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閑話:こうだったかもしれないお話

本日一話目の更新です。

三話連続投稿はダメだったので明日二話分投稿して

今日は二話分更新します。

この話はエイプリルフールネタで

一度書きかけた本編の没案です。

私はワクワクしながらリビングで歓迎の準備をしていた。


「やーったやった、姉さんがついにーっ、帰ってくる!」


今日、私の大好きな姉が実質世界一周の旅から帰ってくるのだから

とても楽しみに、踊るような心を抑えながらご飯を作っている。


姉の好きだったお菓子は買ってあるし、旅行中の電話で

美味しいと言っていた料理も試作して納得できるものを並べている。


「姉さん喜んでくれるかなぁ…お母さんはどう思う?」


「…えぇ、喜ぶと思うわ」


…でも、なぜかお母さんは悲しそうな表情をする時があるし

兄も何故かここ最近構ってこない…兄に関しては病気を疑うが、

何か引っ掛かるような気がする。


飾り付けは十分、料理も万全。

姉が帰ってきたらクラッカーも鳴らそう。


最近はいいことばかりだ、ファルやライカさんの

ような新しい友達ができて念願のプライベートルームに

ベッドまで手に入った。


私は胸を踊らせながら姉の到着を待つのだった。


◆◆◆◆◆◆◆


家のチャイムが鳴る、今はお父さんも帰ってきていて

帰ってきたときに一度間違えて抱き着いてしまったのが

少し恥ずかしい。


…が、今度こそ本当だろうと私はドアを開くが

しかしそこに立っていたのはいつも配達をしてくれる

郵便配達の方だった。


「すみません、藤野陽介さんのお宅で間違いないでしょうか」


「はい、そうですが…」


お父さんに届け物とは珍しい、

そういう通販系は母さんに任せていたのに。


「…見ず知らずの人に言われるのもどうかと

 思われるかもしれませんが、お悔やみ申し上げます」


…?あれ、だれか死んでしまったのだろうか。

でもお母さんのおじいちゃんたちは元気だし

お父さんのおじいちゃんたちもまだまだ元気だと

最近連絡を受けた。


チエちゃんたちいとこが交通事故や急病で、

ということならばお母さんたちが教えてくれるだろうし

誰だろう…?


