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閑話:俺と灯夜の大作戦

連続投稿期間です。

正直ナンバリングをつけるか迷っていますが

明日次第だと思います、明日ナンバリングがついていたら

明日の話は今日の続きです。

ライカさんとテットウさんのお姉さんのお話

手慣れた手つきでSROの端末を外し、

急いで灯夜との通話を繋ぐ。


「おい、確認できたか!?」


『…本当に来てる、嘘ついてるとは

 思ってなかったけどごめん、マジでごめん…!」


普段のアイツから異様なまでに

かけ離れた弱々しい声を上げて謝って来たが…

今は時間が惜しい、早く対処しなければ…!


明星あけぼし兄さんの誕生日に関する用意で

 流用出来そうなやつは…ないな、多分そうだろ!?」


『当然だろ、二人とも仲悪いし趣味も真逆なんだから!』


明星兄さんと灯夜の姉…向日葵姉さんとは

私が3歳、二人は6歳の頃に知り合ったのだが

その頃から滅茶苦茶仲が悪かった…


何故か私たちに対しては基本優しいので二人とも

もう一方に対して年上ぶろうとして

幼い私たちに見せる好きな動画チャンネルの

決定権を取り合ったり、お菓子は二人の味の好みが

正反対なために半分ずつ私達が食べるから争いは少ないが

それ以外でも数多の喧嘩を経て兄弟仲は最悪になっていて

争いを避けるために二人のどちらが兄か姉かは両親が

秘匿するくらいには仲が悪い。



「…ぐ、あれだ!俺が何とか飾りつけは用意する!

 お前はプレゼントを用意しろ、一応貯蓄あるだろ

 姉専用の非常資金!」


『…時間が惜しい、とりあえず行き先で

 プレゼントは考える!後で相談乗って、

 あ、そうだ…!姉から情報聞き出しておいて!』


「ったりめぇよ、もう聞き出してあるわ!

 姉さんのご所望品は○○ブランドの化粧品、

 俺は化粧水買ったからお前はリップ買え!」


『了解した!』


その一言を最後に奴は通話を切り、恐らく

外出して近くの○○ブランドの打っているお店へ向かったのだろう。


とりあえず数日前にDMへ向日葵姉さんからの

連絡が飛んできて焦り散らかしてそれなりに高めの方を

買ってしまったのであいつの方が買うものが安いのが

滅茶苦茶不満だが、向日葵姉さんへの対応をトチれば

私にも被害は飛ぶ…あとであいつにスイーツ奢ってもらおう。

そのくらいは許されてもいいはずだ…!


帰ってくる予定の日は明日でまだまだ時間がある。

ならば、準備期間はある…!


と、自分を奮い立たせつつ

去年使った飾りを流用出来ないかと専用収納を

探し始めたのだが…突然インターフォンが鳴り響き

同時に大きな声が響く。


「こぉ~んにちわ~!お久しぶりです雷門家の皆さん!」


「…は?」


聞こえるはずのない声だ、もう一度写真に撮って

見直しを容易にしたDMのメッセージを確認するが

間違いなく日付は明日と書かれている。


「あらぁ~ひまちゃんお久しぶり、お仕事は順調?

 一人暮らしはつらくない?」


「お仕事はもう慣れたので新人パワーでどんどん仕事を

 進めてます!一人暮らしはまぁ、楽しいところもありますけど

 やっぱりとーやくんに会えないのが少し辛いですねえ…」


クソ、久々すぎて向日葵姉さんの灯夜好きを舐めていた!

しかし不幸中の幸いか、アイツは姉に捕捉されることなく

買い物に出かけることが出来たらしい…それだけは唯一の救いだ。


「あらあら、相変わらず灯夜くん大好きねえ」


「ええ!自慢の弟ですもん、

 今は家にいなかったみたいですからちょっと

 夏樹ちゃんに会いに来ました」


はぁ!?目的は俺かよ…!!

俺は即座にSNSのDMを直接確認し

連絡が届いていないかを確認するが…

特に変わりなし、どうやら思い付きの突発的な

行動であることは間違いない…よし、まだマシ。


「あらうれしいわね~。夏樹は上にいるわ、

 多分まだゲームしてるんじゃないかしら?

 SRO?だか言う話題のゲームをやってるみたい」


「大丈夫ですよ~、終わるまで待ちますから」


逃げ道が一つ消滅した、

これで耐久作戦の意味はなくなった…

チクショウ!こっちの思考はお見通しってか!


「うちの子と仲良くしてくれてうれしいわね~!

 あ、これ持ってって。今年の夏も熱いし起きてたら

 二人で食べちゃって!溶けてもジュースとして飲めるから

 大丈夫よ~」


「ありがとうございます!それじゃあ行ってきますね」


階段を上ってくる音が聞こえる。

時間はない、何とかうまい事対応しないと

俺の身が危ない…!考えろ、考えろ!


がちゃり、と俺の部屋のドアが開かれる。


「久しぶり~夏樹ちゃん。元気だった?」


「お、ぁはい…まぁ、そちらもお元気そうで何よりです」


「つれないね~?久しぶりだからって遠慮することないよ?

