聞いたんだが」
「え、うん…それがどうかしたの?」
問題ないという話を聞いていたのだが、
何か不都合があったのだろうか?
「俺が運転免許持ってるのは知ってるだろ?」
「うん、事前に相談してくれれば
送ってくれるって言われたのは覚えてるけど…」
「俺が車買ったから全員送ってくよ。
何ならデカめの車だから幼馴染の二人も呼んでいいぞ」
「え?車って、あれ…場所あるの?」
うちの敷地は田舎ではあるが別に特段広いわけではないため
二台目の車を止める場所はなかったはずだが…
「いや、俺も姉貴と似たような感じでな。
モデル業とかで服の置き場とか色々欲しかったから
真たちと金出しあって家買ってシェアハウス始めたんだよ」
「へぇ…真さんたちと。
…あれ、命さんたちも一緒ってこと…?」
「まぁな、気心知れた仲だから問題は…
まぁ洗濯とかの順番くらいだが」
「へぇ~兄さんがそんなことを」
「ま、そういうことだから…
とりあえず全員乗せられるくらいは
大丈夫だからよ、よろしくな」
「うん、分かった」
そう言い残して兄は通話を切る。
兄としてはなんともまともな話で
むず痒い感覚が体の中を駆け巡るが…
まぁ、なんとも嬉しい話だ。
早速今争っている二人に話を通して…
この話をみんなにしようと思って、みんなの方を見ると。
「はぁー…!はぁ~…!何とかなったねミソラ…」
「流石にね、流石にちょっと無法が過ぎたよね…」
電源を着られたファルがソファに倒れこんでいた…
どうやら私が電話している間に一騒動あったようだ。
「…ご主人、とりあえず。話があるかもしれないけど、
一旦休ませて…」
「あ、うん…分かった」
トランプ勝負が何の意味もなくなってしまったが…
とりあえず、隣に座るのはグリムとアオイちゃんという
事にした方がいいのかもしれないと、目の前に
広がる惨事を見て私は思った。
流石に勝者の権利を譲渡できるというのは
いらぬ争いを産むという事を、私は今回の一件で学び
今度からはそういう事はできないようにしよう…と
ファルを再起動させつつ固く誓うのだった。
お兄ちゃんは今永命真道日記のメンバー
とシェアハウスしています、ラブコメ展開は…
今のところない模様
誤字脱字あれば報告お願いします。




