ライカさんと魔導伝承②
連続投稿期間です。
前回に引き続きのライカさんとテットウさんのお話、
とりあえずテットウさんは出てきますが戦闘はしません
「うー…まーた騒がしくなって来やがった」
目的地直前でライカさんがうんざりしたようにそう呟く。
また頭の中でジョーカーさんが騒ぎ出したらしい…
なかなか元気なものだ。
「…普段からお喋りなんですか?」
「いや、基本的には黙ってるんだが…
特定の罵倒とか単語に滅茶苦茶反応するんだよ、
女だの恋愛だの。考えただけでも反応してくるしよぉ…!」
「『俺は恋愛できなかったけどお前らはできるだろ、
親切心だよ親切心』…だそうです」
ファルには移動中も継続して通訳として頑張ってもらっているが
正直ジョーカーさんが割とうるさい、なんだか対応が
お節介な近所のおじいちゃんくらいなんというか…
馴れ馴れしいというか、距離感が近いというか。
「刺殺か…それともそれ以外のしょぼい死に方か…」
「ヒルデさんは何を考えてらっしゃるので?」
ヒルデさんがいきなり殺害方法について口に出し始めたので
驚いて即座にそんな言葉を返すと、ヒルデさんは
特に驚くこともなく返答する。
「彼女の死因、普通に嫉妬とか色恋沙汰で
死にそうな人柄だと思って」
「あーなるほど。人の感情の機微に疎い感じがしますし
無理心中の路線ですか…私は何らかの魔法で殺された
のかなーって読んでます、呪われるくらいですし…」
なーんだか滅茶苦茶に嫉妬を集めそうな人の好さである。
八方美人とでもいえばいいのだろうか?正直なんだか
敵に殺されたとかがイメージできない人だ…
「『失礼な!ちゃんと戦って死んだわ、呪いに関しては遺体とか
諸々があの場所に残ってたからかなのか、いつの間にか
あの場所から離れても元に戻らなくなってる』…だそうです」
私の、もといヒルデさんの発言に
そう反論するジョーカーさんだが…そういえばと
気になったことを質問してみる。
「ちなみに恋愛経験、もしくは友人関係の女性の人数はどの程度で?」
「『…ゼロだよゼロ!付き合ったことないの!
嘘ついて殺されかけたことは二回くらいあったけど…
友人関係は…まぁ親しいのは6、7人だろうかね』
だそうです」
少し間をおいてそんな返答が帰ってくる。
…なるほど、ならばこの質問の返答はどうだろう?
「ちなみに殺されそうになった人とはその後どのような関係に?」
「『暗殺依頼した雇い主ボコして友達になった。
スキンシップ多い気がしたけど仕事柄そういうのが
多かったんだろうし特に気にしてなかった』…だそうです」
あー…うん。これは…
いやちょっと待て、SROの世界では普通なのかもしれない。
アマトさんの前例を思い出してそう考えた私はヒルデさんに
質問してみる。
「ヒルデさんちょっといいですか?
私の価値観とヒルデさんの価値観で何か差異はありますか?」
「ない。当然ない、間違いなくこの男女は鈍感な阿呆」
やっぱりそうなんだ…いや、ここまで清々しいレベルの
鈍感さはリアルで見ると逆にイラつくというのを初めて知った。
「ううぅぅぅぅ…とりあえずもうちょっとだし早く行こうぜ…
このペースじゃ戦闘始まっちまう…」
「…背負いますか?とりあえず戦闘が始まったら
ジョーカーさん?も黙るでしょうし」
「う゛ぁ゛…頼む、ちょっと俺はダメそうだわ」
少し疲れてげっそりした顔をしたライカさんを背負って、
私はボストカゲのもとへ急ぐのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
「…そろそろですね、下ろしますよライカさん」
「うげ…ありがとよフジカ。
あ゛ーようやく少し静かになった…」
ボストカゲがと戦闘になるエリアの手前である
流浪の荒野まで到着し、背中からライカさんをおろす。
道中の敵はファルと途中で呼んだミソラに対応してもらいつつ
打ち漏らしを私が時々魔法で倒すという感じで蹴散らした。
「…?あれ、ライカさん、あの人テットウさんじゃないですか?」
「あ゛?…あいつら、なんでこんなとこにいるんだ?」
私の指さした方向を見て、疑念が確信に変わった表情で
ライカさんが声を荒げてそう言い放つ。
「鉱石アイテムもおいしい相手ですし…
話を聞いてちょうどいい相手だと思ったのでは?」
私たちが目標として進んできたボストカゲ…
「マジカルクリスタルオオボストカゲ」、非常に
長い名称なので結晶ボストカゲと呼ばれているらしいそれが
テットウさんたちが必要としている素材を落とすという
情報があったという事だろうか?
