示せ、導きの歌とともに⑩
戦闘回です。
竜を名乗る生ゴミを殴って腕を引きちぎったら
魔法で拘束された。その瞬間は怒りのあまり拘束を力任せで
解こうとしたが、その瞬間に実体化するスキルを切って半ば透明化していた
レントリリーさんに止められて力を緩めた。
「ご主人、これは無理やり解こうとすると面倒な奴よ。
私が頑張ってグリムさんのを外してから二人であなたとミソラちゃん、
次にファルちゃんの拘束を解くからそれまで待って」
生ゴミの方を見ると妖精さんたちに魔法を打たれ
ギリギリで回避している姿が目に映る。
あの分ならしばらく動きを止められていても大丈夫だろう、
侮りすぎて本当にピンチになっているようだし…
私が全力を出すまでもなかったようだ。
「分かった、なるべく早くお願いできる?」
「もちろん時間があるわけじゃないし速攻で解くわ。
それにあの竜みたいな奴、本当の姿を隠しているみたいだし…」
そんな不穏な言葉を聞きながらも、私は戦況を見守るのだった。
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キャロウさんが魔法をぶちかました瞬間に
私とミソラの拘束は外れ、自由に動けるようになる。
一応拘束を外した影響が出ていないかどうかを確認するために
四人に聞いてみる。
「四人とも大丈夫?」
「大丈夫だよ~」
「大丈夫ですよ、…拘束を外すために魔力が
割と減っちゃいましたがまだまだ全然」
「私もすっからかんに近いわね…でも体は大丈夫よ」
「ぬぐぐ…力づくじゃだめですかね…?」
「ダメに決まってるでしょ!?ほら、私とレントリリーさんの
二人がかりで外してあげるから待っててよ」
四人全員大丈夫だったようだ。
ファルに関しては私たちの分を解除している途中で
物理的に破壊しようとしていたのでたびたび二人にたしなめられたり
アオイちゃんによる必死の身振り手振りで止められていたりしたが…
そこまで解除に時間がかからず全員無事に拘束から抜け出すことに成功した。
それと同時に奴の体が弾け、その中から黒い泥のようなものが
すごい勢いで噴き出してくる。
その泥は意志をもっているかのように近くのみんなを飲み込もうと
蠢き、手始めに一番近くにいた妖精三人組とフランベルさんへ襲い掛かる。
「うわー!」「なんだこれー!?」「いそいではなれろー!」
ある程度離れた場所にいた私たちは容易に泥の跳んでこない場所に
逃げることに成功し、他のみんなを助けられるように準備しつつ
逃げてくるのを待つ。
噴き出した泥を避け、動きの速い妖精さんたちは
早々に離脱することができたが…
しかし、フランベルさんはかなり接近していた上
動きも俊敏なわけではないのでその場に取り残されてしまう。
「『ブレイズバースト』!…カルシュナ!我が勢いを潰す、
その隙にフランベルを助けてご主人のもとへ!」
そこに、キャロウさんが魔法で火を放って泥の勢いを弱める。
その上で押し返そうとするものの泥の勢いが強すぎて
返しきれず、泥の勢いを留めるだけで押し返すことはできなかった。
「わかった…って、空から何か来てますよ?」
「なんだと!?まさか増援…いや、あれは!」
「すみませえぇぇぇぇん!!ようやく覚悟が決まりましたぁぁ!!
鎧さん今助けますからねー!!」
「(君がこの前主人が言っていた新しい子か!)」
「ぴゃっ!?そ、そうです!エアリィっていいます!」
いきなり出てきた文字に驚きながらも泥をよけながら
フランベルさんを空から救い出すエアリィ。
…そういえばエアリィの姿を見かけないと思っていたが
まさか召喚された瞬間大空に逃げていたということだろうか?