「それでは、サインかハンコをお願いします」


言われたとおりにハンコを押して荷物を受け取ると

段ボールの中身からからりと音が鳴り、

前後の話から考えるとこれが遺骨なのではないかと考える。


「では」


そう言って私は箱を持ってリビングへ戻る。

気付いてしまったことに気づかないふりをしながら。


◆◆◆◆◆◆◆


姉が死んだ。


以前から計画していた海外旅行で

突然起こったテロに巻き込まれ、

その犠牲者の一人として心臓を撃ち抜かれたのだ。


俺は姉のことが好きではなかったが、

さりとて身内の死に心が痛まないほどひどい人間ではない…

俺の心にぽっかりと開いた喪失感の穴は

気分が悪いものの、姉の分まで楽しく生きて

楽しい思い出話を冥途の土産に持って行ってやろうと

決意できるだけの余裕は俺にはあった。


だが、妹は違った。


姉の死を受け入れきれず、訃報を聞いて一週間体調を崩し

部屋に引きこもり。


そこから突然回復して、部屋の外に出てきた妹は

いつも通りに戻り死を乗り越えたと思っていた…が。


妹はおかしくなっていた。俺が大学から帰ってきたときに

姉の訃報を忘れ、旅行中の姉と月一回行っていた

ビデオ通話をつながっていない真っ暗な画面で

行っていたのを目撃したが何よりの証拠だ。


そして、無意識のうちにか姉の帰ってくる日を…

いや、姉の遺骨が送られてくる日を姉が

無事帰ってくる日だと誤認している。


もはや正気を保ててすらいないのだろう…

そんな考えに至った俺は妹を何とかしたかった。


何か他の趣味を見つけてほしい。

何か他の物、とにかく姉に関することへの執着を他へ向けて

姉の死を乗り越えてほしかった。


しかし俺も多趣味ではない、名作とされるゲームをしたり

友達と最近流行りの動画について騒いだりするだけの

平平凡凡な大学生であり、そんな俺に

それまで重要だった物に取って代わることを

見つけ出せるわけがなかった。


日に日に危うさを増していく妹を見ながらも、

俺は依然と同様に贈り物という形での解決を試していた。


今話題のSROという、数十年前から夢見られてきた

VRゲームを実現したもの。それを妹に…永華に渡して

それでもなおダメだったのならすっぱりと諦めようと

決意しながら、俺は永華にそれを手渡した。


すると、なぜか永華は乗り気になった。

内心で考えるように呟いていた言葉を考えるに、

友達に心配されている様子を告白されていると誤認しているらしく

そのせいで眠れないと…永華が帰る時間が遅くなったのは

放課後教室でぼーっとしていたり、帰る道の途中で

突然本屋へ寄って絵本を買ったり、

絵本の棚を眺めたりしているからなのだが…

それをそう解釈するとは。


それからの永華は少し元気になった。

俺も趣味の時間を削って勉学にいそしみ、

隙間時間を確保できたので数日に一度、

SRO内の永華の様子を見守りに行ってみたが

召喚獣と出会い、新しい友達もできて存外楽しそうだった。


…少し、男二人組というのは気になったがそれはそれ。

楽しそうであればそれでいい、それにリアルではないので

悪影響が起きる確率が低いというのもある。


そんな環境であれば、きっと永華も元気を取り戻してくれる。

第一回のイベントも始まりSROの盛り上がりも最高潮…

そんな時だった。


姉の遺骨が帰ってきた数日後、

第一回イベント最終日。


永華はSROからログアウトしなくなった。


◆◆◆◆◆◆◆


「ふふ、こっちに来てたんだったら行ってよ」


びっくりさせようと(何を言っているん)思って…(ですか?)そっちの方が面白い(初対面の時からおかし)でしょ?(いですよ)


最初に出会った時はびっくりした、

がこちらに来ていた(に似た誰かがガチャで)のかと。(引けてしまった)


数年前の姉と全て(彼女は姉の)そのままで、(生き写しで)

旅行していた期間にあった老いや不摂生の影響なんて何もなかった

かのように、私に笑いかけてくれた。


「うふふ、あははははは」


私は気付いていた。私は今も気付いている。

姉が死んだことなんてわかり切っている、もう二度と会えない。

だがそれを受け入れられる程私の精神は強くない…

きっと生きている、生きていると考えてすがってしまう。

そんな葛藤を胸に秘めながら、遺骨の来る日までを過ごしていた。


でも、今は違う。

最後の最後に、これまで溜めてきたもの(無価値なもの)を使い切り

憂いを断つよう(死んでしまえるよう)に最後のガチャを引いていた。

その時来てくれたのがこの子、堕落の導き手。


そっくりだった、本当に姉がいるかのように錯覚した。

姿かたちがそっくりなだけならばあきらめがついただろう、

だが声までそっくりだったと感じた、感じて(錯覚して)しまった。


ならばもう、私の弱い心なんてぽっきりと折れて

こちらで生きて死んだ方がいいのではないかという方向へ固まる。


あぁ、願わくば。

目が覚めないことを祈ろう、行く先が地獄だとしても。

姉が悲しむことになろうとも、私はこのまどろみの中で

息絶えていたい。


バイバイ皆様。これでこの物語はおしまいです…

ぱたりと本を閉じて、私のことなんてただのつまらない

親不孝者と断じて忘れてくれると嬉しいですね?

それでは。

Qお兄ちゃんは病院に相談しなかったの?

したし、本人同伴でちゃんと受けさせた。

出来ることはなんでもした上での対応




第一回イベントを描き始めた時点では

本気でこのルートで描き始めようとしていましたが

構想の時点でマジで陰鬱だったため作者が耐えられないのと

書ききれないだろうという判断、

そしてリメイク元がコメディなのにそんな路線に

進んでいいのかという葛藤に加えて

私のメンタルが親族の病気とかで良くない状況だったのを

考慮して没にしました。


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