閑話:チエちゃんと従姉の知り合い
閑話、チエちゃん回です。
「これで、五十本目!」
私は市販の斧を使ってようやく、本当にようやく
最後の木を切り落としてレベルアップの音を聞く。
【レベルアップ!】
【Lv14→15】
【称号『半人前の木こり』を獲得しました】
疲れ切ったわけではないが、しかしやはり気力は使う。
そんな作業を終えてようやく町の外に出て戦えるだけの
レベルを得た私ことガラテリタはそう思う。
そんな私のステータスはこんな感じだ。
ネーム『ガラテリタ』
Lv15
職業:テイマー
副職:鍛冶師
HP850/850
MP570/570
SP残り:0
STR:20
VIT:70
DEX:35
AGI:90
INT:15
〈スキル〉
〈星の吸血鬼〉〈解体上手〉〈伐採〉
ほぼ完全に攻略サイトを見て組んだものであり
何やら戦闘等を主軸としないのであればこれがいいらしく、
私としても永華と遊べればそれでいいのでこんな感じで進めている。
スピードと防御に割り振って自分は回避をや防御を請け負い
その他は召喚獣に任せるといった戦法らしく
まだ戦闘をしたことがないため何とも言えないが
理にかなっていると思う。
「よぉし。じゃあ初めての外、行くぞー!」
そう右手を掲げて、私は意気揚々と外へ出るための門へ走り出した。
◆◆◆◆◆◆◆
「ウサギどもが…!絶対に許さない…!」
私は外に出て、秒で負けて帰ってきた。
召喚獣を出す暇もなく現れた十匹を超えるウサギの大群に
踏み殺されたのである…ウサギは嫌いじゃないが
この一件で嫌いになりそうである。
「うぅ~君を活躍させてあげたかったのにぃ…!」
噴水の隣には設置されたベンチに座って後悔しながらも
ウサギを見つけた瞬間に出そうとして結局
出せなかった彼を呼び出す。
「?」
「ごめんねシロヘラ君…戦うときに呼びたかったんだけどさ、
君を出す間もなく倒されちゃった」
しょんぼりしながら、呼び出されて間もなく
私の膝に乗って満足げな表情を浮かべる真っ白なコウモリの
シロヘラ君を見つめる。
彼はチュートリアルで引いた星5の召喚獣…
名前は星光の蝙蝠みたいなのだっただろうか?
ともかく彼はチュートリアルの戦闘で大活躍し、
二体目の召喚獣を得るのに貢献してくれたというのもあるが
非常にもこもこしていてかわいいので進化後の姿が
非常に楽しみなのだ。攻略サイトで進化後の画像を
見ないようにして調べた結果、20レベルほどで
進化するそうなのでワクワクしている。
二人目の子は日中眠ってしまい夜しか
活動できないようで、今は太陽が出ているので
出せない。だがなんだかシロヘラ君と並べてみると
兄弟のように見えてくる見た目をしているので
早く一緒に戦ってみたいものだ。
「おぉ、フジッ…カ、じゃないな?失礼」
目の前を背丈が永華より少し高く感じる程度の
身長の女の子が私に話しかけようとして、人違いと気づき
離れてくる光景が見えた。
「…?すみません、初めましてで申し訳ないのですが
今話そうとしたのはお従姉ちゃんの話ですか、
お従姉ちゃんの話ですね?教えてください
ここでのお従姉ちゃんのことを」
先程の発言から考えるにどうやら彼女は永華と
私を間違える程度には親しい仲らしい、
少し引き留めて話を聞いてみよう…と思ったが
少し警戒されているらしい。あ、いきなり話しかけて
しまったからか…失敗した、警戒されて当然だろう。
「ちょっと待て、本当にちょっと待て…
お前まさかあいつの妹か!いるって聞いたことねえぞ!?」
「いいえ、従姉です。従姉なのでそこは間違えないでください、
それでお従姉ちゃんがどうしたんですか」
姉妹ではない、姉妹ではないのである…
そこはしっかりしてほしい。
「いや押しが強いな!?お前、あいつの血縁濃いなほぼ確信したわ!
ちょっと待て、話してやるからいったん離れろ!!」
そう言われたので首根っこをつかみかねない位置
から少し離れて一定の距離を保つ。すると、
一息ついて話ついて話し始める。
「ふぅ…話すとは言ったが条件が一つある」
「は?」
は?どういうことだ、教えるといったのに嘘なのか?
私は目の前の女の子をにらみつける。
「お前やっぱそっくりだな…?いや、
一応お前身内を騙ってるの可能性あるからな?
