ハウルアさんの胸の内
今週はこれで終わり、
ハウルアさん視点です
私、ハウルア=ザスアカビスは内心とても安心していた。
というのも使者様が事前の印象に比べ
かなり優しい方だったからだ。
懸念点が懸念点が一つ消えて良かった…横暴な方が
もう一人増えるかもしれませんでしたが、
しっかりとした方のようで本当に。
ただでさえ人間に友好であるとはいえ
機嫌を損ねるとその個人は殺されるであろう
火、水、風のスリートップが今回は早く議会のために
来訪するというイレギュラーな事態を
対策させられる羽目になり、ここ最近はあまりに近すぎる
死の恐怖に対する不安のあまり若干不眠症気味なのである。
水竜王は侍女や私に対するセクハラが酷いし
風竜王はなんだか知らない内に町に出て起こった
トラブルを解決しようとしてくれるが…なんでか知らないが
別の被害を併発させてしまう。
(被害は多いが別に悪気がないので一番たちが悪いかも
しれない、でも三人の中では性格が一番マシだ)
火竜王は逆にお酒と定期的に戦える人を見繕えば
被害は小さいが…しかし何度も戦ってくれる
精神的な強者はいないので必然的に一度戦った人は
二度と来てくれなくなる。
そんな彼らの対応に追われつつ、自分が議長になるための
証を取るため試練へ行かなければならないし
不確定要素の竜王殺しの一族への懸念も考えなければ
ならないとくれば、深い隈もさらに濃くなるというものだ…
あ、でもちょっと痩せたのはうれしいかもしれない。
先代の議長…というよりも一族の中で議長の役職を
持ち回りしている状態なのだが、お前もそろそろ
やってみろと最年少の私に任されるのには正直まだまだ
荷が重い役職に感じる。
というか残してきた仕事が…かなり大きな案件なので
早く終わらせなければならなかったのだが叔父や叔母が
やっとくからと家族を味方につけて私に議長を押し付けてきた。
多分これまでの事を考えるに間違いなく利権狙いだと思う。
畜生、あんの小心者の横入りトカゲどもが…!
そんなことを考えていてもちゃんとしたお仕事ではあるし
国からの支援もあるのでしっかりと行わなければならない。
竜王をもてなすための献上品、竜王が起こした問題を
解決するための費用等々を計上したりやることずくめ。
そんな中で考えなければならない不安が一つ減ったのは良いことだ。
判断方法に関しても事前に念押しされた上、個人的に
学んでもいたものなので間違えるはずがない。
一族の宝、白竜王さまから議長として活動することを
認められる証拠である「潔白の首飾り」に、祭壇で刻まれた魔法と
刻んだ際に贈与される記念と一応の身分証となる議長の帽子を
得て、私は使者様と帰路へ着くことになっている。
「そういえば、ハウルアさんって
普段何のお仕事をされているんですか?」
「そうですね…一応は教会の司教を
務めさせていただいております」
別に恥ずべきものでもなし、
正直に使者のフジカ様へお伝えする。
司教と言っても役職は名ばかり、
大体神聖とされている土地の管理とか孤児院の経営
そして死後怪物に成ってしまった故人を特殊部隊で葬る
手続きをしたり…結局のところ宗教という拠り所を
主体とした面倒事請負人である。
そのなかでも叔父叔母はそこそこの悪名を誇っており
若いころに成した偉業のため大抵のわがままは通ってしまう。
だからこそ私の意見が通らず今回の一件が起こったのだが…
「司教さん…そう言われてみれば服装もそんな感じの気が」
「ふふ、司教と言っても名ばかり。
司教としての服は各々の個性が出ますし…
私のはまぁ、少し機能性重視といいますか」
殺されないための最低限の仕込みと、咄嗟の緊急事態へ
現場に即座に急行するために刻まれた魔法を除けば
ちょっと一部を改造しているくらいで私のは普通だ。
…他の人の奴は本当にやばい、特に特殊部隊を
まとめている筋肉ダルマはあれ本当に同じ作りの服か?
