決着、愚痴とかノロケとか。
少しぐだぐだお話しするだけの回。
今日から一か月半の連続投稿期間です、
割とどのくらい期間が伸びるかは未知数ですが
頑張って更新していきたいと思います。
「あー負けちゃった、負けちゃった。
もうね、ヒルデには別の怒りが沸いてくるね…!」
「あんな目立つところに置いて寝てる方が悪い。
こっちは朝ごはんだから呼んできてくれないかと
メイドさんに頼まれただけだし」
先ほどから申し訳なさで黙っていようと思ったら
突然起きたヒルデさんが口を乗っ取り、
正気に戻ったアマトさんと口喧嘩を始めていた。
…痴情のもつれなどと言っていた身としては少し
申し訳なく感じていたのだが、
もしかして二人ともニールさん関係なしに仲が悪いのか…?
「だからと言って人の日記見るやつがいるかなぁ!?
しかもあれたしかちゃんと鍵かけてたはずじゃ…
いやしかも壊れてなかったしどうやって開けたの?」
「メイドさんが「やってください。予備の鍵はこれです」
って言って渡してくれた」
「畜生…!ってことは犯人はゴウラシックだな!?
というか起こしに来るのを他の人に任せるって話にしてる時点で
察するべきだった、あの筋肉フェチが…!!」
…ハーカさんへ挑みにお城の中へ向かった際に
めちゃくちゃ鼻息荒くしながら案内してくれた
メイドさんの顔を思い出す。あの人かなぁ…?
筋肉フェチ、中々にアブノー…いやノーマルだろうか?
筋肉というか肉体美なら私も素直に関心してしまうし
好みとしてはノーマル寄りなのだろうか、筋肉フェチ…?
「人望無いの?」
「あるわい!ただ一部が滅茶苦茶に自由なだけだい!
正直みんな有能じゃなきゃどっかに放逐してるよ!」
「ふーん。まぁ、フジカが勝ったし
私はこのまま師匠やってていいんだよね」
「お好きにどうぞ!そもそもニールへの罰込みだったからね、
巻き込んじゃって申し訳ないと思ってたけどそんなことされるなんて
本気で予想外だったよ…!」
…どうしよう、何かしようにも口を
ヒルデさんが使っている以上私からは何も発言できないし
こちらの意見を伝えるにはどうすれば?
と、考えるところまで進めると一つの解決策が浮かんだ。
私はメニューを表示してそこからいつも通りの手順を踏んで、
ファルを呼び出す。
「んぁ…?おはようございみゃぁす、ご主人様…ピェ?」
「…初めましてかな、同胞ちゃん。
私は白竜王のアマトって言うんだ、よろし――」
アマトさんがファルをすごい睨んでいる。
何か奪われた記憶の中で粗相をしたのだろうかと
勘ぐってしまうのだが…ファルが視線に耐えかねて即座に
私の後ろに隠れて話す。
「すみません、ちょっと冷静になる時間をください
自己紹介はそのあとにしてくださいお願いします」
「え、うん」
「…威圧を抑えて、ニールと仲いいわけじゃないから
そんなに警戒しなくてもいい」
…あ、そういうことか。
ニールさんに自分より近い距離でいられるファルに
対する嫉妬という奴か…いやそこまでしなくてもいいのでは?
「…え、そんな雰囲気出てた?」
「めちゃくちゃ出てた、騒動の発端の私が言うのも
なんだけどどうかと思うよ…?」
「そう、だ…いや君にだけは言われたくないよ!
ニールと何かしてた仲間内にも殺意飛ばしてたらしいじゃないか
そういう感情も関係性もないらしいのにさぁ!」
アマトさんがヒルデさんを指さして言う。
仲間内に殺意というのも…いや初対面の人に
威圧するのも中々な気が、いやどっちもどっちか?
「…む、ラーちゃんがバラしたか。
別にうらやましいなーってじっと見てただけ、
大した意図はない。その後似たようなことやってもらうし」
「この甘えん坊暴君がぁ…!何さらっとうらやましいことを!」
「貴女だって一歩踏み出せば私の立場を得ていた。
だったら早いもん勝ちだよ、奥手だったのが敗因」
「君がいることも恋してるのも知らなかったからねぇ!
こっちも行動しようがないよねぇ!?」
「でも私が出会った時点で324年の付き合いと聞いた。
竜の結婚可能な年齢的にも私より200年は早く付き合えたはず、
貴女がヘタレてたのは事実として受け止めるべき」
そんなに生きるんだ、というか結婚可能年齢とかあるんだ…
あまりに言い争いがヒートアップしているのでそんな現実逃避をしてみる。
まだファルが復活する様子はないし、こちらからは何も干渉できないな…
「違いますぅ―竜と竜は誠実に三十年付き合ってから結婚するんですぅー、
君たち短命な種が早すぎるんですぅーそれに竜王就任直後で
お役目が忙しい時期を狙われました私悪くないですぅー」
「言い訳はそれだけ?」
「畜生誰が負けヒロインだ家臣共が!!!!
