修行①
クソ遅筆野郎の一時蘇生です。
祖母関連の用事は大半が落ち着きましたが
梅雨との闘いが非常につらいです
(数日に一度程度晴れるのが逆につらい)
ちょっとだけ本編?です、梅雨次第で時期は変動しますが
次の投稿から投稿ペースを元に戻していくことになると思われます
ヒルデさんから課せられる修行は過酷を極めた。
正直辛い場所を書き出せば枚挙に暇がないので
特につらかった二つを話すことにする。
まず、修行を開始してすぐのこと。
草原を少し移動して、中々小高い丘のような場所へ
連れてこられる。そして、その向こうにいる黒い影を
ヒルデさんは指さした。
「あそこにミソラちゃんたちを出さずに
一人で突っ込んでら全滅させてきて」
「え、あの牛の群れの中に…?」
二倍の大きさの牛が一目見ただけでも
おかしいと感じる数がいる群れに突っ込めと言われる。
牛はあんなに群れるものなのか…?
というかあの角はなんなんだ、牛かと思ったけど
よく見たらあれ凄い角ねじれてる…牛じゃないのか?
いや直感で牛と判断したならばそれは牛でいいだろう。
「突っ込んで」
「わかりました」
ちょっと考え事をしていただけでこれである。
もう何を言っても聞いてもらえないと思い
何も考えずに突っ込んだ。茨の庭園を出しても
半分くらいしか減らなかったし減らなかったもう半分が
どう見ても怒っているであろうに的確に急所を狙いつつも
移動能力を削ぎに足を狙ってきたので非常につらかった、
でも勝った。
次に少し場所を移動し、湿原で大きなスライムに出会った。
それを見てヒルデさんは私にこう指示した。
「次はあそこのスライムをグリムちゃんと心獣混身して
魔法で全部焼き尽くして、五分したらまた沸いてくるから
これを魔力回復しないで乗り切るのを二セット」
「…これ絶対魔力がたり」
「やって。今のままじゃ全然アマトと
戦うには足りないんだから」
「わかりました」
スライム軍団を一回目は強力な一発で、二回目は
ばらけたところを一か所に集めてグリムの話を聞いて
一回目より威力と消耗が低い風の魔法と火の魔法で二発、
三回目は二回目と同様の方法で倒した、魔力は
だいぶギリギリだった。
多分、殴っても大したダメージを与えられないスライム軍団
との戦闘で消耗を押さえた戦い方とかそういうのを
学ばせようとしているのだろうけど…
うん、大分つらい。何か行動を制限されながら戦うのが
ここまでつらいとは想定外だった…
「及第点、二戦目からは魔法だけって言ってなかったから
殴り始めたらよかったのに」
「それを思いつくだけの理性がかけらも残ってなくて…」
「…仕方ない、でも魔法の使い方はグリムちゃん共々
よかったと思う」
「ありがとうございます」
「こいつ蛮族だな…?」みたい感じの呆れた声で
ヒルデさんに感想を述べられるが、ヒルデさんも
他の人から話を聞く限りだいぶ蛮族寄りですよね…?
「私は経験と能力を考慮したうえで力押しが一番単純だから
選んでるだけ、他の方法も全然とれる」
釈然としないものの、話をつづけたとしても
別に強くなるために特訓をしなければならないのは何も
変わらないためそのまま次の修行場所へと向かった。
これはついでの話にはなるのだが、
大体三回目の場所移動を経て私の疲労が顕著に
なったタイミングでヒルデさんからこんな指示を受けた。
「次はあっちの山、あそこにとても数が多くて
硬いし素早いトカゲが沢山いる」
「了解しました、殲滅しに行きましょう」
それまでの修行に比べたらトカゲが弱すぎたので、
たぶん息抜きとしてやらせてくれたんだと思う。
これのおかげでフィジカル的な疲労はあれど
メンタル的な疲労は回復できた。
◆◆◆◆◆◆◆
「ぜえ、はぁ、ぜえ、ぜぇ」
「これで今日はいったん終わり」
なんとか今日の修業を乗り切った…
今までの修業に比べても密度がすごい。
あれからも三、四回場所を移して修行を続けたのだが
どれも難易度が運営さんに注意された場所くらいヤバい。
あの場所は敵の密度が酷いというのもあるが
しかし基本的には似たような敵しか襲ってこないので
考えないで戦ってもなんとかなるのだが…
こちらは大分つらい、種類も対策方法も違うので常にそれを
意識して戦わなければならず、その上
ヒルデさんに戦闘方法を制限される…
本当に死んでいないのが奇跡である。
「それじゃあまた明日、そろそろいつもの時間じゃないの?」
「あ…そうですね、すみません。失礼します」
体の中にいるからか、
ログアウトの時間を理解されいるようで
それを把握したうえで特訓の内容を組んでいたようだ。
いや、それでも倒す時間とかを考慮していると考えると
私のほぼ全てを把握されているように感じて少し怖いなぁ…
「流石にそれは無理、あなたの行動を予想しきるのは
私だって無理だよ…」
「それはそれでなんだか釈然としないですね…」
ヒルデさんもそういうところはあるのではないか?
