光の結晶、容赦なし
前回の続き、アヤさんとの決闘です。
〈決闘開始!〉
そんなアナウンスが流れてもなお、
私の気合いは入り切っていなかった。
「どうされました?来ないのなら
こちらから行きますが」
いつも通りのようでいつも通りではない雰囲気を
纏ったアヤさんが数歩こちらへ歩み寄ってくる。
はっきり言って怖い、しかし戦わなければならない。
常識的な人から放たれていた雰囲気とあまりにもかけ離れた
プレッシャーに押しつぶされそうになる。
だがこの状況は劣勢とは真逆の好機を作り出していた。
恐怖のあまり先程の敗北へ向いていた気持ちが戦いに向き、
そして疲れていた頭も恐怖によって脳内から分泌された
物質によってかごまかされて最高のコンディションで
勝負を挑むことが出来ている。
まずアヤさんの攻撃手段はあの絵の具のような魔法であるが、
それ以外も絶対あるだろうし一概に言えないが
メインはそれでいいだろう。
「いいえ、そろそろ行きますよ」
「えぇ、えぇ。疲れているあなたに無理はさせませんよ?
私としても待つ時間も楽しいですが…
なるべく早く戦い始めさせてくださいね?」
…絶対隠しているスキルがあるのは分かるが
それを意識しすぎると負けてしまうので今はやめておこう。
こちらは近接特化に近く、相手はそうではないものの
フィールドの狭さから攻撃範囲を生かしきれない。だが
こちらは近づかなければ攻撃できないが相手はどこからでも攻撃でき、
魔法で空からも攻撃できる…
となれば目指すは最速で火力を出してぶちのめすこと。
しかし魔法以外の手段が読み切れないというのが怖いが…
やはりそれしか私の取りえる行動はないだろう、決闘のルールで
ファル達は使えないし…
というかこのルールいるのだろうか?
私は私だけで戦えるが主な戦闘手段は召喚獣との連携なのだから
それをさせないというのは何か違う…いやこんな事を考えている暇は
ないのだ、早くこの状況を終わらせなければなんだか
面倒なことになりそうで怖い。
「…【魔導伝承:竜姫】」
「【魔導伝承:星見】」
やはりというか、アヤさんも魔導伝承を持っていた。
光を放って変身したその姿は学者のようでもあり、元々の装備の
面影を残した魔法使いのような風体を保っていて
何ともらしいものとなった。
「『物見の星空』、『陣地顕現』」
そんなアヤさんの呟きに近い言葉と共に
周りの光景が変化していく。石畳の地面は何か黒い岩と
水色の結晶塊が生えている不思議なものに、空は様々な色の
星が浮かぶ星空が映し出される。
「【オーバーロードチャージ】、【凶速稼働】、【狂迅加撃】!」
ステータスを上げて加速して殴り掛かる。
私が持てる最高のステータス上昇、更にこれから放つ技も
威力が高い技、かつ連撃するならば相当な速度で
削り切ることが叶うはずだ。
「『観測不能』」
「…え?」
アヤさんの呟きと共に一段減速するような感覚が身を包む。
魔導伝承は解除されていない、MPも減っているような様子もない…
見ていない?どういうことだろう、いや考える暇はない。
どういう状況なのか確かめるために一撃を早く当てなければ
「『結晶鎖縛連鎖』」
周りに生えていた水晶が伸びて鎖となり、
私の腕を拘束する。上がったステータスに物を言わせて
引きちぎろうとするが、しかし引きちぎれずにそのまま
拘束され続ける。
どういうことだ?MPも魔導伝承分以外減っていないし
HPも減って…あ?