結晶ボストカゲ…これでも長いな、
結局オオトカゲとほぼ同種だしボストカゲと呼ぼう…
ボストカゲはこのあたりの荒野に鉱石素材を放置すると
それを食べて強化されるという特性を持っている上
食べた上で討伐すると食べた鉱物を増殖させて落とすという
特性も持っているのだ。
そのため定期的に良い鉱物を食べさせて狩る、という行為が
度々行われており、ライカさんによれば自分で鉱石を
もっていけば他のパーティーへの飛び入り参加も可能ならしい。
(今回のパーティーはライカさんが掲示板で見つけた方々とのこと)
食べた鉱石のどれを落とすかはランダムだが…
基本的にトカゲの体に生えている水晶の色によってレア度が
分かるらしく、今回は中々のレア度の功績を落とすらしい。
ボストカゲはこの荒野の主なので定期的なメンテナンスが
行われる際以外では突然消えたりはしないため、一定期間
育てることも可能であり…横取りは基本的にマナー違反と厳しく
取り締まられている。
初めてこの荒野のボストカゲと戦う際は別個体が
生成されるらしいので、基本的に横取りする人間は
ここを攻略済みの人間だというのもその文化を維持する原因
になっているようだが…まぁ、とりあえず私は
ライカさんと楽しくトカゲをぶっ飛ばして遊べればそれでいいのだ。
「ライカさん、ごうりゅ…え?」
「あんにゃろぉぉぉおおお!!」
まぁ、せっかく出会えたのならとりあえず合流するかと
提案する前に、ライカさんはテットウさんの方へ走り出す。
「え、ちょっと待ってください!!!」
私は何とかライカさんを止めようと何とか走り出すが…
ライカさんがテットウさんの前に到達するのが早かった。
「んぁ、ライ…ぶげ!?」
「お前お前お前お前!!なんか忘れてないかお前!!」
「えっえっえっえっえっえっ」
「は…?ライカ…?それにフジカも?」
ロルルアさんが驚きでそんな呟きを零す。
なぜこんなことになっているんだ…?
「ふごご!離れろ、はなへぶっ!」
「思い出せばっきゃろー!ここにいる暇はねえぞ、
何か忘れてることはないか?あぁ!?」
困惑する私たち二人を蚊帳の外にして、
ライカさんはよく分からない話を展開していく。
「…あんたらも結晶ボストカゲ討伐に混ざりに来た口かい?
なんだか連れが愉か…妙なことになってはいるが、
とりあえずそれだけ教えてくれ。違うんだったら
どっか別なところで…」
「…あ、参加です。鉱物はこれでいいですか?」
とりあえず、本来の用事をこなせるように
私は参加料の鉱石を参加するパーティーの人に渡しておく。
「…まぁ、奇遇だな。あの二人に何があったか知ってるか?」
鉱石を渡し終わり、私を見つけた
ロルルアさんが何か知らないかとこちらへ話しかけてくる。
「全く、とりあえずお二人が最近中々予定が合わないという
話だけは聞いていますが…」
「…そうか、どうする?止めるべきだとは思うが」
「私たちが解決できることじゃない気がするので…
まぁ、一旦見守りましょう」
そういうことになった。
私たちは二人の口喧嘩を三人の知らない方々から
なんだか同情を帯びた目を向けられながら見守るのだった。
ライカさんが気を遣うなんてなんでやろなぁ(すっとぼけ)
ボスエネミーについて(お邪魔ボス)
初挑戦のパーティーは新しい個体(微妙に弱体化されている)
との戦闘となり、二回目以降は全プレイヤー共通の個体となる。
この処理が行われるのはエリア移動の際に倒す必要のある
ボスのみであり、記憶持ちではない場合のボスにのみ適用される