と疑いたくなるほど肌面積が広いのだ。
「なるほど…すごく仕事熱心なんですね」
「はは、他の人が不真面目なしわ寄せをされているだけです。
おかげで隈が消えませんし…」
一人二人は相当まじめだと言えるが仕事をバックレる人間が
10人20人といるのがおかしい。一応聖職者なんだが?
神に使える身であるにも拘らず好き放題してるのは
本当にどうなんだ?
…筋肉ダルマは真面目寄りなので服装だけなのだ、不満なのは。
しかし若いころはあんな服装じゃないし今よりもっと
真面目に仕事へ取り組んでいたらしいのでどこかで
あそこまで壊れてしまったのだろう、可哀そうに…
そこだけは筋肉ダルマに同情している。
「あと少しなので、少し気を引き締めて頂ければ。
一応使者という身分であるが故に民にはしっかりとした
印象を与えるべきです」
「あ、はい…分かりました」
フジカ様は私と話していた時の緩やかな雰囲気を即座に止め
逆に凛々しそうな雰囲気を纏って、先程よりも
気持ち背を伸ばし始める。
さて、門番には私から説明すればよし。
問題は竜王とその従者の方々だが…まぁなるようになるだろう、
というか一族に喧嘩を売るのは彼らにとっても
避けるべき選択のはずだ。
「私が門番の方に事情を話してきますので、
使者様はここで待って」
そこまで言うと、はるか遠くから一直線に砂埃を
まき散らしながら超高速で何かが走って近づいてくる。
「え、は?」
「え?」
フジカ様ともどもあっけにとられてしまうが
私の手前…というか使者様の目の前に立って腰の剣を抜いて…
「偽物がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
死に晒せぇぇぇぇっ!!!」
首を狙って切り落としにかかるが、
しかしギリギリで避け…というか遠近法を間違えたのか
そもそも首の遥か上を切り払っている。
「偽物って何ですか!?!?!?」
「使者を騙る奴は許さん!竜殺しの一族は私!
私ただ一人じゃ偽物はその首晒して恥を晒せぇ!!」
最早やたらめったらに切っているようにしか見えない。
だが避けている…というか当たってないのでは?
「…よく分かりませんが!一先ず止まってください!!
『微睡みの茨』!!」
フジカ様は咄嗟に発動された魔法によって
出現した茨によって突然の襲撃者は拘束される。
「なにw、zzzz…」
「はぁ…はぁ…どういう、こと?」
フジカ様は荒い息を整えながら
いきなり襲ってきた男性の様子をうかがっている。
…偽物と言っていたが、
フジカ様が使者ではないということだろうか?
目覚めたら聞くべきことが増えたが、ひとまず
私の責任を果たすべきと考えながらフジカ様へ問いかけるのだった。
「…フジカ様、お話をお聞かせ願えますでしょうか」
火竜王
テンプレな竜王、戦いと酒と肉が好き。
お利口に待つこともできるがそれはそれとして
暴れて相手の素質を知りたいとかがあるし
何より本人がキレやすい性格のせいで
そこそこの頻度で被害を出す
水竜王
チャラ男。ただスイウォートよりかはマシ、
見惚れた女性に求婚して説得して無理なら無理で諦める
しかし如何せんチャラいので大体成功しない
実際のところそれ以外の被害も結構デカいので
ロクでもない男
風竜王
自由に飛んでるのが好きなので
一番問題を起こさなそうなのだがトラブルを
解決したらそれにつながるトラブルが…を
何度も繰り返し被害が大きくなるタイプの
主人公補正持ちの竜王。
性格はまともだが起こす被害が三人の中でもシャレにならない
筋肉ダルマ
真面目な特殊部隊の隊長格で、
ブーメランパンツとサイズの小さい改造司教服を羽織っている。
恰好は変態だが仕事は真面目、以前起こったとある一件から
筋肉がすべてを解決すると思い始め今に至る
ブクマ、評価よろしくお願いします。
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