一点だけ、おかしい点を見つけた。
何故HPが減少していないのだろうか?オーバーロードチャージで
消費したはずのHPはいつの間にか回復しており、
MPも少し巻き戻っている。
「【オーバーロードチャージ】…発動できませんか」
「あらら、もう看破されてしまいましたか。
疲れた頭にはこの手法は聞くかと思いましたが…
案外タフなものですね」
「流石に気づきますよ」
「あらあら、凄く調子いいですねえ」
使用できるかと確かめるためにオーバーロードチャージを
発動してみようとするが、やはり発動できないので
ならばとシフトアップを発動させて無理矢理鎖を引きちぎりにかかる。
「【シフトアップ】…無効化とかの類ではないようですね」
「無効化?そんなものがあるのですか、私たちとはやはり
別格の強さのエネミーと戦っているようですね」
先程から一々挟まれる発言が怖い。
それを聞く度頭が冴えるので別に構わないが…
拘束を抜け出したはいいものの、即座に動き出したほうがいいと
私はアヤさんへ向けてもう一度駆け出す。
「…【ドラグス」「『結晶防壁』」
しかし、やはりこれも周囲の結晶から出てきた壁に阻まれる。
レベル差がなければここまで響くのか?いや、なんというか
センジョウさんとは違う類のものを感じる。
「はい、そろそろ防御も飽きてきたので攻めていきますよ」
「ぐっ…!」
「『破晶風』」
結晶の壁が砕け散り、砕けた鎖の結晶を伴って雨あられと
こちらに降り注ぐ。HPの減りはそこまでではないが
やはり細かなダメージや目の前に迫る結晶に思わず
目を塞いでしまうのは問題だ。
「ふふふ…さぁさぁこれで仕込みはおしまいですよ?
一気にドーンと一発ぶちかましましょう!【彩光の乱反射】!」
未だ降り注いでいる水晶の欠片に光が当たり、
反射しながらこちらへ確かな攻撃として全方向から降り注いでくる。
当然耐える手段なんて存在しないそれに対して私は何の抵抗も
することが出来ず、HPを削り切られて敗北する。
〈決闘終了!〉
〈勝者、プレイヤーアヤ!〉
勝敗が決定し、夜空も結晶の生えた地面も消え去り
倒れこむ私と満足そうに仁王立ちをしているアヤさんを残して
全てが元通りになる。
「…ふぅ、やはり全力というのは楽しいものですね」
「いや、お前いつも俺に文句言うくせに
人に言えるくらいちゃんとした戦いをしねえのか、なぁ…!?」
そのやさしさは始める前に見せてほしかったが、
アヤさんに対して文句を言うセンジョウさんに対して
アヤさんは冷静に返答する。
「なんですか、最高の戦いを見せた最強のプレイヤーに対して
こちらの持てる全てをぶつけた、それだけでしょう?
貴女だってそうじゃないですか」
「いや、限度があるだろうよ!?なんだあのどこぞの
心は硝子の弓兵みてえな魔法は、あれ展開した上で
バフ剥がして完封ってのはお前どうなんだよ、人の心とか
ないのか!?」
「人の心が理性と本能でできているのなら理性で
相手の行動を見抜いて本能で自分の手札を叩きつけた時点で
私は人の心を持っていると言えるのでは?」
「理性と本能以前に感情を出せ阿呆!」
脳内物質が切れたのか疲れを出し始めた頭で
思考を放棄しながらも、戦闘のエリアを出るために移動を始める。
【第三回戦:プレイヤーアヤ対プレイヤーセンジョウ】
【休憩含め三分間準備期間とします】
【待機中の方は期間中にライン外へ移動してください】
「おい待て始めるなバカ!話は終わってないぞ!」
「文句は私に勝ってからにしてください」
最早冷静に狂気的な思考を制御しているアヤさんが
場の雰囲気を支配している…
私はその光景を壁に倒れ掛かりながら見届ける体制に入り
今度からアヤさんに気を遣おうと決心しつつ、
これまでのセンジョウさんって結構気を使っていたんだなあと
内心で感心するのだった。
Qセンジョウさんはどんな戦いしてたの?
ほぼ強いだけの人間相手に夢〇召喚して固有〇界使って
強化解除して最後に宝具使って完封した
今回の敗因:アヤさん側の容赦ない攻撃、及び疲労の程度を勘違いした
主人公が早く倒そうと思考が偏ってしまったのが原因
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