一応確認の質問というか」
「…それはそうですね」
見た目と雰囲気で分かると思ったが、確かに
友達程度ならばそうなるだろう。まったくもって正しい対応なので
私は怒気を治める。
「…えーと、そうだな。うーん…
あ、あいつの姉さんの良いところを言うときに
絶対褒めるところを言ってみてくれ」
「声と手、そして目に肌…最後には絶対全部褒めるんですが
最初はこの辺ですかね?」
永華が義姉さんを褒めるときはまず小さいころに
絵本を朗読してもらっていた時に聞いた声、そしてページをめくる手
それから時々見上げて見る目に真っ白な肌の順である。
そこから無限にいいところを話し始めるので覚えているのは
この辺である。
「よぉし間違いねえな。…ちなみに名前だけでなんで俺が
知り合いだって察したんだ?」
「直感です」
…大体呼び捨てで親しそうな雰囲気から察したが、
それ以外にも何か知ってそうな感じから話しかけたのでほぼ直観である。
目の前の彼女はあー…と呟くような表情を浮かべる。
「直感かぁ…いやいいな。下手に言い訳されるより
ずっと信用できるわ…とりあえず何を話して欲しいんだ?」
「えーっと、お従姉ちゃんがいつも通る場所とか…」
「いきなり犯罪染みてきたな、
お兄さんと似たような感じか…?」
「え、あの人こっちでも迷惑をかけてるんですか…?」
「いや、かけてないがお兄さんはシスコンで有名だし」
なんと。あの男そこまで悪名を轟かせているとは…
こんなちっちゃい子まで周知しているとは相当だろう。
「…いえ、ちょっとフレンド登録という奴をしたくてですね」
「連絡取れないのか?連絡取れりゃ一発だと思うんだが」
「ちょっと警戒されて番号が迷惑電話に登録されてるらしくて…」
「いやお前お兄さんよりひでえ扱いだな?
お兄さんはギリギリ非常用番号を残してもらってる
らしいからな…」
「…ともかく教えてください、悪用はしませんよ絶対に」
「…こればっかりは本人の了承を得なくちゃ出来ねえなぁ。
あいつが嫌がる可能性があるならダメだ」
最後の最後に渋られている。
いや、これがほぼ最後の可能性なのだ。
なんとか、何とかこのチャンスを掴みたい…!
「そこを何とか…!」
ここでしかまともに話せる気がしないのだ、
現実では初手で警戒されてしまい会話が成立しないし
何とか教えて欲しい。
「…はぁ、こっから先の話をするには
ちょっとここで話すのは目立つ。ちょっと場所を移動するぞ」
そう言って彼女に手を引かれ、噴水広場を後にする。
しばらく進んで路地裏のような場所で止まり、話し始める。
「大体立場は理解したし、状況も理解した。
でもなんで現実での説得もできないのに見ず知らずの俺に頼む?
それに加えてあいつが嫌がる状況ってのが限られてる。
何が目的だお前」
「…仲直りです」
現実では素直謝るよりも前に、
近くに永華がいるという状況に正気を奪われる…
しかしこちらならばまだ理性が保てるので
なんとかこちらで謝りたいのだ。
「…あー、話し合いの場だけ用意してやる。
なんか面倒そうだが…上手く行ったら今度あいつに
お願いしてほしいことがあるんだよ」
「自分に、叶えられる範囲内であれば」
話し合いの場をセットしてもらえるだけでもありがたいので
そのくらいならお安い御用だ、しかし頼みたいこととは…?
「今度二人で決闘しねえかって誘っといてくれ」
「…?それならばそれこそ自分でやるべきでは?」
「いや、やったばっかだし俺があいつを
焚きつけちまったからな…俺から誘いにくいんだよ、
他の要件もあるがそれは自分から言えるし」
「…まぁ、わかりました」
「頼んだぜ、俺も何とかしてやるからよ」
そう言って彼女…センジョウさんとフレンド登録を
行って連絡手段を手に入れ、進展があったら連絡すると
話して今日は別れることとなった。
…次に会ったら、どう謝ろうか?
私は何とかもう一度仲良くしたいと思いながら
謝らなければならないこと、自分の意思を示すために
できることを考えながらログアウトするのだった。
高機動盾構築テイマー
攻略サイトにてそこそこおすすめされる組み合わせ。
フジカの初期の職がライカさん等から知れ渡り
似たような組み合わせで始める人がそこそこ出始めた結果
研究が進み、防御と素早さに特化して自分は盾に徹し
召喚獣にメイン火力を担ってもらう編成がかなり強いことが
発覚、戦闘をメインにしていないプレイヤーを中心に
流行り始めた。基本的には選択ミスがなければかなり良い
シロヘラ君
白いコウモリの召喚獣。
どちらにしようかなとか歌わないし進化したら
黒に変化できるようになるとかはない
夜の方が強いが、朝でも活動できないことはないし
レアリティ通りの強さを誇っている
ブクマ、評価よろしくお願いします。
誤字脱字あれば報告お願いします。




