閑話:チエちゃんとアルルちゃん
ふざけたくなったので一度閑話を挟みます。
チエちゃんとアルルちゃんのお話
「行きましょうよ、ね、ね!」
「え…っとぉ…誰ですか?
姉さん、フジカさんの知り合いの方でしょうか」
「なーにとぼけてるのよ、約束でしょ、やーくーそく!
今日は私と遊んでくれるって言ってたじゃない?」
アルルちゃんと遊ぼうと誘われた時間に
約束の場所へ向かっていると、そんな声が聞こえてくる。
見てみると、どうやらチエちゃんがその場にたまたま居合わせて
勘違いされているようだ…最近装備の組み合わせを考えていて
変えていたのも影響しているのだろう、装備以外の差も鑑みてほしいが…
顔はそっくりなので勘違いしてしまったということだろう。
「おーい、アルルちゃーん?」
「え、フジカが二人…!?どういうこと」
「姉さんた、助けてください!知らない人です!」
「…逆じゃないの?」
アルルちゃんが久しぶりにポカーンとした表情を浮かべている。
…早く事情を説明しなければ、そう思って私は少し速足で
二人のもとへ向かうのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
「なるほど…いとこなのね、ガラテリタは」
「いきなり呼び捨てですか?」
「どうどう、喧嘩腰にならないの。
アルルちゃんは友達なんだから」
少し混乱していたアルルちゃんにチエちゃんが
いとこであることと最近始めたことを教えた。
最初はすこし困惑していたが
チエちゃんの話も同時に聞いて腑に落ちたらしく
「すごくそっくりね…双子みたい」と呟いて
納得した表情を浮かべていた。
「それで、今日は一緒にどこか行く予定だったけど
どこへ行くつもりだったの?」
「デートですか?デートですね、処します」
「…大丈夫かしら、この子すごく私を警戒してるみたいだけど」
「そういう子なんだ…ごめんね、私から謝っておく」
「別に構わないわ、義姉さんに比べればそんなに怖くないし」
「義姉さん???人の従姉を義姉さん呼ばわりですか、あーあー」
すごい面倒くさい。正直言って面倒なのでチエちゃんの
メンタルを攻撃して一時的に行動不能にして逃げおおせたい…
というかちょっと良心の呵責でお仕置きしないでおこうと思ったが
赤の他人に悪口を言っている時点で少しダメなのでは?
…でも直接的なことは言ってないし、まだ様子見だろうか。
「…貴方、ひとつ言っておくわよ」
「あーはいはいなんですか?私の方が仲いいわよアピールですか?
どうでもいいです、私はフジカのい、と、こ、なので。
ぽっと出の貴方よりも関係がふか」
「それ以上やるとフジカに嫌われると思うわよ」
言葉が耳に届いたであろう瞬間に
チエちゃんの動きが完全に固まった。
そしてすぐに息を吹き返すと怒って反論し始め…
「な、私の方が…!」
「少なくとも少し言葉に棘がありすぎ。
私は気にしないけど…思い込みが激しすぎると思うわ、
私はフジカとはただの友達で一緒にゲームを遊ぶだけの仲よ?
貴方は貴方の知らないことを知ってる相手に
少し嫉妬してるんでしょ?」
またチエちゃんの動きが固まってしまった。
どうやらアルルちゃんの言ったことは正しいようだが、
さっきのようにすぐに再起動するわけではなく
呆然としたように動きを止めている。
「アルルちゃん、なんか手馴れてるね…?」
「義姉さんのせい、と言っておこうかしら」
「あー…なるほど」
この対応力はせすさんに鍛えられたということだろう、
確かにやりそう…というかやってしまったことについて
頻繁に相談してそうだから理由としては納得である。
「…さすがに言いすぎちゃったかしら」
「いや、大丈夫だと思うけど…あれ?少し顔が赤く」
一分ほど全く動かなかったチエちゃんを心配して
アルルちゃんにそう聞かれるが、別にこのくらいだったら
大丈夫だろう…と思っていたのだが。
「姉さん!私こいつ嫌い!!」
「吹っ切れちゃった…」
ぷるぷると震える指をアルルちゃんに向け、
私の背中に隠れるチエちゃん。
「ごめんね、ちょっと最近感情豊かで…」
「別に構わないわよ。義姉さんよりもはるかに楽だし…」
「ぎぎぎぎぎ…!!余裕の表情浮かべられるの腹立つ…!
私よりちっちゃいくせに!!」
チエちゃんが苦し紛れに言い放ったその一言は
アルルちゃんの琴線に触れたのか、カチンという音が
聞こえるようなくらいな怒気を載せてチエちゃんに
怒りをぶつける。
「は??貴女言ったわね?私が気にしてることを言いやがったわね??
いいわ、いいわよお望み通り乗ってやろうじゃない!!」
「あの…お二人とも少し落ち着いて」
二人の関係がここまで水と油であるとは思わなかった。
ただ遊びに来ただけであるにも関わらず、思わぬ方向で
争いが加速してしまっている…どうすれば、どうすればいいんだ…!?
「そもそも勘違いしたのは謝るし、
なんだか琴線に触れたのも謝るわよ!でも
身長を弄るのはもうそれは人としてどうかと思うわよ!?」
「うるさいうるさいうるさーい!
私のことがそこまで分かってるなら言葉に秘めてください!
私だってプライドってものがあるんですよ!?」
「そんな紙切れに近いプライドなんて捨てても変わらないわよ!
というかあんた聞いたわよ!?あんた一時期フジカに
凄い迷惑かけてたみたいじゃない、困ってたわよ!」
「それは反省してますー、今更指摘しないでください―」
「あーもう面倒だわ、義姉さんよりも面倒じゃないけど
義姉さんよりもみみっちいわ!」
…なんというか、従姉がこんな失礼なことをしていると
自分のことのように非常に申し訳なくなる。
だがチエちゃんもチエちゃんである。
たかが身長煽り程度、たかが…いやたかがではなく
非常に重要だ。人の気にしていることを苛立ちのままに
するのは良くない…仕方ない、申し訳ないが
チエちゃんには少し反省してもらうことにしよう。
「チエちゃん」
「なんですか姉さん!私はこいつに少しでもダメージを
与えるのに必死なんですが!?」
「来週一週間姉さんの別荘出禁ね」
「え」
反省したからと言ってこちらに来すぎなのである。
週に四日来るのは少しこちらとしても多すぎだと思うので
一旦これを機に一度やめせようと思う…
だがしかしチエちゃんは凄い勢いで背中から移動してこちらに
殴り掛からんばかりの剣幕で話しかけてくる。
「どうか!!どうか寛大な処置を!」
「流石に初対面の人に怒るのはどうかと思うよ。
それに最近こっちに来すぎ、たまにはゆっくりさせてよ」
「永、姉さん!一日、一日は許して!!」
「だめ」
「そんなぁぁ!!!!?!?!?」
私は膝から崩れ落ちるチエちゃんを見ながら、
アルルちゃんにごめんねと視線で訴えつつ
せっかく遊びに誘ってくれたのに申し訳ないと
心から詫びることを決めるのだった。
アルルちゃん
面倒な女性への対応には慣れているが
今回は自分のコンプレックスに触れてきたので許せなかった
ブクマ、評価よろしくお願いします!
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