閑話:災厄のファッションショー①
あと三日とか言いながらその次の日に
バレンタイン関連の話を出す暴挙、
一応炎上関連の話の前です、ロルルアさんとトピアさんとかの話
SROにログインすると、即座にライカさんと
マシェルさんに拘束されて姉と城に連行された。
「…何故私と姉を連行するんですか?」
「うー、ごめん…捕まっちゃって」
「大丈夫、姉さんは悪くない」
悪いのはいきなり襲ってきた二人であり、その上
道中何も話されず連行されているのでせめて
事情を説明してほしいと大きな困惑を私は二人に問いかける。
「…説明しがたい、見て貰った方が早い」
「同意見だ、俺じゃまともに説明できねえよ…」
そう言われながら城の一室、普段使われていない
トピアさんの部屋に入る。
「ようやく来たわね」
「帰ります、ごめんなさい」
「ようやく捕まえた道連れだぞ、
絶対に逃がさねえぞ!大人しくしてろ!!」
「えどういうこと、何このセット?」
トピアさんとロルルアさん、
そして何か申し訳なさそうな顔をしたネロンスシ君が
座った三つの席に目の前のテーブルに置かれた1~10の札。
そして…「第四回イベント衣装決定大会」などと
表記された看板が中央の壁に取り付けられており
三つの席の反対側には何やら後ろにカーテンで覆われた空間と
一段高くなったステージらしきものが配置されており…
本当に逃げてしまいたくなりそうな光景を
目にしてめまいがしてきた。
「…私はね、思ったのよ」
そう言ってトピアさんは事の経緯を話し始めた。
◆◆◆◆◆◆◆
ある日、トピアさんは町を歩いていた。
ポーションの調合依頼を一通り終えて暇だったので
何をしようかと町を見回ってみようと思ったらしいが
その途中で見た一つのお店に売ってあったものに大層
著しくお怒りになったそうだ。
そのお店の服は何やら雑多でありながら装備も機能性も
華美さも一切ない本当に「服を置いて売ってあるだけのお店」
というトピアさんにとって許せない酷いものだったらしい。
ブチ切れたトピアさんは荒ぶる心を久しぶりの服飾に向けた。
私たちに聞いた近々開催されるらしいバレンタインという祭りも意識して
薄いピンク色をベースにしたシャツと茶色のジャケット、
白っぽいフリル多めのスカートをセットにした服を作り出した。
(なお説明の時点で意識を失う可能性を考慮して実物を
姉に見て貰ったのだが、割と出来は良かったらしい)
それを城に来て渾身の一着だとロルルアさんに見て貰ったら
細かなミスを一つ、ロルルアさんに指摘されたらしい。
本当に、本当に細かなミスであり気にしなければ何も気にならない
そんな些細なミスを見つけられたトピアさんは
最初の怒りよりもさらに創作意欲を滾らせ、それを見たロルルアさんも
創作意欲を滾らせて結果勝負のような形になった。
その結果がこのセットである…本当に逃げてしまいたい、
ゴスロリを着せられる可能性があるとは本当に地獄では?
「あの、私ゴスロリ系は無理なんですが…」
「いや、それはオーマとサクラの二人に聞いて知っている。
俺たちは準備を欠かさないからな」
「えぇ、その点は同意できるわ。
私たちは背の高い子と背の低い子を探してたの、
デザインが同じでも差があるかもしれないしね」
凄い熱意と狂気を孕んだ目をした二人に気圧される。
本当に怖い…何を着せられるんだ…?
「ごめんなさい…二人を止めきれなかったっす…」
「いや仕方ないよ…普段普通なのに
この二人怖いし、ネロンスシ君に責任は」
「俺も、アクセサリーを作ったので共犯なんです…」
「…あの二人に懇願されたんでしょ?
大丈夫、私はああいう人たちに慣れてるから分かるよ」
「どんな生活を送ればそんなことになるんですか…?」
最早困惑のあまり敬語になってしまったネロンスシ君の隣から
ロルルアさんとトピアさんが着て、装備を渡すためのメニューもどきを
表示されて逃げられないのを理解してしまった。
「こ、これで俺とマシェルは許してくれるんだよな…?
俺は、俺は魔導伝承を下手に使いたくねえし…」
「…私も、この装備が気に入ってる。
こういうのは好きじゃないし…逃がして欲しい」
そういう約束で私たちを連れてきたのか…?
後で軽めにしかえししてやろうかという発想が私の中に浮かび上がるが
ロルルアさんとトピアさんの表情からすべてを察した。
「あら、魔力なんて私のポーションで大量に用意できるわよ?」
「それに俺たちが約束したのは
人を連れてきたら数を減らしてやる、だぜ?」
「ひっ…や、やめろ…!」
「これが…同調圧力…!?」
そんな二人の悲鳴と表示されるメニューもどきを見ながら
私は心底恐怖しながら受け取った装備を着るのだった。
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「…そこそこ、普通ですね?」
「当たり前でしょう?私たちのセンスを競い合う場なのだから、
基本的には尖ったものは作らないわよ」
「逆に尖った作品があるんですか???」
「それはあとのお楽しみだな」
私が今着ているのはパティシエみたいな装備である。
基本的に薄い水色の生地を使ったダブルブレストの服で、
ボタンや襟などの一部は茶色で統一されている。
腰の上に黒を基調としたサロンエプロンを着て
茶色のアンクルパンツ、黒のロングブーツを履いて
なんか全体的にそれっぽい感が出る服装となっている。
私を一番最初に着替えさせて自分たちは勇気が出ないと
ステージ裏に隠れたマシェルさんとライカさんを恨みながら
私は姉の姿を見ないように心がける。
「あら、なんでお姉さんの方を見ないのかしら?」
「…?確かに、なんで見ないの?お姉ちゃんのかわいい姿だぞ~?」
「かわいいから見ない、
見たら気絶して強制ログアウトになるから今は絶対に見ない」
少なくともマシェルさんとライカさんという元凶二人の姿を見るまでは
絶対に姉の姿を見ない、だって絶対気絶するのが確定しているからだ。
「…どうやら本当にそうらしい、無理に見せるもんでもないし
ここは残り二人のどちらかを引きずり出すしかねえ」
「…そうね、ロルルアとフジカ。どっちから引きずり出す?」
そんなやり取りをしていると、カーテン裏から
踏ん張って凄い表情になっているマシェルさんの顔が出てくる。
どうやら押し出されそうになっているようで
恨めしい表情と声でライカさんに抗議する。
「!!…ライカ、貴様…!?」
「はっはぁー!!ステータス差が明確に出たな、
お前が先に出るがいい!!」
大人げない、本当に大人げないその姿に
若干引きながらも内心マシェルさんを応援する。
…無理やり連れてこられたので助ける気は一切ないが。
「外道がッ…!お前の女体化成人指定寸前の絵を描いて
捨て垢でSNSに流してやるから覚悟しろ…!」
「はっはー!きこ、お前何しようとしてんの!?」
そんな醜い言い争いをしながらも、マシェルさんが
カーテン裏から出てくる。
交換機能
基本的にはレアリティが等価なアイテムを交換する機能。
ただしやろうと思えば無償での交換も可能であり
人の善意に頼った機能でもある
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