友チョコ交換会
幼馴染組の回です。
「できたねー。見た目も悪くないし
みんな頑張った頑張った」
「うぅぅぅ…!おいしそう、おいしそうなのに
食べられないなんてなんて苦痛なんだろう!!」
出来上がったガトーショコラをグリムがおいしそうに
眺めている。みんなは国民的な青たぬきの様に
食べたものを消化したりできないのでよだれをたれていそうな
表情で眺めているだけという生殺し状態なのが非常に申し訳ない。
「…グリムってそんなに食いしん坊だっけ?
ファルの方が食いしん坊だと思ってたけど」
レベル上げが終わった後に
割とご褒美をたくさん要求してくるのがファルである。
頭を撫でてほしいに始まりに抱っこやおんぶなど
自由奔放に要求されるし、珍しく物品を要求されるときは
大体お肉とか野菜みたいなアイテムを大量に要求されるときである。
ミソラは同じく頭をなでるのやハグ、まれーに
いい匂いの果物とかを要求されるが一個か二個で事足りるし、
グリムも要求するものがなんか薬草とかの類になるだけで
要求は大体一緒だが…
大量にご飯を要求するのはファルだけである。
「むぅ…!失礼な、私だってそんなに食べませんよ!」
「この前不意にハンバーグ食べかけて
運営さんのお世話になりかけたばかりなのによく言えるね~?」
「あ、あれはこっちに来たばかりで寝ぼけてたんですよミソラ!」
「あの時は本当に肝が冷えたから
絶対にやらないようにね…?」
「も、もちろんですよご主人様!なんせドラゴンですからね、
約束はちゃんと守りますよ!」
本当に一瞬体の中に入れかけたので肝が冷えた。
運営さん曰く別に問題はないがあまりしないでほしい
ということなので、私もその日から気を使っている。
「さて、ふーさんたち用のラッピングも済ませちゃったし
あとは冷蔵庫に入れておいて明日食べようか」
「えー?そこそこ頑張って作ったのに、
切れ端も食べないの?」
「今日はだーめ、私だって食べたいけど
姉さんと明日一緒に送って食べたいから」
こういうのは雰囲気とかが大事だと思う。
確かにいい出来だろうしたくさん食べたいが、
それはもう試作の段階で二人で食べているので
味に関しては問題ないのである。
私は取り分けた切れ端を含めて冷蔵庫に入れ、
姉の物足りなさそうな顔を見て決意が揺らぎながらも
なんとか理性で押さえつけて冷蔵庫の扉を閉める。
「うぅ…気を紛らわしに作業してくる」
「うん。もうちょっとで完成するんでしょ?
根を詰めすぎないようにね」
「そこはもちろんだよ。あとは本当に仕上げるだけだし
前みたいに寝落ちしたりは…」
「本当にやめてね?寝落ちして寝返りした先で
落っこちて頭打ってたから私も心配だよ?」
「うっ…はい、もちろんです。眠くなったら部屋に戻って寝ます」
作業部屋には刃物もあるので結構その辺怖いのである。
頭を打った先にあったのが刃物だったら、と想像したら
割と大真面目に気が狂う内容の想像をしてしまうので
深く考えるのをやめて調理器具を片付け始める。
「うぅ…やっぱり食べたい…今度あっちで食べさせてよ」
「うん…確かに今ちょうどそういう用とのチョコも作れるし
今度作ろっか…」
召喚獣用のチョコというのがあり、
最近ロルルアさんに教えてもらったのだが素材の量は多くないし
それこそ今度作ってもいいかもしれない。
なんでか知らないがガトーショコラとか大体の
チョコ料理のレシピがあるらしく、攻略サイトの運営さんが
調べる内容の多さに悲鳴を上げているそうだが…
やっぱり技術力がある会社は凄いなと思う事しかできない。
◆◆◆◆◆◆◆
翌朝、私が登校するといつも以上に人がいる。
理由はわからないと言いたいところだが…
大半が男子生徒であることから理由は想定が付く。
「頼む頼む頼む頼む…!ダチと百円賭けてんだ、
大事な七百円、取られるわけにゃいけねえ…!」
「へっ必死だな親友。
チョコゼロ組で祝杯をあげる日は近いらしいなぁ!?」
「てめっ、いつから!?」
「おお、友よ。汝はチョコゼロ、友なりき」
「二人してコケにしやがってよ…!