 私も遠慮しないし…」


持ってきていたアイスと麦茶に二人分のコップが乗ったお盆を

部屋の中央にあるテーブルに置いて私と距離を詰めてくる。


「積もる話もあるしお話しましょ?」


灯夜を生贄に逃げ出したくなったが

そんなことをすれば向日葵姉さんの好感度は急降下、

私の寿命も減少する事は間違いない…しっかりとした

対応を心掛けるしかない。


「だんまり?あぁ、特に話題がないのかしら。

 それじゃあまずは私から聞くね…」


「あ、ご、めんなさい…ちょっと、久しぶりなので

 何から話せばいいかと」


「ああ、なるほど確かにそうだね。

 じゃあまず私が聞きたいことから聞くね?

 …話を遮らないで欲しいな」


「すみません」


あっぶね、そういえば話を遮ってはいけないと

中学時代は己に誓っていたではないか…!

微妙に好感度が下がる感覚を肌で感じながら、

向日葵姉さんの質問を待つ。

 

「うん、まぁいつものだけど。

 あの子に彼女とか…異性関係の友達はできた?」


「っぁ…ちょっと待ってくださいね」


「…いるの?いないの?はっきりしてよ」


クッソミナトの野郎色目使いやがって…!

断言できない、そして俺がこれに言いよどめば…


「その感じ、いるね、いるんだね?

 でもその表情から見るに相手側の横恋慕?

 ああダメだよそういう輩は分からせてやらなきゃ…

 二人は将来結婚するんだろうから」


「…善処は、してます」


言葉を慎重に選ぶ。

対処はしてないわけではない、相手が俺より

女子力(魅力、財力、家事技能、謀略等を包括した力)が

上なのだ。流石にそれは向日葵姉さんも理解しているはず…


「うんうんわかるよ。夏樹ちゃんは優しいし

 とーやくんもそーいうの鈍いからね…お相手を教えて?

 大丈夫、前みたいに大事にはしないからさぁ…」


この人の言葉は何一つ信用してはいけない…

何が前みたいにしない、だ。そんな話を無理やり

私から聞き出したり、自分で調べ上げたりした末に

何度灯夜の女友達を圧倒的な女子力で潰してきたか…

俺は他の誰よりも詳しく知っている。


向日葵姉さんは灯夜を溺愛している、もしかしたら

それは一人の異性としての愛の域にも至っているかもしれない。


…が、それはそれ。本人はその感情をただの家族愛という

名前付けをして、自分の信用できる相手…ここはぼかしても

仕方がないだろう、俺に灯夜と結婚させようと画策している。


そりゃあ、俺だって男の中で信用できる相手と

聞かれたら父親か灯夜の二択にはなるが…

しかし、この人の中では絶対に俺と灯夜が結婚することは

決定事項になっているように感じてしまう。


「ごめん、なさい…私が何とかしますから…」


「んー?萎縮しなくていいんだよ、前みたいに

 俺って言えばいいじゃない」


フジカにはああ言ったが、割と本気で俺は

向日葵姉さんを恐怖の象徴として見ている。


初めて凄いと思った人は向日葵姉さんで、

初めて誰よりも怖いと思ったのも向日葵姉さん。

この人に逆らってはいけないという本能は俺の体に

深く染みついている。


「じゃあ。別のお話もしよっか?

 ん~そうだなぁ~」


人差し指を適当に指揮棒のよう振り回し、

無邪気に質問の内容を考えている様子の向日葵姉さんを

見ながら俺は思う。


「(割と大真面目に、ネナベバレしてもいいから

  フジカに相談してぇ~!あいつの問題解決能力を

  今この瞬間めっちゃ頼りにしてぇ~!!)」


ここにはいない、顔も知らない相手への助力を

俺は心の底から願うのだった。

Qなんで初手の対応ミスってるの?

A予想だにしない訪問に油断していた思考で

 対応しきれるほど向日葵お姉さんは甘くないのです。

 


金原向日葵

テットウさんこと金原灯夜のお姉さん。

兄の金原明星さんとは双子の兄妹ですが滅茶苦茶

仲は悪い、顔つきも似てないし趣味も好みも全くの真逆。

分かりやすい例を出すならばお兄さんは

ご都合主義のハッピーエンドのお話を好み

救いようのないバッドエンドを嫌っているのに対し

向日葵さんは作品の構成から何から作りこまれた

たった一人のための救いを描いたメリーバッドエンドを

好み、理屈も何もなく、『突然舞い込んだ奇跡』により

全ての問題を解決するハッピーエンドを嫌います。

裏から謀略を巡らすのが非常に得意で、

今までテットウさんと仲良くなった女友達を

自分の計画に害をなさない相手を除き

すべからくテットウさんに気づかれる前に排除してきました。

そんな彼女が何故ライカさん、もとい夏樹さんを

信用しているのかは理由がありますが…まぁ、

これはまた別のお話で。

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