しかもめっちゃ事の詳細が書かれた恋愛小説出しやがって…!」
「それ、私も読んだけど面白かった?
私としては面白かったけど」
「悔しいことに面白かったよ畜生!正直私たちの話がモデルじゃなきゃ
普通に手放しに称賛してたね、でも負けヒロイン扱いは
キレるよ!?せめて物語の中でだけは勝たせろよ家臣たち、
一応は上司なんだぞこちとらァ!!」
「職権乱用が過ぎない?」
恋愛小説もあるのか…いや純粋に今私が持っている情報だけで
内容を推測したとしてもなかなか面白そうな内容だな?
持っているようだし今度ヒルデさんに借り、
いやお城の中にあるだろうか?売り払われているかもしれないな…
と、そんなことを考えて現実逃避を続けていると
正気を取り戻したファルから心の声が伝わってくる。
「(ご主人様、この状況は一体…?)」
…いやね、アマトさんと勝負して勝ったんだけど
それに関してヒルデさんが中々に悪いことをしててね?
「(そこから口論に発展していたという事ですか…)」
大体そんな感じだね…いや止めたいんだけど
私は口を動かせないからふぁるに喋ってもらおうと思って…
「(怖いです、さっき本当に言いがかりであろうにすっごい怖い
視線を向けられました、傷付いたので後で
抱っこして撫でてください)」
後でやってあげるから私の意思を伝えてほしいな…
他にも色々やってあげるから、このとーりお願い!
「(…ふふふ、仕方がありませんね。
それではなんとお伝えすればよろしいでしょうか?)」
さすがはファル、頼りになるね!
…いったん落ち着いてください、
落ち着かないとニールさんを呼びますよ。
って二人に言ってもらえる?
「(わかりました、そのままお伝えしますね)
…お二人とも、少し落ち着いてください!
落ち着かないとニールさんを呼びますよ!」
「「どうやって?」」
言い争っている二人の声が重なる。
…アマトさんはまだしも、何故ヒルデさんが論争を終わらせる
気がないのか分からない。嫌々じゃないのか…?
「さすがにこんな会話を聞かれるわけにはいかないよ?
それをするんだったら私は君をとっ捕まえるから」
「私も同じ。ニールに大好きでいてもらいたいから
こんな部分を見られるのは嫌、私も全力で捕まえる」
その全力は私のものなんですが…と言いたいが
正直なところそれを言っても聞いてはもらえないだろう。
どうすれば二人を止められる?空を飛べるエアリィとグリムを呼んで
三人で誰か一人でも気づいてもらえばいい理論で
追いかけっこをしてもらおうか?
…いや、私が考えていることは大体筒抜けだ。
ならもう抵抗しても無駄か?
いいや、あきらめてはいけない。
二人から逃げ切ってニールさんへ状況を伝えることが出来る
可能性が数パーセントでもあれば私はそれに駆ける…!
私はメニューをもう一度操作してエアリィたちを呼び出し、
それと同時にファルへ伝えに行ってほしいと心の中で強く伝える。
「おはよ~ごしゅ」
「おはようございます、ごしゅじん…?」
「お二人とも今すぐ飛び立ってあちらのニールさんの元へ
向かってください!ご主人様がピンチです!
二人とも一瞬驚いて停止するが、しかし慣れた手つきで
ファルの指さした方向へと飛び立っていく。
「逃がすとでも…!」
「はいはーい、多分そういう事だと思うから
話を聞かずにあなたと戦うよ。白い竜さん?」
「足止めか!こんなものすぐに抜け出す、
そっちも頑張ってよヒルデ!」
「当然。弟子に出し抜かれるほど落ちぶれちゃいない…!」
ぐ、魔導伝承…!体を乗っ取られたらこれ以上の
対策を張るのは無理だ、しかしこれ以上の対策が取れないと
さすがに二人を止めきれない…!
くそう、二人の言い争いを止めようとしただけで
何故ここまでよく分からない攻防を繰り広げなければならないんだ!
こうなればやけだ、絶対に二人のことをニールさんへ
チクってやる…!
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私はそう決意して二人との闘いを始め、色々あったがボロ負けした。
いやまぁ、私の体を乗っ取られているというのが
一番大きいかもしれないが…まぁ、楽しかった。
最終的に私が滅茶苦茶二人に惚気とか諸々を聞かされ続けるという
締まらない結果にはなったのだが…その後は何事もなく
みんなと楽しく遊んで、今回のイベントは陽喰の日などの
不穏な情報を残しながらも幕を閉じるのだった。
ゴウラシック
メイド長な白竜、まぁ凄い偉くて強い人だが
筋肉フェチで男女問わずに肉体美に魅せられる人。