という言葉を胸の内にしまいつつ、私はログアウトした。
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ログアウトして機械を取ると、すぐに
目を覚ましたファルが私のそばに来る。
なんだか不服そうな顔をして私の顔をのぞき込んでいるが…
「ご主人様…」
「なんとなく言いたいことはわかるけど
我慢できない…?」
「いやです。だって…」
無理だとは思うが、一度説得を試みる。
大体いつもの癇癪だろうとあたりを付けているものの、
原因はどれだろうか…?と少し話を聞き出そうとした瞬間
ファルがまくしたてて話し始める。
「だって最近私を活躍させてくれないじゃないですか!!
流石にミソラに頼りすぎですよ、
どうして私を出してくれないんですか!?
しかも海でもかっこよくミソラを救けてて…」
やはり想像通りだった。
というか多分活躍させてもらえないはおまけで
最後の方が一番してほしいことだな?
「さては本題は最後の方だね…?」
「そうです~~~~~~~!!!
図星ですよミソラがうらやましいです~~~~~~!!!!!」
半ばいつものことであるが、
最近は不満をちょくちょく表に出すようになった
ミソラに対応していてファルへの対応がおざなりになっていたのは
確かである。今回はちゃんと対応してあげなければ
もっとひどいことになるのは間違いないことである、
今の試作品状態の体で外に出られたらちょっとまずいし…
「今回は何をしてほしいの?」
こういう時のファルの要求はまちまちである。
同じようなことを自分にもしてほしいという事もあれば
何か別のことを要求されることもあるし…
今回はどうなるだろうか?
「私の着せ替え人形になってください!」
いつもと違ったファルの予想を裏切る回答に面食らってしまう。
いつものファルなら添い寝と抱っことか要求されると
思っていたのだが…というか。
「そんな言葉どこで覚えたの…?」
「トピアさんが教えてくれました!」
トピアさんかぁ…バレンタインの一件以来少し
服飾に熱を入れ始めているのでその影響だろうか。
でも多分この言葉をファルに教えたのは自分の
欲望のためだろうしちょっと、なんというか
欲望を抑えきれない人の様に思って…いやそういえば
最初からトピアさんは欲望マシマシだった。
「ふっふっふ、ログアウト前にミソラへお願いして今
お姉さんに服を持ってきてもらっています…覚悟ー!」
何はともあれファルの要求としては比較的簡単な方、
なのではなかろうか?要求は軽い方だしぱっぱと済ませるなら
それでい……あれ。
気付いた、いや気付いてしまったことに対して私は
声を震わせながらファルに聞いてみる。
「…ちなみに何の服を着せようとしてるの?」
ゴスロリだったらダメだ、本気で謝罪してダメだったら
泡を吹いて倒れる自信がある。
ただ多分ファルは悪くないのだ、事前に教えていなかった私が悪い…
教えた気もするのだが多分忘れてしまっているのかもしれない。
しかし強く言わなかった私が全面的に悪いのだ、もし私の
考えていることが真実だとしても悪いのはファルではない、
妙な弱点を持っている私の方が問題なのである。
「普段来たことのない感じ、だとだけ教えておきます」
――――――終わった、これはもうダメだ。
全てを察して脳裏に未来の自分の姿がよぎった瞬間に
私の意識は闇へと消えた。
お姉ちゃん「言われた通りレディースのスーツ持ってきたけ、ど!?
え、永華!だだだだ、大丈夫!?」
ファル「ごごごべんなざぁいいいい!!!!
目を、めを開けてくださいぃぃぃぃ!!」
その後しばらくして目覚めたものの、姉の膝枕の上で
再び気絶したとかなんとか。
それでは次回の更新まで再びおやすみとなります、
皆様温かい心でお待ちいただければ幸いです。




