過去解:我の回答
ある意味閑話?
ニールさん視点です、次回はアマトさん視点の予定
白の竜王アマト。奴は初めて出会った時から
竜王として褒められた態度ではかった。
「…そんな奴が、ここまでするとはな」
しかしこれまでもその政治的手腕のみは我も評価していた。
だが、我への執着に関しては鬱陶しいことこの上なく
奴に対する信用信頼は高くなかったのだが…
こうも奴の理性的な面を見てしまい酷く動揺してしまっている
ようだ、冷静にならなければ。
考えていてもそちらに意識が向いてしまうので
他のことを考えるために少し、目を閉じる。
こうすればフジカに刻んだ刻印から
周囲の状況を見ることが出来るからだ。
『次は何をすればいいんですか?』
『次はあっちの山、あそこにとても数が多くて
固いし素早いトカゲが沢山いる』
『了解しました、殲滅しに行きましょう』
別れてからしばらく時間が経った故に
ご褒美とばかりに奴の好きな獣を殺させに行ったらしい。
…思うところがないではないが、しかし心の中に留めておく。
何故あそこまでトカゲ共に対する殺意が酷いのか?
たかだか最初に相対した敵にしては少し大きすぎる気もするが
気にすればするほど迷走するのは分かり切っているので
目を開けてもう一度奴のことを考え始める。
◆◆◆◆◆◆◆
初対面の奴に戦いを挑まれ、
完膚なきまでに叩きのめした後も
国を作り双方の干渉を防ぐための条約が成立するまでは
度々戦いを挑まれた。
ヒルデと出会ったのはその最中、
当時はいろいろな事情が相まって戦いたい欲があまりにも高まり
人、魔物問わず様々なものに喧嘩を売っていた…
その中でも彼らが別格だったのは言うまでもないだろう。
彼らは強力な連携もさながら個々の実力も素晴らしかった。
素質は村に襲撃をかけた時から間違いなくあると確信していたが
まさか我が死にかけるまで戦えるとはあまりにも良い。
その後単身で、個人であるがゆえに手加減アリであるとはいえ
ヒルデと勝負をして負けるとは思わなかったが…しかし
彼らとの日々は得難いものだったと確信できる。
だからだろう、執着してしまったのだ。
助けたいとは思ったが助けを固辞されてしまっては仕方がない…
否、助けを固辞されたとて助けようとはしたが
行動する前に彼らに止められてしまった。
それを振り切り強引に助けることもできただろう、
だが…あの時は「我に勝ったこの人間たちならば
我の力を借りずとも何とかする術があるのではないか」
という淡く脆い期待を持ってしまっていたのだ。
その結果があの末路、よくわからん化け物が
思い出の城に居座る形となり…対処にも城を破壊する危険から
竜を動員できない上に倒す方法がわからず苦心した。
あの化け物ができていたであろう時、我は
あの国ではなくこの白竜の国にいた。
思い出が踏みにじられたあの場所に嫌気が
差していたのだろう、会議のために訪れた我は
始まるまで周辺の魔物などに八つ当たりをしていた。
そんな中、アマトが現れた。
「やぁ、荒れてるねえ」
「…なんだ?戦いたいのか、今の我は気分がいい。
戦ってやろう、いつも通りのルールでいいか?」
その時我は気が立っているところに半ば嫌いな奴が来たからか
対応が荒っぽい口調になっていたが…奴は首を横に振り、
我に制止を促していた。
「おーおー…ストップストップ。
会議の日程について報告しに来ただけさ…
開催は明後日、とりあえずそれまでは自由にしてていいよ」
「そうか、それまでには戻る…一人にしておいてくれ」
「ちょっと暗いお話してくれてもいいじゃないかー。
僕もね、ちょっと英雄を探して育成を」
「貴様!!このヴニールの戦友を愚弄するか!」
奴は共通の話題を取り出して冷静になるよう
促したのかもしれないが、その時の我はひどく気分を害した。
ヒルデたちは間違いなく英雄と呼ばれるに足る器だった。
それに代わるようなものはすぐには現れまい…それに対して
アマトは代わる存在がすぐに現れるように言い、ヒルデたちの存在が
取るに足らないものだと言われているようで酷く憤った。
今考えれば本当に訃報を聞いたばかりで彼らに関する話題に
敏感に反応してしまっていたのだろう、何でもないであろう事に
反応し突っかかってしまっていた。
「…はぁ、君。彼女たちに入れ込み過ぎだよ?
得難い日々だったのは分かる、でも死者に
囚われ過ぎるのもよくない」
一般論だ、無神経ではあるかもしれないが竜王としては
全く間違いではない発言。
「ッ、黙れ黙れ黙れ!!我に関わるなァ!!」
「…頭が冷えたら帰ってきてね。一応会議もあるし、
僕も無神経だったよ」
そう言って奴は帰っていったが
その後は怒りが冷めず、結局会議が始まるまで周辺で暴れて
奴への怒りを滾らせたままに会議に参加した。
◆◆◆◆◆◆◆
奴の言う事自体は真っ当である。
アサンの奴もああではあるが真面目に責務を果たしているが
他のものに比べて我はサボり気味と言われてもしょうがない。
「ヒルデに執着しすぎていたのは事実、奴が怒るのも当然か」
あの時の奴の声は、我と我の執着しているヒルデに
失望しているようでいてそれでもなお信じようとしている
ような感じがした。
「…奴の覚悟に答えねば、我が名も廃るか」
フジカも乗り気だ、それに加えてやるべきことは明確…
ならば我のやるべきことは決まっている。
「…我も覚悟を決めるぞ、アマト」
ヒルデを失うかもしれないが、それも我が怠慢のツケと
受け入れるべきだろう…少なくともフジカを責めるべきではない。
空を仰ぎ、はるか上空に白い翼が見えた気がしたが…
我はそれを一瞥し、フジカの修行の助けになるであろう物を
探しに行くのだった。
竜王とは
竜とは最強の生物である。ならばこそ最強であるが故の
役割があるはずだと提唱した始まりの竜たちが条約と共に
取り決めた役職。火には火、地には地のそれぞれの役割が
存在している
王国崩壊後のニールさんについて
崩壊後の王国に我が物顔で住み着いていたシテイオウに対し
酷く憤りながらも、自らの実力で下手に動けば城を崩壊させてしまうし
事情を知らない眷属や部下を動かしても城を破壊してしまう可能性が
高く排除に踏み込めなかった。そのためフジカには感謝している
ブクマ、評価よろしくお願いします。
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