…まあそんな疑問はさておき、エアリィは無事フランベルさんを
救出し、泥から逃れることに成功する。
『キサマラァ…ヨクmoヤッテクレtaナァ?』
思わぬ登場に驚いていると、泥の中からおどろおどろしい声が響く。
それと同時にこちらに迫っていた泥が勢いを弱めて
元々奴がいた場所の泥が大きく隆起し、三つ首の竜となる。
『wareガオコシタ動乱、waが道wo邪魔したゴミドモheノ
復讐woスマセ、aトハ受肉するdaケダッタノニ…』
「うるさい」
「…ha?」
泥が形作られ始め、その巨体が完成しつつあった竜に
遥か空から現れた白い影が流星のように泥の体を貫き、
こちらへ向かって落ちてくる。
「あぁ、ご先祖様が言っていた事は正しかったみたいだ。
お前だけは、お前だけは!!」
「naンダ貴様、イヤ、kiサマハ…!!」
堕ちてきた白い影の姿が、砂煙の中からはっきりと現れ始める。
砂煙の中でもはっきりと分かる銀色の長髪に尻尾、
服装は弓道着のようなものを着ている。
その姿は、背丈や多少の顔つきの違いはあれど
見覚えのあるその姿は…
「アルジェン君…!?」
「…あんたら、あの洞窟の記録を見た奴か!?
ちょうどいい、奴をぶっ殺すのを手伝てくれ!」
髪は長いもののどことなくコンジキさんの親族であることを
感じさせるその顔つきは怒りに震えており、
彼の積年の怒りを感じさせるものだった。
「気になることがあるとしてもあとで話す、
今はあいつをぶっ殺すことに注力してくれ!」
「わかりました!みんな聞いたね?
全員であいつを倒すよ!」
そう言って後ろのみんなの無事を確認しつつ意思確認をすると
他のみんなは大丈夫そうだが
泥に直接浸かっていたフランベルさんがかなり弱っており、
かなりふらついていて立つこと自体おぼつかない様子だ。
「ご主人!フランベルさんの消耗がひどいです、
一度回復した方がいいと思います!」
「はha、doヤラカナリ消moウシテイルヨウダ…
回復サセルトオモウノカ?」
しかし、スイウォートがそのようなことを許すわけがなく
こちらに向けて泥を飛ばして来る。
「させっかよ!」
しかし、アルジェン君は懐からお札を取り出して
光の壁を作り出し、一時的に泥の入ってこない安全地帯を作り出す。
「お前らが消耗した分を回復する時間は稼ぐ、
俺はつええから大丈夫だ!あんたらは傷を癒すことに注力しろ!」
「ありがとうございます!」
私はフランベルさん用の回復アイテムを取り出し使用して
体力前回まで回復しつつ、魔力を使い切りかけた
レントリリーさんとグリムに魔力回復用アイテムを渡して回復してもらう。
「(かたじけない、全力で役に立てるよう努力する!)」
「終わったか!」
「はい、全員万全な状態です!」
そう宣言するとアルジェン君は壁を解除すると同時に
拳を地面に叩きつけ、叩きつけた風圧で泥を散らし
そのまま泥竜に攻勢に出る。
「みんな、頑張るよ!あいつを殺して気分良く終わらせよう!」
スイウォート対私たちとアルジェン君、
このシナリオを終わらせる最終決戦が今始まる。
ちょこっと豆知識「竜」
友好的な種は代表的なところで
地竜、火竜、風竜、黒竜、白竜。
敵対的な種は水竜、雷竜、氷竜が代表的な種となっている。
竜主や竜王を除いた強さ的な序列は
黒=白>火>雷>氷>風竜=地竜>水竜となっており
基本的に地上にいる敵と戦っている竜ほど強い。
泥
スリップダメージと付着中AGIダウンの毒で
火に触れると火力によっては水分が蒸発しただの土となる。
設定的には今回の一件に巻き込まれた竜と虎獣人の
怨念がつまった呪いの泥である
隠し効果があるとの噂も
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