俺だって徳と好感度は稼いでんだ、お前らとは格が違えんだよ!!」
三人の友達グループのそんな喧噪を横目に見ながら
その隣の二人もなかなかの会話をしている。
「へへへ、あいつら必死過ぎて笑えるぜ」
「俺たちは一個は確定してるからな…
ホワイトデーの出費が痛いがチョコゼロの汚名に
比べれば屁でもないぜ」
…毎回思うがそんなにひどいものなのだろうか?
ほとんど普段と変わりない日だというのに、チョコがもらえるか
貰えないかということだけで一喜一憂しているのは
どうなのだろうか…と思ったが。
それは私が姉に送れるという精神的余裕があるからという
ことが大前提という事に気づき私も彼らを笑えないと思った。
「おやおや、えーさん。なんだか今日は早いねえ」
「ふーさん?別に早くないでしょ、みんなの方が早いだけ」
「んー?あ、確かにいつもならこの時間にこんなに人はいないね?
あっ、そうだ!はいこれどうぞ」
「おー…見事なまでに市販品」
某元号製菓会社のちょっと
おいしそうな期間限定の商品である。
「仕方ないでしょ…二人に比べたら私のチョコなんて
下手過ぎて笑えないんだから」
「でも前見たときは凄い美味しそうなご飯作れてたじゃん?
あの時のシチュー良かったと思うんだけど…」
以前クリスマスでふーさんの家で遊んだ時に
食べさせてもらったシチューは本当においしかった。
あれなら別に下手ではないだろうし、
自信を持っていいと思うのだが…
「お菓子作りはそんなに得意じゃないの!
シチューだってお母さんのレシピありきだし…
頑張ってはいるけど、まだまだ二人には及ばないし」
「そうかなぁ?私も大したものじゃないけど…
はいどうぞ、ガトーショコラだよ」
「包装からしてあふれ出る女子力…
すごいねえーさん、いいお嫁さんになれるよ」
「恋人もいないのにそれは早いと思うよ?」
「あ、お二人ともおはようございます。
友チョコ持ってきましたよ」
そんな話をしていると
まーさんが登校してきたののだが、まーさんの姿を見つけた
ふーさんはまーさんへ近づいていき、こちらを
とがめるような目つきをしながらまーさんの肩に手を置く。
「おはよ、まーさん…」
「テンション低いですね、福音さん?
何かあったんですか」
「えーさんに女子ハラされた…」
「女子ハラってなんですか、僕聞いたことありませんよ」
「女子力ハラスメント…」
「ただ料理を褒めただけなんだけど…」
「あぁ…どっちかって言うと料理力じゃないですかね…?」
まーさんにも納得されたようにそんなことを言われる。
何故だ、普通においしいものさえ作れるなら調理技術は
良いと言えるのではないのか?
「この際言いますが永華さんの料理って相当
美味しいんですから、下手に謙遜すると
相手に失礼かもしれませんよ?」
「そうなのかなぁ?自分ではそんな実感ないんだけど…
あ、チョコどうぞ。ガトーショコラだよ」
毎日姉に向けて愛をこめて作っているだけで
単純に料理を作る回数の問題の気もするのだが…
でも誉め言葉は積極的に受け取るべきだとは思うので
ありがたく頂戴しておこう。
「ありがとうございます、僕はこれですね。
トリュフチョコです」
そう言ってまーさんからチョコを手渡される。
「ありがとまーさん。美味しく食べるね」
「僕もおいしく食べさせていただきますね」
「「「ひゅーひゅー!お二人ともお熱いねえ!」」」
まーさんと友チョコを交換していたら外野…
もとい福音と教室にいた男子数人にそんなヤジを飛ばされる。
「そういうんじゃないよ、ふーさん。
他の人たち巻き込んで茶化しちゃだめだよ」
「むー、そうかねえ?少なくとも二つ返事でやってくれたし
二人の関係を見守る勢の私としては茶化した気はないけど…」
以前も言ったが失礼だ…
今度存分に仕返ししてやると決意しながら私は席に座る。
席に座る直前、まーさんの耳が少し赤い気がしたのだが…
まあ、今日は寒かったし気のせいだろうと流すことにした。
教室にいたクラスメイト一同
「あれで付き合ってないってマ?」
福音「付き合ってないのに熟年夫婦の類、
これはもうわからないねぇ…?」
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